労使関係委員会、派遣先企業の使用者性についての判断を示す

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

オーストラリアの記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年1月

人材派遣会社(labour hire firm)に登録し、そこからある職業訓練校に派遣された教師が不当解雇を主張していた事件について、オーストラリア労使関係委員会(AIRC)が判断を示した。非典型雇用の増加を背景に、今回の決定は働く側にも雇用する側にも大きな影響を持つと思われる。

事件の概要

不当解雇を主張していた教師であるフォックス氏は1997年に人材派遣会社との契約を取り交わしている。その中でフォックス氏は、(1)自分が自営業者であり、同社は彼女の使用者にはあたらない、(2)時給20.58豪ドル(1豪ドル=65.8円)で働く、(3)同社に対し有給休暇、長期勤続休暇、疾病休暇などの権利を主張しない、(4)必要とされる機材は自分で調達する、等を約束していた。

1998年になって同氏は職業訓練校で働き始めた。業務遂行にあたり、彼女が自分で機材や資料等を負担したことはなかったし、契約で定められた業務以外の仕事の負担や労働時間の延長が行われ、訓練校の上司から日常的な指揮命令を受けていた。加えて、時給は当初から26豪ドル(後に28豪ドル)であった。

1998年末になって訓練校は彼女の業務に別の職員を当たらせることを決定し、彼女の業務に関する契約を解約した。そこで彼女は不当解雇を主張し(訓練校を使用者と主張)、AIRC に救済を求めたのである。

AIRC の決定

AIRC の一委員による決定では、訓練校がフォックス氏の真の使用者であり、人材派遣会社は訓練校の代理人として彼女への賃金支払を行っているに過ぎないとされた。しかしながら AIRC フルベンチ(注1)は、訓練校とフォックス氏との間にはどの種類の契約も存在しないと結論づけた。フルベンチは法的関係(雇用関係)に入るという当事者の意思を重視し、派遣先会社の使用者性を否定したのである。

今回の決定に基づくと、人材派遣会社を通じ労働者を獲得した企業は当該労働者の使用者でないために、不当解雇の訴えを免れることができることになる。今回の事件では、訓練校側が労働時間を決定し、業務遂行にあたり指揮命令していたが、こうした場合でも企業側は使用者としての責任を負わないことになる。

2000年1月 オーストラリアの記事一覧

関連情報