電子産業では人員削減が続く

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年12月

経済危機は去りつつあるが、電子産業では大規模解雇が相次いでいる。ウェスタン・デジタル、シーゲート・テクノロジー、コンパック・コンピューターの3社が8月に発表した解雇者数だけでも計5700人に及ぶ。電子産業は深刻な価格・コスト圧力に直面しているためだ。エレクトロニクス製品の販売価格が急落しており、1999年の第1四半期の価格は前年同期比で52%も低下している。
 ウェスタン・デジタルは1999年8月13日、ディスクトップ・ディスクドライブの生産をクアラルンプールに移転するため、全従業員の6割にあたる2500人を解雇すると発表した。同24日にはディスク・ドライブ・メーカー、シーゲート・テクノロジーが全従業員の1割にあたる1600人を解雇するとの計画を明らかにした。世界各地の同社工場で同時にリストラを進める一環である。さらに同27日、アメリカのエレクトロニクス大手、コンパック・コンピューターが全従業員の62%にあたる1600人を2000年3月までに2段階で整理すると発表した。インテル用プリント回路基板(PCB)の組立てラインを閉鎖するためだ。
 8月の3週間に発表された電子関連多国籍企業による3件の解雇で、近く失業する電子産業の労働者は5700人にまで膨れ上がる。
 8月23日に開催された電子・電気労働者統一組合第6回大会(3年毎に開催)でのスピーチで、リー副首相は、経済危機は去ったかもしれないが、電子産業は窮地を脱したとは言えないと警告した。
 リストラの結果、雇用が多国籍企業から下請業者に移るのであれば、事態はさほど深刻ではない。しかし操業を他国に移転することになれば、多国籍企業が直接提供している雇用を失うばかりか、シンガポールで多国籍企業を支えている下請業者での職を失うことになる。リー副首相はこのように述べたうえで、経済回復にもかかわらず、電子産業ではしばらく解雇が続くだろうと予測している。

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