11年12月最低賃金の改定169万人に影響
―雇用労働者の11.1%に相当

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2012年11月

政府は9月28日、2011年11月に改定された法定最低賃金(SMIC)の影響に関する調査結果を発表した。改定最賃額未満の賃金で就業していて、改定によって賃金が引き上げられた労働者は約169万人を数え、官公庁などを除く雇用労働者(見習いや研修生なども除く)の11%を占めていた。人数、影響を受けた労働者の割合(影響率)とも、前回の11年1月の改定時に比べ増加していた。

物価2%超えで、11年は2回引き上げ

SMIC(注1)は毎年、物価と賃金の動向を反映して決まられており、2010年以降、原則として1月1日に改定されている(2009年までは毎年7月1日)。11年は2回改定され、1月に時間額が8.86ユーロから1.6%引き上げられ9.00ユーロに、12月には物価上昇率(注2)が2%を超えたため、2.1%引き上げられ9.19ユーロとなった。なお、12年には1月に9.22ユーロ、7月に9.40ユーロへと改定されている(表1参照)。

表1:2011年と2012年の改定額 (単位:ユーロ)
2011年1月改定 9.00
2011年12月改定 9.19
2012年1月改定 9.22
2012年7月改定 9.40

影響率は再び上昇傾向へ

今回の調査結果は、11年12月改定の影響を調べている。それによると、改定が直接的原因となり、競争部門の雇用労働者(注3)1519万人のうち、11.1%に当たるおよそ169万人の賃金が上がった。このSMICの上昇によって影響を受ける労働者の割合(以下、影響率)は、前回の改定と比べて0.5ポイント上昇した。  影響率の変化は、主にSMICの引き上げ幅、雇用労働者数、産業別に定められた最低賃金との差などによって異なる。影響率は1990年以降2000年代半ばまで上昇傾向にあったが、その後2010年にかけて低下傾向にあった。しかしながら、その後は再び上昇に転じている(図1参照)。影響を受ける労働者数は、2005年にピークへ達しおよそ250万人に上ったが、2010年には150万人まで減少した。

影響率の変化は、主にSMICの引き上げ幅、雇用労働者数、産業別に定められた最低賃金との差などによって異なる。影響率は1990年以降2000年代半ばまで上昇傾向にあったが、その後2010年にかけて低下傾向にあった。しかしながら、その後は再び上昇に転じている(図1参照)。影響を受ける労働者数は、2005年にピークへ達しおよそ250万人に上ったが、2010年には150万人まで減少した。

図1:最低賃金影響率の推移

図1:最低賃金影響率の推移(1987-2011年12月)

出所:労働省発表資料より作成

零細企業、パートタイム労働に大きな影響

影響率は企業規模が小さくなるほど高くなる。従業員数500人以上の企業では4.8%、250人以上500人未満の企業では6.9%、100人以上250人未満の企業では8.4%であるのに対して、3人以上6人未満の企業では24.1%、2人の企業では28.7%、1人の企業では31.3%となっている。ただ、2011年1月1日の改定時と比べてみると、従業員数10人未満の企業では変化が見られなかったのに対して、同10人以上の企業では0.5ポイント上昇した。特に、従業員数1人の企業では前回改定時より1.1ポイント低下し、従業員数6人以上10人未満の企業で0.3ポイント低下したのに対して、従業員数20人以上50人未満の企業では0.9ポイント上昇し、同50人以上100人未満の企業では1.6ポイント上昇した。

また、フルタイム労働者で7.8%だったのに対して、パートタイム労働者では25.8%に達していた。2011年1月の改定時と比べると、フルタイムで0.5ポイント、パートタイムで0.6ポイント上昇した。これは、パートタイム労働者には熟練度の比較的低い労働者が多く、賃金が低く抑えられているためである。従業員数1人の企業においてパートタイムで就業する雇用労働者の40.8%がSMICの改定が直接的な原因となり、賃金が引き上げられた。それに対して、従業員数500人以上の企業で働くフルタイム労働者の場合、この割合はわずか2.9%だった。

ファスト・フード関連のパートタイム労働者の73%が相当

産業別では、宿泊・飲食・観光業での割合が高かった。同産業で就業する雇用労働者のうち35%が該当し、パートタイムの労働者については57%に達していた。特に、飲食業のうちファスト・フードに限ると58%が該当し、そのうちパートタイム労働者では73%を占めていた。また、衣料・皮革・繊維業では25%で、パートタイム労働者に限ると54%が該当した。その他、美容・理容業の36%(パートタイム労働者に限ると28%)、製パン・製菓業で32%(同44%)、法人向けサービス業で32%(同49%)となっている。その一方で、銀行・金融・保険業では僅か2%(同5%)、金属・鉄鋼業でも3%(同7%)、プラスティック・ゴム・燃料業で5%(同10%)のみであった。これは、銀行・金融・保険業では(上級)管理職や中間職(上級管理職と一般職・現場労働者の間の職業階級)の比率が高いためとされている。また、金属・鉄鋼業やプラスティック・ゴム・燃料業では、産業別の労働協約による最低賃金がSMICを上回る水準に設定されている場合が多いからである。

影響率を2011年1月の改定時と比較すると、美容・理容業で13ポイント、医薬品販売業(薬局・薬店)で8ポイント、病院業(民間の有床の医療機関)で6ポイントそれぞれ上昇した。逆に非食品小売業では8ポイント低下した。

このように産業によって影響率が異なるのは、企業規模の違いによるものとは言えない。それは、レストラン業などでは企業規模が小さいところが少なくないものの、企業規模が大きいとしても影響率は高いからである。従業員数10人未満の企業で就業する雇用労働者について、全産業での影響率の平均は24%であったのに対して、ホテル・レストラン業では50%であった。また、従業員数10人以上の企業の全産業平均は8%であったのに対して、ホテル・レストラン業では29%にまでのぼった。影響率が産業により異なるのは、パートタイム労働者の割合の違いによることが一因であると言える。例えば、宿泊・飲食・観光業や衣料・皮革・繊維業、美容・理容業では、パートタイム労働者が比較的多いため割合が高くなっていると分析している。

参考

(ホームページ最終閲覧:2012年10月30日)

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