マンパワー21計画、始動
労働力省は8月31日、シンガポール競争力委員会の描く21世紀のシンガポール像「すぐれた国際競争力を備えた知識立脚型経済」の実現を目指して、長期的かつ包括的な人材開発戦略「マンパワー21計画」を始動させた。
シンガポールは1970年代から1980年代にかけて、労働資源が豊富な諸国の競争にさらされるなか、労働集約型経済から資本集約型経済への転身に成功し、過去30年間にわたり、多国籍企業をはじめ内外の企業に効果的な生産拠点を提供してきた。21世紀に向けて今回は、経済のグローバル化と情報化にともなう急激な技術発展と国際環境の変化のなかで長期的に競争優位を確保していくため、知識立脚型経済(knowledge-based economy)への転換をはかる。それを根本で支えるのは知的資本=人材であるとの認識のもと、労働力省は下記を主な内容とする人材開発戦略「マンパワー21計画」を策定、始動させた。
戦略1:人的資源計画の統合
- 人材情報システムの拡充
政策立案者、使用者、訓練提供者、個人などが、必要な時に必要な人材情報を入手することができるよう、人材情報システムを拡充する。
- 全国人的資源評議会
シンガポール全体の人的資源計画・開発の戦略を策定し、その実施を監督する全国人的資源評議会を設置する。
戦略2:生涯雇用可能性のための生涯学習
- 生涯学習スクール
生涯学習スクールは、労働力のすべての層のニーズにこたえる包括的な制度である。現在、技能を見極めるのに就職以前の資格が利用されているが、これは理想的ではない。特定の技能を高める必要のある成人労働者にとって、シンガポールの既存の資格体系カリキュラムは一般的すぎるため、限定的な意味しかもちえない。 - 国家技能認定制度
この問題に対処するため、国家技能認定制度(NSRS)を設置し、明確な技能基準を定め、この基準を満たす訓練を認定する。個人が学習を進める際に障害となる時間的制約を克服するために、同制度では小単位のモジュール方式を採用し、勤務外もしくは勤務中に訓練が受けられるようにする。また、使用者、従業員、訓練提供者、組合、政府代表で構成される国家技能評議会(National Skills Council)を設置し、NSRS の準備を指揮する。 - インセンティヴ
使用者や個人にインセンティヴを与えることによつて、シンガポール人の生涯学習意欲を高める。使用者主導の訓練を奨励するため、政府は技能開発基金(SDF)の拠出金を見直す。また個々人が責任をもって生涯学習に取り組めるよう、労働力省は財政省と協力し、訓練受講者の所得税免除基準を緩和する。 - 雇用情報総合センター(One-Stop Career Centres)
労働市場動向、技能需要、雇用、訓練に関する情報源がこれまで一元化されていなかったため、時間的ロスや情報の入手難が生じている。これらを克服するために、政府は地域開発評議会と協力して雇用情報総合センターを設置、ネットワークで結び、労働者に包括的な雇用関連情報を提供する。
戦略3:シンガポールのタレント・プールの拡充
- シンガポールへの誘致
世界の優秀な人材を集めるため、シンガポールにおける教育・雇用機会についての情報・資料センターであるコンタクト・シンガポールの事業規模とインフラストラクチャーを拡充・強化する。現在、コンタクト・シンガポールはボストン、サンフランシスコ、トロント、ワシントン DC、ロンドン、パース、シドニーにセンターがある。 - 外国人労働者政策ガイドラインの見直し
労働力省はまた、外国人労働者政策に関するガイドラインを見直し、外国人労働者を低付加価値部門から高付加価値部門に移動する。外国人労働者の再配置により、社会の統合を損なうことなく生産性を引き上げる。
戦略4:労働環境の改革
- シンガポールを基盤とする産業のプロフェッショナリズムの向上
労働力省とそのパートナーは清掃、海運、ホテルといった国内を基盤とする産業のプロフェッショナリズムやイメージを高め、より多くのシンガポール人をこれらの部門に就職させる計画を検討している。 - 世界水準の人的資源慣行
人的資源慣行の改善、特に包括的な人材開発計画は、労働者の質や労働意欲を高め、内外のタレントを引きつけるのに寄与する。この点を考慮して、模範的な人的資源開発や経営慣行を実践している使用者に報いるため、国家認定の賞を創設する。
戦略5:活力ある人材産業の開発
- 世界水準の研究開発機関の設立
シンガポールは世界水準の労働力の開発とマネジメントを支えられる人材産業を必要としている。労働力省は経済開発庁と協力し、労働力の訓練や組織の開発において R&D を実施している世界的な機関や人材会社をシンガポールに誘致する。
戦略6:パートナーシップ
- 政労使の連携強化
労働運動が直面している問題の一つは、組合員の高学歴化であり、これにより組合加入母体は縮小しつつある。この問題に対処するため、労働力省、全国労働組合会議(NTUC)、シンガポール全国使用者連盟(SNEF)は全国労働力サミットを年1回開催し、シンガポールの労働力戦略の計画・見直しに際し、三者のパートナーシップを積極的に活用する。また、労使共同のイニシャティヴを支援するため、労使パートナーシップ計画を導入する。
1999年11月 シンガポールの記事一覧
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