基礎情報:アメリカ(2013年)
6. 労使関係
- 6. アメリカの労使関係:概況
- 6-1. 労使関係
- 6-2. 労働組合
- 6-3. 労使紛争処理制度
6. アメリカの労使関係:概況
労働者と使用者、政府の三者が、労働分配、年金や健康保険といった社会保障制度、職業訓練と労働条件の工場、企業活動の効率的な推進、経済と社会の安定といった利害調整を行うということがアメリカの労使関係の枠組みである。
その基盤となるのは労働者を代表する労働組合と使用者との間で行われる団体交渉である。1933年設立の連邦法である全国産業復興法 (National Industrial Recovery Act, NIRA) が労働者の団結権、団体交渉権を保障し、1935年設立の全国労働関係法によって合法的に労働組合と使用者が団体交渉を行うための手続きが示された。
この合法的に行う団体交渉を基盤として労働組合のない企業とそこで働く従業員に団体交渉で得られた成果が波及することが期待されてきた。
公共部門で働く労働者の場合も使用者である連邦政府もしくは地方行政府との合法的な団体交渉を基軸としているが、連邦政府では大統領令、地方行政府はそれぞれの法律によって交渉内容が規定されている。原則として争議権は認められておらず、連邦政府職員の場合は、交渉事項から賃金が除外されている。
1970年代までは労働組合組織率の高さなどを背景としてこの枠組みが安定的に機能してきたが、80年代以降は組織率が20%を割り込んだほか、労働組合を回避して経営に従業員の参加を求める人的資源管理的手法を取る企業数が急増したことなどにより、労働組合と使用者による合法的な団体交渉に基づく枠組みは大きく揺らいでいる。
組織率の低下は全国労働関係法に基づく合法的な団体交渉の手続きが労働組合側にとって不利な状態になっているとして、その改正を求める声が労働組合側からあがっている。労働組合が使用者と合法的な団体交渉を行うためには、同種の職務と雇用形態にある労働者が交渉単位としての認定を全国労働関係局 (National Labor Relations Board) から受けたのち、その労働者の30%以上から賛成を得る必要がある。そのうえで、その交渉単位の労働者が投票を行い、過半数を超えればその労働者が属する労働組合が使用者と合法的に団体交渉を行うための権利を得ることができる。しかし、過半数の賛成を得ることが難しいだけでなく、選挙期間が長いことなどにより、近年では合法的な団体交渉権を獲得できる可能性が大幅に減少している。そのために、選挙期間中の使用者側による反労働組合的な活動への罰則強化や、団体交渉権を獲得した後に使用者側が真摯に交渉に応じない場合の罰則の強化、および投票における要件の緩和などを行う改正である従業員自由選択法(Employee Free Choice Act)の必要性が労働組合側から強調されている。
6-1 労使関係
一般的に、労働組合は産業・職種ごとに組織されている。本部、いくつかの州を統括する地方本部、各地方支部(ローカル)から形成される。産業ごとの組織の場合は、それに加えて企業単位の組織が存在する。1980年代までは産業単位の労使による統一交渉がみられたが、国際市場競争が激化するなかでその構造は分権化され、企業単位の組織の労使が交渉をリードするようになっている。産業別、職種別にこだわらない地域ごとに独立した労働組合も存在している。
産業別、職種別、独立系の労働組合の大半はアメリカ労働総同盟・産別会議 (AFL-CIO) もしくは、勝利への変革連合(Change to Win Coalition: CWC)に加盟している。それ以外には世界産業労働組合 (Industrial Workers of the World: IWW) が小規模ではあるが全国組織として活動する。また、それらに属さない独立系の労働組合もある。
AFLCIOは、1955年に職業別組織であったAFLと、産業別組織であったCIOが合併してできあがったが、2005年にはCWCが分離するかたちで分裂した。
組織率は1983年20.1%が2000年に13.5%となり、2010年には11.7%となるなど低下の一途にある。組合員数は1983年の1770万人から2010年の1480万人まで低下した。公的部門の組織率が37.0%と比較的に高い一方で、民間企業組織率は6.9%にすぎない。
また、フルタイム労働者の組織率は13.1%でパートタイム労働者の組織率6.4%のほぼ倍となっている。年齢別では、55歳から64歳の組織率が15.7%ともっとも高く、16歳から24歳の若年労働者は4.4%ともっとも低くなっている。
6-2 労働組合
組織名 | 集計・公表時期 | 組合員数 |
---|---|---|
国際サービス労組(SEIU) | 2010年3月末 | 1,857,136人 |
全米州都市労組(AFSCME) | 2011年 | 1,423,584人 |
チームスター(Teamsters) | 2008年 | 1,402,878人 |
国際食品・商業労組(UFCW) | 2008年 | 1,319,966人 |
国際電気工友愛労組(IBEW) | 2013年 | 750,000人 |
全米教員連盟(AFT) | 2009年 | 725,000人 |
国際機械工労組(IAM) | 2006年 | 646,933人 |
国際建設労組(LIUNA) | 2010年3月末 | 632,605人 |
全米通信労組(CWA) | 2008年 | 549,791人 |
全米自動車労組(UAW) | 2013年 | 390,000人 |
6-3 労使紛争処理制度
労働組合と使用者との間の団体交渉が30日を超えて妥結しない場合、連邦斡旋・調停局 (FMCS: Federal Mediation and Conciliation Service)、州斡旋・調停局 (SMCS: State Mediation and Conciliation Service) が紛争調停と斡旋を行う。
また、全米仲裁人協会 (AAA: American Arbitration Association) が労使間の苦情処理等のトラブルの斡旋を行っている。
不当労働行為等が生じた場合や、合法的に団体交渉を行うための組合承認選挙を実施する際の手続きなどは全国労働関係局 (NLRB: National Labor Relations Board) が取り扱う。
公共部門の労働組合の場合は、各州に設置された公共雇用関係局 (Public Employees Labor Relations Board) が、また主要運輸産業の労働者は全国仲裁委員会 (NMB: National Mediation Board) が仲裁にあたる。
なお、労働組合が団体交渉権を持っていない企業は、紛争解決のために人事コンサルタント企業を活用するところが多いほか、深刻なトラブルの場合は訴訟となる。
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