GMとUAW、工場新設で交渉

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年6月

GM、新生産方式の導入を計画

ゼネラル・モーターズ社(GM)がミシガン州とオハイオ州で小型車の新工場建設を目指す計画が難航している。全米自動車労組(UAW)は、新工場建設の前提条件である仕事量と職務割当てに関する交渉を引き伸ばしてきた。UAWによれば、ミシガン州ランシングとオハイオ州ローズタウンで工場レベルで行われた労使交渉は1998年末に始まったばかりで、中断されたのは1999年2月のことであるとしているが、再開についてのUAW内の見通しは一致をみていない。

この交渉は、UAWとGMの交渉当事者がデトロイトでコスト削減手段に関して合意するまで再開される見込みはないだろう。デトロイト交渉では、GM側が国産小型車の生産コストを1台当り2000ドル削減するのに役立つように労働協約の変更を望んでいるのに対して、UAW側は雇用と賃金の保障を求めている。この交渉は、1998年夏のストライキ以降の労使関係が修復されたかどうかを示すものであると同時に、この成否は1999年秋の全国協約改定交渉に影響を与えることにもなる。

工場レベルの交渉再開では、職務と仕事量を規定する工場内手続きに焦点を絞って協議される見込みである。GMは工場新設と操業の遅れに直面する可能性がある。

GMは、年間5億ドルの赤字になっている国産小型車の事業を新工場を稼働させて2002年までに黒字にするため、個別部品に代わり組立済み部品の納入を部品メーカーに発注することによるコスト削減を期待している。このモジュール生産方式(modular production methods)が、オハイオ州ローズタウン工場のGMの雇用を5000人から2000人に減らすが、同時に、数100社の新しい部品供給業者での雇用を創出するだろうとしている。ステファン・ヨーキチUAW会長が参加したデトロイトの労使トップ会談で、UAWはGMに、部品供給業者で働く労働者がUAWに加入し、賃金はできる限り高くすべきだと主張している。

UAWの組織化

ミシガン大学労働問題アナリストのショーン・マッカリンデンの分析によれば、独立系自動車部品メーカーでは、組合加盟の労働者の割合が1978年の52.4%から、1998年には23%に減少し、UAW組合員と組合に加盟していない労働者との賃金格差が広がった。1998年にミシガン州のビッグ・スリーの組立工場でUAW組合員の時間給が19.55ドルだったのに対して、無組合部品メーカーの労働者の時間給は10.06ドルだった。マッカリンデンは生産性の向上により今後10年間で、GMではUAWの高賃金労働者が現在の20万2069人から13万4700人に減ると予測している。UAWは組合員を確保するために組織化されている部品供給業者(この中には最近GMをスピン・オフした部品供給業者も含まれる)を対象に、時給12ドル~15ドルの新賃金階層を生み出していこうとするだろう。

また、問題の複雑性から、UAWとGMが1999年にストライキなしに問題解決することができる可能性は7割程度しかないと予測している。

全国協約改定交渉にむけて

1999年の全国協約改定交渉を前に開かれた組合代表者の会議で、ヨーキチUAW会長は、6月のGM、フォード、ダイムラー・クライスラーのクライスラー部門の各社との交渉では、再び雇用問題が組合の優先課題となると語った。UAWの労働協約は、おおよそ39万6000人労働者に適用される。

かつては部品の大半を自社製造していたGMは、主として車輛の設計と組立に移行しつつある。ストライキが行われてからは、GMはこれまで以上に効率的な生産を目指し、いわゆるモジュール・アセンブリー方式の国産小型車工場への転換計画を発表した。ヨーキチ会長は、この生産方式は何も目新しいものではない、アウトソーソングに過ぎない。高い賃金の仕事や各種の給付まで台無しにしてしまう生産方式に過ぎないから、今度の交渉ラウンドで取り組んでいくと、述べている。さらに、GMは高労働コストによる自社生産した小型車の損失が1台当り1000ドルにもなるとしているが、それはおかしい。フォードもクライスラーも小型車に関しては赤字ではない。損失の原因は絶対労働組合のせいではないと、述べている。また、自動車業界の上級経営陣がとっている高給についても非難した。

UAWでは1989年以降組合員の減少が続いていたが、1998年になって初めて減少を上回る組合員を獲得した。しかし、獲得した組合員の大半は、医療部門や政府機関のような自動車産業以外の事業部門に従事する人達であった。

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