失業者への公的手当て

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年9月

雇用庁(INEM)を当初定められた目的を果たすよう改革しようという努力がなされる一方、その主な機能は相変わらず失業手当の支給業務である。これは社会保障制度への負担金支払いをベースとした手当と、社会保障制度への支払いとは独立して行われるものとに、大きくわけることができる。

1992年に実施された雇用促進・失業者保護のための緊急対策の改正以来、手当て支給額は最初の180日間はそれまでに支払われた賃金の70%、181日目以降は60%となっている。この改正では、失業手当の受給資格を得るため必要とされる社会保障制度への支払期間(賃金からの源泉徴収の形で)を12カ月と、以前の倍に延長し、しかも12カ月の雇用期間に続いて失業した場合は3カ月しか手当てを受給できないとされている。失業するまえの雇用期間が12カ月を超える場合は、その日数に応じて手当て支給期間が長くなり、上限は2年間である。

失業手当受給に先立つ以上のような条件のほか、失業者に対しては受給期間中もいくつかの義務が定められている。正当な理由なくINEMが紹介する就職先を断ったり、社会奉仕活動や職業訓練・教育活動への参加を拒否したりした場合には、手当て受給は打ち切られる。

失業手当受給期間を過ぎたり、受給資格のために必要とされるだけの雇用期間を満たしていなかったりなどの理由で手当てを受給する権利のない労働者で、家族扶養の義務があり、また一家の全所得が最低賃金(現在は7万ペセタ強)、家族人数に満たない場合は、INEMを通じて扶助を受けることができる。その額は最低賃金の75%で、失業手当と同様以前の雇用期間に応じて受給期間が設定される。雇用期間が6カ月を超える場合には、扶助を受ける期間が21カ月に達することもある。

このような扶助は、最も救済を必要とする人々を対象として失業による所得の減少の影響を軽減しようというものである。原則的には前述したような理由で失業手当受給の権利を失った失業者に与えられるが、それ以外にも次のような者にも支払われる。

  • 45歳以上の労働者で、失業手当受給期間(12カ月以上)が過ぎ、扶養家族がいない者。
  • 外国に移民したのち帰国した労働者。
  • 監獄からの出獄者。
  • 重い疾病・障害からの回復により、部分的障害者あるいは健常者とみなされるに至った者。
  • 通常の職業活動が不可能な障害者。

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