賃金交渉の進捗状況と労組の対政府闘争

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年1月

景気回復に伴い、賃金交渉における賃上げ率や賃金上昇率が順調に伸びている。まず労働部が従業員100人以上の事業所5097カ所を対象に調査した「1999年10月末の賃金交渉状況」によると、そのうち4302カ所(84.4%)で賃金交渉が妥結し、平均賃上げ率は1.9%を記録した。月別にみると、賃上げ率は9月の1.8%から10月には3.1%に上昇した。

企業別にみると、賃上げに合意した企業は49.6%で1998年同期の15.4%を大幅に上回ったのに対して、賃金凍結と賃金削減を決めたところは46.7%、3.7%で1998年同期の65.6%、19.0%より大きく減っている。業種別には飲食宿泊業が3.3%、製造業も2.6%に達したのに対して、電気ガス水道業は依然としてマイナス0.6%にとどまっている。

次に、労働部が5人以上の事業所5300カ所を対象にまとめた「1999年8月の賃金・労働時間・雇用動向」によると、8月までの月平均賃金は152万8000ウオンで1998年同期(140万3000ウオン)より8.9%上昇し、その上昇幅は1月以降拡大傾向にある。消費者物価上昇分を差し引いた月平均実質賃金も129万1000ウオンで1998年同期(119万3000ウオン)より8.2%上がった。

企業規模別にみると、500人以上の事業所の賃金上昇率が11.4%で最も高く、次いで300~499人の事業所10.3%、100人未満の事業所6%の順となっており、大企業ほど賃金上昇率は高い。業種別には製造業の賃金上昇率が12.5%で最も高い。

その一方、賃金交渉をめぐって労使紛争が発生し、その行方が注目されていた現代自動車の労使は1999年10月23日、次のような内容を盛り込んだ賃金及び労働協約改訂案に暫定的に合意したのに続いて、同社労組は11月5日に組合員投票を実施し、67.5%の賛成で同案を承認した。

まず、賃上げ案では第一に、基本給の3万5000ウオン(3.5%)引き上げと2000年から1万ウオンの追加引き上げ、第二に、1999年に純利益3911億ウオンと負債比率185%の目標を達成した場合、成果給として1.5カ月分支給、第三に、純利益の超過達成の際には特別奨励金として88万ウオンを支給すること等が合意された。

次に、労働協約改訂案には第一に、1998年の整理解雇をめぐる労使紛争の際に懲戒免職された9人の復職、第二に、労使同数による「早期退職審査委員」設置、第三に、無給休職者及び整理解雇者に対する早期リコール協定の締結、第四に、労使同数による「従業員持株制度の民主的な運用のための委員会」の設置、第五に、新車種生産ラインの増設や時間当り生産台数の調整の際には労組と協議することなどが盛り込まれている。

労働界の対政府闘争再開の動き

韓国労総の朴委員長は1999年11月15日、労使政委員会本会議に出席し、「政府は6月25日の労政間の合意事項を履行していない。政府が納得のいく措置をとるまで労使政委員会活動を中断する」と宣言したことを明らかにした。韓国労総は同委員会活動再開の前提として次のような条件を提示した。第一に、労組専従者の賃金支給問題の解決、第二に、韓国電力公社の分割と外国企業への売却方針撤回、第三に、公企業に対する予算編成指針の撤回、第四に、6月25日の労政間の合意事項の履行など。

韓国労総は1999年10月26日、すでに「11月15日まで6月25日の労政間の合意事項が履行されない場合や、韓国電力公社の分割及び外国企業への売却方針が強行される場合は、労使政委員会に参加せず、場外での対政府闘争に突入する」と警告していた。11月21日には5万人規模の抗議集会を開いて対政府闘争に突入することにしている。

民主労総も10月26日、大宇グループの構造改革と関連して、「大宇グループ系列企業の外国企業への売却方針撤回、同系列企業の公企業化と労働者の経営参加保障、労働者の生存権保障など」を求めるほか、法定労働時間の短縮及び週5日勤務制を勝ち取るために、場外での対政府闘争の構えを見せている。

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