ACTUが雇用保障と労働時間に関する調査結果を公表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年12月

オーストラリア労働組合評議会(ACTU)は雇用保障と労働時間に関する全国調査を実施した。調査は教育、連邦・地方政府、金融、製造の各産業で働くおよそ7000人の労働者と警備、保育、サービス、看護、管理、土木工学等の分野で働く約3000人の労働者を対象に行われた。

調査の目的は労働時間や労働条件の変更の有無、雇用保障の現状と改善の必要な分野を探ることにあった。ACTUは以前より雇用の不安定化と労働者のストレス強化に懸念を抱いており、バランスのとれた労働生活を提供するための効果的な戦略を練るために、全国調査を実施したのである。

調査結果

調査結果によると、フルタイム労働者の過半数が週に40時間以上働き、仕事と家庭生活のバランスに満足している者は半数に満たず、過去12カ月間に雇用が不安定になったと感じている者が3分の1に達した。調査結果の主な内容は次のようにまとめられる。

すなわち、

  • 長時間労働化(時として未払い)、労働時間決定についての規制や発言権の欠如といった問題が重要な課題であることが分かった。
  • アワードで定められた労働時間基準は実際には考慮されていない。7000名を対象に行われた調査では、回答者の55%が週40時間を超えて、26%が週45時間以上、12%が週50時間を超えて働いていた。さらに保育、看護、科学・工学系の専門職でも長時間労働が報告されている。残業手当未払いについては、特に保育労働者の75%が常に残業手当を受けずに働いていた。フルタイム労働者で労働時間の短縮を望む者が少なからず存在した。
  • 回答者の過半数が仕事の速度と量の増加、仕事に伴うストレスを訴えていた。
  • 労働時間の長さやシフト制が労働者の健康や家族の問題に大きな影響を与えている。具体的には、7000人を対象に行われた調査では、家庭と仕事のバランスに満足している回答者は44%に過ぎなかった。さらに49%が何らかの健康上の問題を抱えていた。
  • 不安定雇用の増加とともに雇用の不安定化を感じる者が増えている。7000人を対象にした調査では、回答者の3分の1が過去12カ月間に雇用の不安定化を経験し、同時に不安定雇用の増大を経験していた(23%が職場における臨時労働者化を、24%が契約労働者の増加を、19%が期間雇用労働者の増加を報告していた)。

また臨時労働者や期間雇用労働者は長期雇用を望んでいた。

これ以外に、年休等の未消化や労働時間決定への発言権などの問題も示されていた。

ACTUは調査結果を組織化戦略に役立てたいとしている。回答者のおよそ3分の1がこれらの問題に関し労組と活動を行う準備があると回答していたことは、ACTUにとって重要な成果といえよう。今後、ACTUは労働時間、仕事と家庭生活のバランス、臨時・パート・期間雇用労働者の問題について労使関係委員会での審理を求める予定である。

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