1998年の雇用状況総括

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年5月

1998年の労働市場は、長引く干ばつとアジア経済危機の影響を大きく受けた。特に農業、建設業、製造業、金融業での不振が目立った。以下で取り上げる数値は、国家統計局が1998年1、4、7、10月に実施した調査結果に基づいている。

労働力人口と就業者数

1998年1年間に労働力人口は2.3%の伸びを見せ、3105万6000人に達した。労働力参加率にはあまり変化がなく66.1%であった。参加率が最も高かったのは4月で68.6%を記録した。

就業者総数の対1997年比伸び率は0.7%で2791万1000人(年平均)となった。1997年以降、就業者総数の対前年比伸び率は低下傾向にあることがわかる。すなわち、1996年には就業者総数が対前年比で151万人増加したが、1997年には52万9000人、1998年には19万6000人の伸びにとどまった。

産業別の就業者数の推移については、まず農林水産業の場合、長引く干ばつの影響を受け、就業者数が1997年には対1996年比で2.8%減少したのに加え、1998年にはさらに3.4%の減少となった。

工業(第二次産業)の場合は、1997年7月に始まったアジア通貨危機の影響が1998年になって拡大した。就業者数は1997年に4.5%の伸びを見せた後、1998年には1%の減少に転じた。特に影響が大きかったのは建設業で、3万1000人(1.9%)の減少、この他に製造業や炭鉱・採掘業でも減少を記録した。これに対し、電気・ガス・水道業は若干の伸びを示した。

サービス産業の就業者数は1998年に62万4000人(5.3%)増加し、他産業の失業者を吸収する形となった。就業者数の伸びが大きかったのは、地域・社会・人的サービス業(35万9000人の増加)と卸・小売業(17万3000人の伸び)であるが、両者ともインフォーマルセクターの活動が活発な産業として知られている。サービス産業で唯一、通貨危機の影響を受けたのは金融・保険・不動産・ビジネスサービス業(1万6000人の減少)である。

失業と不完全就業

年間の平均失業率は10.1%となり、労働市場の厳しさを反映した形となった。1997年と比較すると、特に1998年の4月(1997年の10.4%から13.3%に上昇)と10月(同7.9%から9.6%)に失業率が高かった。絶対数で見ても、4回の調査いずれにおいても対1997年比で失業者数が増加している。年間の平均失業者数は314万4000人に達した。

平均失業率より高い失業率を記録した地域は、マニラ首都圏(16.0%)やリージョン3(10.4%)、リージョン6(10.2%)、リージョン7(11.7%)、カラガ(10.7%)である。

経済危機の影響はどの年齢層でも同様に指摘できるが、最も顕著な影響を受けたのは15歳から24歳の若年層であった。この年齢層の失業率は21.2%で1997年よりも3.1%上昇した。

不完全就業率は21.8%を記録し、1997年よりわずかに改善した。不完全就業者数は608万2000人で、このうち週労働時間が40時間未満の者が330万6000人であった。

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