一時的労働不能の場合の報酬

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年9月

スペインでは非自営労働者の賃金は、手取り分、個人所得税として差し引かれる源泉徴収、および社会保障制度への負担金の3部分にわけられる。労働者が疾病・労災などで仕事ができない状態になった場合、これを労働不能と呼ぶが、医師によって一定期間を経たのち職場復帰できる(一時的労働不能)か、あるいはできないかの診断が必要である。

国立社会福祉庁は、労働者が職場復帰できるまでの期間、必要な医療費・薬代と労働報酬の不足に対する補助を支給する。この場合雇用者側は、一定の時点以降はその労働者への賃金支払いの義務をまぬがれることになる。

一時的労働不能に対する手当支給額および支給期間は、それが職業病・労災によるものであるか否かによって変わってくる。一般疾病、あるいは労災以外の事故の場合は、雇用者は3日目までは通常の賃金を支払わねばならず、またその後15日目まで賃金の60%を支払う義務を負う。16日目からは社会保障制度が手当支給を引き受け、21日目以降は手当額算出のための標準賃金の75%のみの支給となる。手当支給期間は労働不能状態の発生から12カ月間が原則だが、その後6カ月以内に回復が見込まれると医師が判断した場合は、6カ月まで延長を申請できる。

労働不能の原因が職業病・労災による場合は、雇用者は最初の1日分の賃金を支払う義務のみを負い、翌日以降は社会保障制度が手当支給にあたる。手当支給期間の上限は6カ月で、必要と認められればさらに6カ月延長が可能である。

いずれの場合においても、手当支給延長期間を終了した後の3カ月間に永久的労働不能の可能性について評価しなければならず、その間追加手当の支給を受けることができる。永久労働不能と判断されると、その発生より最高30カ月までの期間は定期検査によって労働不能状態が続いているかどうかを判断し、この間に社会保障制度は労働者の回復による職場復帰か、永久労働不能の手当支給対象者とするか最終的に決定しなければならない。永久労働不能による手当支給は、労働者が再び労働市場に戻れるような状況が発生しないかぎり、65歳の定年退職年齢まで続く。

なお、一般疾病・労災以外の事故による労働不能の場合、手当を受けるためには、労働者は過去5年間に最低180日間社会保障制度への負担金支払いを行っていることが条件である。

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