地方自治体での賃金交渉

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年6月

賃金交渉の開始

公共部門の労使は現在、賃金決定と生涯学習、能力開発について交渉を行っている。労使当事者の目的は、秩序ある平穏な賃金交渉に関する枠組みを定めた産別労働協約に類似した労働協約を締結することにある。

使用者にあたる286自治体(コミューン)連盟と23の郡(ランスティング)協議会は、賃金交渉が自治体政府の緊縮財政を考慮すべきだと主張している。これに対し労働組合側は、人事政策や自治体が定める優先順位に関する共同決定についての理解を求め、さらに労使紛争を避けるための団体交渉制度作成への参加に合意するよう要求している。

この交渉が成果を挙げるためには、賃金決定を工業部門における最終的な賃上げ幅に結びつけるような一定の方式が必要である。そうでないと、多くの女性を雇用している地方自治体の賃金は他産業に比べさらに低下することになる。

専門職労働組合は、介護部門に従事する女性の賃金水準を典型的な男性職並みの水準まで引き上げるために、例えば助産婦が病院の医療機器を担当する医療技師と同等の責任を果たしていることを証明することで男女平等オンブズマン制度を利用しようと試みた。しかし、専門職労働組合はこうした戦略によってある程度限定的な成功を収めたものの、それは公共部門の女性の賃金を全般的に引き上げることにはならなかった。

地方自治体のブルーカラー女性労働者の半数はパート・タイムの職しかない。彼女たちの多くはヘルスケア部門の看護補助者や補助看護婦で、病院からの呼び出しを待っている状況である。労働組合の要求がフルタイム雇用を対象にするのは当然であり、こうした要求は看護補助者や補助看護婦の訓練や格上げを含めた専門職の人事政策の標準となり得るのである。

雇用状況

1998年に286の地方自治体(コミューン)は69万人のフルタイムとパートタイムの労働者を雇用していた。この数は1997年に比べて5000人の増加である。月給制のフルタイム労働者数は2%増えたが、パートタイム労働者数は0.7%減となった。その代わり、時間給の臨時労働者(呼出労働者)の数は同じ時期に6000人増加し、11万7000人になった。

数年間の緊縮財政と新規採用の停止により、介護部門の労働者は圧倒的に50歳代と60歳代の女性により占められるようになった。彼女たちが退職する頃には、大量の労働者を採用する必要が生じる。今後5年から10年の間に、地方自治体政府は50万人の労働者を新たに採用しなければならないと予測されている。

病院介護を管掌する23の郡協議会も同じような状況に直面している。郡協議会は現在36万人を雇用しているが、そのうちの85%はヘルスケア部門に従事し、さらにそのうちの84%は女性である。

自治体の財政状態

地方自治体や郡政府は、直接均一所得税(平均して所得の30%)と中央政府からの交付金によって財政を運営している。これらの地方政府は独自に予算や税率を決めているので、大都市周辺の居住者は25%から27%の地方税だけで済む上、過疎化した自治体や北部の郡協議会が提供できるものより充実したサービスを受けることができるという事態が発生している。

中央政府は財政状態が最も良い地方自治体に対して特別に税を課す制度を導入したが、この制度は不人気である上に不適切である。公共部門における平穏な賃金決定制度の確立を目指す労働協約にとって最大の障害は、地方政府の切迫した財政状態である。このような状態は、中央政府機能の継続的な委譲に伴う交付金の削減により引き起こされている。その最も典型的な例は、地方自治体の責任とされた高等学校を含む義務教育制度である。地方自治体の不十分な予算配分のせいで、クラスの規模が拡大され、教員の賃金も悪化している。

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