経営陣は共同決定方式による労使協調を評価

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

スウェーデン経営者連盟(SAF)は最近、産業界における労使関係制度のコストに関する調査結果を公表した(本誌1999年8月号参照)。この調査報告書の中で、常勤の労働組合専従者、すなわち従業員100人当り1人の常勤労働組合専従者(職場委員)に対して事業主が行なっている支出負担が有効かどうか疑わしいという結論に達している。

これに対し、ブルーカラー労働者が中心のスウェーデン労働組合総同盟(LO)やホワイトカラー労働者が中心の事務技術系職員労働組合連合交渉カルテル(PTK)からなる労働組合側は、共同決定方式、すなわち従業員代表が役員会に加わる経営参加方式についての調査結果を発表した。

役員会に出席する従業員代表に関する法律は、1970年代の労働法の改訂によって最初に制定された法律だった。それから25年も経ったということが、LO、PTK、国立労働生活研究所(NIWL)の合同調査が行われた理由である。

役員会の代表に関する法律と同様に、この調査も従業員25人以上の企業を対象に600社を調査対象に選定した。業務取締役の65%、役員会議長の51%、LOの代表者の65%、PTKの代表者の69%がアンケートに回答した。これを人数別にすると、業務取締役422人、役員会議長326人、LOの代表者405人、PTKの代表者433人になる。

面接調査を受けた業務取締役は413人だった。そのうちの10人に9人は、労使協調的な職場環境は「非常によい」か「比較的よい」と感じている。この枠組みに満足していない人は全部で4人しかいなかった。すなわち、多くの経営者は共同決定方式への負担を無駄ではないと考えており、SAF調査が経営陣の実感から隔たっていることを示唆している。

NIWL、LO、PTKによる合同調査の主要内容

経営管理者の大半が、従業員の経営参加制度が意思決定基盤を強化し、たとえ難しい決定であろうとも、早い段階での労使の同意を前提に遂行できることから、その実施を可能にさせるとしている。

NIWL、LO、PTKによる合同調査は、労働組合代表による経営参加はきわめて有効で、人事、生産、環境、全体的な組織上の問題を速やかに対処しているとする。それ以外の経営管理上の問題に労働組合代表は関与していないようだ。なぜなら、依然として企業オーナーの利益代表や業務取締役が役員会の議題を決定し、議題に関する文書類の準備をしているからである。

経営側が一般的に現行法規にきわめて満足している反面、面接調査を受けた労働組合の代表者(役員会に出席する従業員代表)は不備な点をたくさん指摘している。例えば、厳しい時間的制約条件の下で開催されることが多い役員会に備えるには、あまりにも時間が足りないことや、役員会に出席する従業員代表の多くが表明しているように、議題に関する文書の配布が遅すぎて予め労働組合内部で相談する時間的余裕がほとんどないといったような点である。

役員会に出席する少数の従業員代表は、意思決定に対して影響力があると思っているだろうか。確かに従業員代表の30%は「いくつかの問題では役員会の議事進行に影響を与える機会が多い」と思っている反面、半数は、役員会の決議に与える影響力はごく少数のものに限定されるとしている。

「労働組合が企業内の諸条件に影響を与える可能性を一般的にどう評価しますか」という設問に対し、被面接者のうちの73%は「いくつかの問題に対しては影響力を発揮する可能性が大きい」と答えている。この答えは、共同決定方式を機能させた上で重要な役割を果たしているが労使間の交渉であることを示す。役員会に出席する従業員代表は、主として役員会を労働組合が市場の動向や投資計画また新製品について情報を得る場所であると見做し、そうして得られた情報はその後の共同決定の交渉の場で利用される。従業員代表役員の10人に8人は支部組合(クラブ)の執行委員で、特に支部組合長を兼ねている場合が多い。役員会の議題は事前に労働組合の執行委員会にかけて検討され、従業員代表役員は役員会の後でその結果を労働組合の執行委員会に報告する。

面接調査を受けた経営管理者は、役員会に参加する労働者に関する法規則が有意義であると満足している。業務取締役の80%と役員会議長の77%は「法律は今のままで良く機能している」と思っている。実際にこの調査は、経営管理者が役員会への参加と共同決定方式一般で好ましい経験をしていると考えている者が、10年ほど前に行われた前回の調査以来増えていることを示している。これもSAFが発表した調査とは正反対である。

LOとPTKの代表者が当該調査を発表した際に特に強調した点は、役員会における従業員代表のうち女性はホワイトカラー組合代表の30%とブルーカラー組合代表の10%であるのに対し、役員会に出席する女性経営側代表は6%に過ぎないという較差であった。ここで、労働組合ははっきりと企業社会にもっと女性を役員会に選任するように働きかけている。

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