5大財閥の新たな構造改革計画と政府の対応

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年7月

1999年第1四半期における5大財閥の構造改革計画の履行状況を点検するための第2次政府・財界・金融機関懇談会を前に、政府と債権金融機関から不合格の判定を受けていた大宇グループと現代グループは相次いで新たな構造改革計画を発表した。同グループは4月16日、財務構造改善の履行状況を点検するための債権銀行団会議で、最も重要な指標である負債比率の引き下げ目標を達成することができないことを理由に、2月の債権銀行団会議での合格判定から一変して不合格の判定を受けるようになったのである。これには、各財閥が手っ取り早い手段として利用しようとしていた「資産再評価と現物支給による負債比率の引き下げ」に対して政府は実質的な構造改革にはつながらないとして、最後まで容認しないとの方針を貫いたという側面が大きいようである。

大宇グループは4月19日、大宇重工業の造船部門、バス・トラック・エンジン部門、ヒルトンホテル、オリオン電機など主力企業の大半を外国に売却することで、総9兆1415億ウオンを調達し、財務構造の改善と自動車部門に投入することを主な内容とする新たな構造改革計画を発表した。このような構造改革計画により、1999年度中に負債比率は現在の518%から200%に引き下げられる。と共に、大宇グループは自動車、商社、金融などを軸にした自動車専門企業グループに再構築され、系列企業は現在の34社から8社社に減らされることになる。

但し、1998年にアメリカの GM との戦略的提携交渉(79億ドル規模)が「了解覚書(MOU)」締結の段階までいって決裂したこともあるだけに、新たな構造改革計画の要である外国企業への売却交渉が順調に進むかどうかはいまのところ未知数である。今回、売却対象として公表された企業の間では早くも労働組合の反発(ストに突入)や取引先の動揺、国際市場での信用低下などにより生産・販売に支障が出ているうえ、売却交渉でも不利な立場に立たされる恐れがあることを懸念する声が高まっている。

大宇グループに続いて、現代グループも4月23日、2000年末までに自動車部門を、2003年までには電子、建設、重工業、金融サービス部門をそれぞれ分離独立させることを主な内容とする新たな構造改革計画を発表した。系列企業数は1999年中に現在の79社を分離(13社)、合併(15社)、売却(13社、資産1兆ウオン以上の企業多数含む)、清算(26社)で整理し、26社に減らすこと(14兆ウオン)の他、有償増資(12兆ウオン)、外資誘致(45億ドル)などを通して、負債比率を現在の449.3%から199.1%(79兆2710億ウオン―33兆9030億ウオン)に引き下げるとしている。

4月27日に開かれた第2次政府・財界・金融機関懇談会では、李金融監督委員長が「1999年第1四半期まで5大財閥の財務構造改善のための自助努力は当初の目標の81%にとどまり、外資誘致計画は40%しか履行されていないなど、不十分である。債権金融機関も財務構造改善計画の履行状況に対する点検と指導の面で本来の役割を果たしていない」と報告した。そのうえで、「主要債権銀行は5大財閥の構造改革専門チームを各財閥別に15~20人体制に大幅に補強するとともに、いままでのような四半期毎ではなく月毎に財務構造改善計画の履行状況を点検し、上半期中に実質的な構造改革が行われるように誘導する」方針を明らかにした。

また財務構造改善計画の履行が遅れる企業に対しては罰則金利の適用、新規与信の中断などの債権保全措置、ワークアウト及び会社更生法適用の対象に回すなどの制裁措置をとるとともに、計画の履行状況に対する点検と指導を疎かにした債権銀行に対しては担当役員と頭取にまで責任を問うことにしている。その反面、財務構造改善計画が順調に履行される企業に対しては債権金融機関を通じて債務の出資金への転換など、債務の調整を支援し、履行状況に対する点検と指導に積極的に取り組む銀行に対しては総額貸出限度の割当で優遇するなどインセンティブを与えることにしている。

一方、7業種における5大財閥間のビッグディールのうち、最後まで価格交渉が難航していた半導体部門でのビッグディール交渉が4月22日にようやく妥結し、現代電子とLG半導体の代表は4月23日、「LGグループが保有している全株式(9122万株)を2兆5600億ウオンで現代電子に譲渡すること」を主な内容とする基本合意に署名した。現代電子は1999年末まで外資15億5000万ドルを誘致し、10月1日に新設予定の統合半導体会社の負債比率を200%以下に引き下げ、半導体以外の事業部門は別途に分離するか、売却する方針も明らかにした。

ビッグディールに伴う従業員の雇用継承問題については、4月23日の基本合意とは別途に4月24日、「LG半導体の従業員に対しては株式引受日から2年間(生産職の場合、2年6カ月間)の雇用を保障すること」を主な内容とする「雇用及び労働条件継承に関する合意」が新たに締結された。その他の合意内容をみると、第一に、もし雇用調整が不可避な場合、株式引受日から合併前日まで希望退職を実施し、退職慰労金として平均賃金の10カ月分を支給する。第二に、LG半導体の労働協約、就業規則、労働契約の他、労働組合も継承、維持することなどが盛り込まれている。

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