社会保障院の収支不均衡

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年10月

政府は1999年2月から全国の全ての企業に、雇用状態を報告する義務を課しており、企業の社会保障分担金と労働者の勤続年限保証基金の納入状態を把握できるようにしているが、4月分の集計によると、正式に登録して規定の分担金を企業が払っている労働者は1830万人に減少した。人口に関する最新の調査である1997年の資料では、総人口は1億5610万人であり、経済活動人口は7520万人、就労人口は6930万人となっている。政府の正式雇用指数は就労人口のわずかな部分だけが、社会保障、解雇時の保証を受けられることを示している。それよりも重大なことは、社会保障院の収支不均衡にあり、現在の分担金納入者1.4人で1人の年金生活者を支えている計算になっており、すでに保障制度を維持出来ない劇的な状態となった。社会保障院は現在1850万人に支払っており、このうち約200万人は旧システムの終身年金を受ける高齢者、障害者などであり、1650万人が現行システムの定年退職あるいは労災の需給者である。保障院はこの他に700万人の個人加入者(自由業、企業家、家政婦、任意加入者)がいるが、彼らは数カ月払うと止めたり、時々納入したりして、安定した加入にはならない。しかしなんらかの形で分担金を納入する人口は合計2330万人と計算しており、これで1650万人の社会保障給付を支払っており、1.4対1となる。しかもブラジル地理統計資料院が1997年に行った最新の調査によると、分担金納入者の納入額は次第に低下している。失業したり、所得減少から副業を始めたりして、納入も不安定になっている。この中で社会保障制度の将来に不安を持った高齢者が、早くも年金取得資格を取っておこうと、申請を急いでいるために、受給者は年々増加しており、1995年12月から1998年5月までに受給者は14%増加し、1995年始めから1999年始めまでに保障院の支出は50.9%増加している。いかなる改革も保障院の財政均衡は困難になってきたと、保障院自体が認めている。

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