労使関係委員会、アワード最低賃金引き上げを決定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年7月

オーストラリア労使関係委員会(AIRC)は、オーストラリア労働組合評議会(ACTU)が求めていた生活賃金請求に関する決定を行なった。

ACTUは週当たり26.60豪ドルの最低賃金引き上げを求めていたが、使用者団体は引き上げの必要性を否定していた。1999年4月29日に示されたAIRCの決定は、近年の経済状況や高い生産性、低いインフレ率等を考慮し、連邦アワード制度の適用を受ける労働者に対し週あたり10~12豪ドルの賃上げを認めた。

AIRCの決定は次の通りである。

  1. アワード賃金が週当たり510豪ドル以下の労働者に対し、週12豪ドルの賃上げを認める。
  2. アワード賃金が週当たり510豪ドルを超える労働者に対しては、週10豪ドルの賃上げを認める。

以上の決定は全てのレベルのアワード賃金に適用される。この結果、連邦最低賃金は12豪ドル引き上げられ、週385.40豪ドルとなる。

今回のAIRCの決定は、企業別交渉により賃上げを獲得できた者とアワード制度に依存する者との賃金格差が拡大していることを考慮し、低所得者層のニーズを重視した内容となっている。しかし、今後新規投資の減少が予想されること、失業率が低下傾向にあることなどから、最低賃金引き上げ幅は1998年に比べ抑制されている。

政労使の反応

今回の賃上げ決定の影響を受ける労働者は170万人に及ぶと予想される。ACTUは、今回の決定が使用者団体や政府の敗北を意味するとし、一定の評価を示した。しかし、認められた賃上げ幅が労組の失望を招いている。

政府は週465.20豪ドル未満の労働者を対象に8豪ドルの賃上げを求めていたが、この主張は認められなかった。リース職場関係省長官は今回の決定をバランスのとれたものと評価している。だが同時に、政府は将来の最低賃金引き上げ決定対象者をさらに限定する方針を打ち出している。

使用者団体のいくつかはこの決定がオーストラリア経済に大きなダメージを与えると主張しているが、中には1998年の最低賃金引き上げ幅(週14豪ドル)より低かった点を歓迎する使用者団体もあった。

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