雇用差別防止のため求人広告ガイドラインを発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年6月

全国使用者連盟(SNEF)、全国労働組合会議(NTUC)および労働力省が共同で作成した求人広告ガイドラインが3月12日、発表された。今後使用者は、求人広告に人種・言語・性別・宗教などを採用条件として記載することができなくなる。

ガイドラインは、求人広告でよく使用される表現に対し「適切」「不適切」を詳細に規定しており、今後使用者はこれに従うことが求められる。たとえば、ガイドラインの発表された3月12日付けの「ストレイツ・タイムズ」紙の求人広告欄に見られた「中国人希望」「男性、25歳~30歳、3~5年経験者希望」「45歳以下の地元中国人女性希望」などの表現は不適切となる。

「適切」と認められる採用基準は、学歴、業務に関連があると認められる技術・知識・能力・経験などで、たとえば「英語・中国語流暢」「体力のある者」や、また「シフト制勤務ないし休日出勤が可能な者」「重器材の持ち運びが可能な者」などの具体的な基準も「適切」とみなされる。

したがって、上記の「中国人希望」は「中国語能力のある者希望」に、「男性、25歳~30歳、3年~5年経験者希望」は「3年~5年経験者希望」に改める必要があり、また「45歳以下の地元中国人女性希望」については人種や年齢の代わりに具体的な能力を示さなければならない。

労働力省が1月24日~30日および2月22日~28日の2期間に6紙に掲載された求人広告を調査したところ、約3割の公告が差別的だった。ただし、同省は意図的な差別は少数と見ている。

SNEFのスティーヴン・リー会長によると、差別的な公告のうち15%(すなわち調査された求人広告の4.5%)については、記載された採用条件は募集業務にとって必要なもので、ただ表現方法に問題があるにすぎなかった。「使用者が『中国人希望』と書く場合、実際には中国語の能力のことを言っているのであって、言いたいのは『要中国語会話能力』ということ」(同会長)。

ガイドラインが法的規制ではなく道義的勧告という形をとったことについて、SNEF、NTUC、労働力省には、雇用差別に対して法的規制を導入した国々では差別は減少しておらず、むしろ訴訟や悪意を助長しただけだとの共通の認識がある。

SNEF は使用者によるガイドライン導入を支援するために、1600の加盟団体に対し無料相談サービスを6カ月間にわたり提供する。

求人広告、2月に再び大幅減

求人広告量の減少幅は1998年1月に前年同月比でマイナス23%まで回復していたが、2月に再び大きく下落しマイナス45%となった。

求人広告量は、ストレイツ・タイムズ紙などシンガポール・プレス・ホウルディングズ加盟紙に掲載される求人広告の・件数ではなく・総面積を集計したものである。求人広告量は東南アジア地域が経済危機に突入した1997年11月以来減少し続けており、1998年後半の各月の広告量は、前年同月比でマイナス67~マイナス45%となっていた。

2月に減少幅が最大だったのは非管理職に対する求人広告で、1月のマイナス28%に対しマイナス74%を記録した。管理職については、1月のマイナス28%に対しマイナス36%であった。製造業ではマイナス51%、サービス業ではマイナス43%であった。

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