基礎情報:スウェーデン(2004年)

基礎データ

  • 国名:スウェーデン王国(Kingdom of Sweden)
  • 人口:896万人(2003年)
  • 経済成長率:1.6%(2003年)
  • GDP:2513億ドル(2003年)
  • 一人あたりGDP:2万8100ドル(2003年)
  • 労働力人口:449万7000人(2003年)
  • 失業率:5.8%(2003年)
  • 就業者数:423万4000人(2003年)

資料出所:OECD in Figures 2004

I.2004年の動向

1.雇用情勢

2004年末時点の顕在失業率は4.6%(24万6000人)であり、失業者に含まれない労働市場政策プログラム登録率は2.8%(12万2000人)であった。合計の不均衡数値は7.4%であり、前年比2万9000人増の36万9000人となった。2004年11月は、顕在失業率5%、職業訓練参加者3%であった。12月の顕在失業者数(24万6000人)は前年同期比1万2000人減少し、労働市場政策プログラム者数は1万4000人減少した。

2004年第2四半期にレイオフされた労働者数は、2万8000人となり、依然高い水準ではあるが、前年同期の3万8000人から1万人減少した。建設業、小売業及び製造業においては、より積極的な採用意欲が見られる。とりわけ自動車産業は、追加採用にもっとも意欲的である。2004年12月は、ジョブ・センターに前年同期比2000件増の2万件の求人が報告された。しかしながら運輸、ホテル、レストランなどの業種は、自然減により雇用者を減少させている。統計数値は、使用者が依然として持続的に活発な経済活動を示している経済指標を信用していないことを表している。

地域的にも大きな不均衡が見られ、例えば北部のノルボッテン(Norrbotten)やイェーヴレボリ(Gavleborg)では、合計の総失業率(顕在失業率と労働市場政策プログラム登録率の合計)は、それぞれ13.8%、12.9%であった。一方、ストックホルム(Stockholm)では、完全雇用に近い水準の5.3%(顕在失業率約2%、労働市場政策プログラム登録率約3%)であった。

全国労働市場委員会(AMS)は、最も成功した労働市場政策は長期失業者、障害者や移民を追加的に雇用する場合に、ジョブ・センターから使用者に対して支給される雇用補助金であったと報告している。結果として長期失業者数(6カ月以上。ただし25歳以下の若年者は100日以上)は減少し、とりわけ若年の長期失業者数は、7万5000人から5万5000人に減った。労働市場庁は、この政策のためのより大きな財源を財務省に要求した。補助金は、主に、インフレに影響しない減税の形式をとっている。

経済専門家の将来の雇用情勢に関する見方は、依然として分かれている。国立経済研究所(Konjunkturinstitutet)は、主に労働力などの資源が完全には活用されていないため、経済活動は依然低調であると強調している。そのため完全雇用に近い高い経済成長が実現するまで、金利を引き上げるべきではないとしている。

雇用の増加はいつもGDPの成長に遅れて現れる。今回はさらに高い生産性が雇用増を遅らせている。もし生産性がさらに上昇するなら、雇用の増加はさらに遅れる。しかし、そろそろ雇用増が実現しそうである。

スウェーデン企業連盟(SN)は楽観的ではなく、雇用増加を実現させるためには、新規企業に対するより多くの投資が必要であるとしている。現在スウェーデンの経済規制は新規企業に有利となっておらず、輸出産業の利益はむしろ海外に投資されていると主張する。

2004年末の政労使及び経済学者を巻き込んだ経済論議の結論は、2005年には4万~8万人の雇用が増加し、1~2ポイントの失業率低下が期待できる、というものであった。3%に近い最高水準の積極的労働市場政策が維持されることにより、顕在失業率は4%以下に低下するであろう。しかし、構造変化や通常の転職に基づく通常の労働移動率を反映した2%の完全雇用水準には程遠い状況にある。

2.労働法制

(1) 傷病手当法

2005年1月1日、改正傷病手当法が施行された。これにより使用者は、傷病休暇が2週間を超える欠勤者の傷病手当の15%を長期に渡って負担しなければならなくなった(当初2週間は全額使用者が負担)。改正前は、使用者が当初3週間分の傷病手当全額を負担し、それ以降は、健康保険から全額支払われていた。傷病手当の月額は、賃金の80%又は2万5000スウェーデン・クローナ(SEK)のいずれか低い額である。使用者の傷病手当保険への拠出割合は、0.24%引き下げられた。従業員数の少ない小規模企業には15%の負担が非常な重荷となっているため、適用除外措置が設けられている。

スウェーデンでは、諸外国の多くとは異なり、傷病手当には支給期限がなく、長期に渡る傷病の場合には、非常に費用がかかっている。

元労働組合幹部出身のハンス・カールソン労働大臣は、「2008年までに傷病欠勤率を、2002年の労働時間の6%の水準から半減させる」と公約している。同大臣は、「傷病手当の15%の使用者負担を導入することにより、使用者がより積極的に労働災害の防止やリハビリテーションの実施に取り組むようになると期待している。改正前の制度では、使用者は安易に傷病手当の負担を健康保険に押し付けていた」と述べた。

他方、小規模企業の使用者及び労働組合の一部は、新たな共同出資の制度が健康問題を抱える労働者の就業をより困難にすると危惧している。使用者は、労働者の採用をより慎重に実施するようになることが予想される。とりわけ男性より傷病欠勤日数の多い女性の就職が困難になる恐れがある。小規模企業の4社に1社は、現在、傷病欠勤の多い労働者を解雇しようとしているとの報道もある。

(2) サバティカル休暇

2002年以来いくつかの地域で試験的に導入されてきたサバティカル休暇制度が、2005年1月から全国で拡張適用されることとなった。基本的に1万2000人の労働者が手当を受給しながら最長1年の休暇を取得することができ、一時的な代替要員として失業者を雇い入れることとなる。

2002年2月、政府は、10の地方自治体において、試験的に2年間のサバティカル休暇制度を導入した。この試験的制度では、失業者が代替要員として雇い入れられることを条件に、労働者は最長1年間のサバティカル休暇を取得できる。休暇期間中、労働者は、失業手当の85%(賃金の68%)に相当する手当を国から受給しながら、家庭での育児、学習や新規開業を行うことができる。しかし、他の職に就いたり、従前の職場で臨時労働者として働くことはできない。

10の地方自治体における2002年から2004年にかけての実験は、休暇を取得する労働者及び代替要員の労働者双方にとって、成功であったと評価されている。2004年10月までに1万4400人がサバティカル休暇を取得した。約半数が50歳以上であり、4分の3が女性であった。2004年12月の試験期間終了前に、議会はこのプロジェクトを全国に拡大することを承認した。

このため2005年1月から、サバティカル休暇制度の第2段階が全国で開始された。合計1万2000人の期間の定めのない雇用契約の労働者が、失業者を代替要員として雇い入れることを条件に、サバティカル休暇を取得することができる。政府によると、制度の目的は、労働者に個人的事情や技能開発のための休暇を与える一方で、公共職業安定所に登録している失業者に職を提供することである。労働市場庁(AMS)がこのプロジェクトに責任を持っている。

拡張されたサバティカル休暇制度の詳細は、試験期間の制度と非常に似通っている。勤続2年以上の労働者が最長1年の休暇を取得し、賃金の68%の手当を受給することができる。移民や障害者などの長期失業者が休暇取得者の代替要員として仕事に就く。代替要員の採用は使用者の選択による。職業安定所が候補者を紹介するが、使用者は失業登録されている限り他の者を採用することができる。代替要員の賃金、その他の労働条件は、使用者と当該労働者の合意によって決まる。

サバティカル休暇制度には、2005年で15億スウェーデンクローナ(SEK)の予算が措置されている。この制度がすべての政党に支持されたわけではない。環境党は、この改革を少数与党の社民党政府に協力する条件とした。労働組合は、むしろ失業者のための公認職業訓練に予算をつぎ込むべきであると考えていた。サバティカル休暇の予算が、職業安定所に登録された失業者のための職業訓練を含む労働市場政策の予算を食ってしまうことは明白である。顕在失業率5%、職業訓練プログラム参加者3%の現下の雇用情勢において、労働市場政策の予算から労働者の休暇のために費用を拠出することは、たとえそれが賃金の68%の水準であったとしても、非常に贅沢な制度と見る向きもある。

3.労使関係

工業部門(紙、パルプ、鉄鋼、金属、化学等)の労働協約改定交渉が行われ、2004年春に新たな3年協約に合意した。2004年4月から2007年3月までの賃上げは、3年間で平均7.3%(若干の労働時間短縮分を含む)となった。7.3%の賃上げは、後にホワイトカラーや大学教員など、官民双方のパターンとなった。官民のサービス産業労働者は7.3%以上の賃上げを獲得したが、それは、これらの労働者が製造業労働者のように生産性向上に基づく賃金ドリフト(中央交渉で決まった賃金率を上回る個別企業などの賃金上乗せ)の恩恵を蒙ることがないためである。地方公務員(病院や地方メディカル・センターの医師・公認看護師・准看護師)は最高の賃上げを獲得した。これは労働側が公認看護師不足を背景に、地方政府に対し退職して民間サービスに身を投じるという脅しをかけたことによる。

准看護師、雑役夫を含むブルーカラーの地方政府職員は、ケア部門の公認看護師のような厳しい態度をとっておらず、最低賃金の引き上げやより多くの正職員ポストなど、より良い労働条件を獲得するために団体交渉を重視している。労働組合は、もし協約が期待した結果をもたらさない場合は3年目に入る前に再交渉する権利を規定した3年協約(2003年~2006年)を締結していた。その規定に基づく再交渉の結果、1%の追加的賃上げで合意した。

2004年は、労働力人口の半数の200万人近くの労働組合員の賃金及び労働条件に関する団体交渉が行われた。高い失業率の結果として、賃上げは低く抑えられ、紛争も少なかった。ナーシングホームや病院の民営化に対抗した地方政府のブルーカラー労働組合、スカンジナビア航空の運輸労働者組合、電気労働者組合、郵便労働者組合など、ストライキ突入の脅しを背景に交渉を行った組合もいくつか見られた。しかし2004年に実際にストライキに突入したのは3件のみであった。

4.EU拡大と外国人労働者問題

2004年5月のEU拡大に伴い、EU加盟国の市民は、すべての加盟国の領域内を自由に旅行し、滞在し、居住する権利が保障された。しかし、労働者として働くことを目的とした移動については、移行期間が設けられ、現加盟国は最長7年間、新規加盟国からの労働者の受け入れに制限措置を講ずることが認められた。スウェーデンは、この制限措置を一切課さないこととした。

ラトビアの建設会社Laval and Partners(L&P)は、ストックホルム近郊の学校建設工事を落札し、工事を行っていた。L&P社は、同社が雇用する14人のラトビア人労働者に対して、スウェーデンの労働協約で定められた建設労働者の賃金を下回る賃金を支払っていた。L&P社は、ラトビア人労働者の賃金を、現在の80スウェーデン・クローナ(SEK)から105SEKに引き上げようとしたが、スウェーデン建設労働者組合は、130~145SEKへの引き上げを要求し、L&P社はこれを拒絶した。

その結果、建設労働者組合は、2004年11月2日、L&P社の工事現場の封鎖を開始した。この紛争は、12月3日にスウェーデン電気労働者組合が当該建設現場でのすべての電気工事をボイコットすると発表したことによって深刻化した。電気労働者組合は、さらに12月28日、L&P社が工事を行っているすべての現場で、同社が労働協約に署名するまでストライキを継続すると宣言した。

このような同情的行動は、スウェーデンの労使関係法制では合法とされている。法律と労働協約に基づくスウェーデンの制度では、外国人労働者を含む未組織労働者の労働条件についても、労働組合が争議行為により労働協約の締結を要求することを認めている。これは、スウェーデン労働市場においてはスウェーデンの労働協約が適用されるとする一般原則に基づくものである。他方、L&P社は、外国で働くラトビア人労働者に対しても、ラトビアの労働協約が適用されるべきであるとし、そうでない場合は差別的取り扱いであると主張した。

この問題は、両国間の外交問題にまで発展した。スウェーデン政府は、スウェーデンの労働組合の行動を支持する旨を表明し、ラトビア政府は、スウェーデン労組の現場封鎖をEU域内における人の移動の自由を侵害するものであると主張した。L&P社は、スウェーデンの労働組合と労働協約を締結するよう要請されたが、同社は、すでに自社の雇用するラトビア労働者と労働協約を締結していると反論した。

L&P社は、EU法に違反するとして、スウェーデン建設労働者組合を提訴するとともに、この問題を欧州裁判所へと持ち込むという脅しをかけた。

スウェーデン労働裁判所は、12月22日、労働組合の現場封鎖は、スウェーデンの法規に照らして、非合法とは言えないという判断を示した。L&P社は、2005年1月この判決を受け入れず労働協約への署名を拒否し続けるとともに、この事件を最高裁判所へ控訴した。

なおその後、学校改修工事を発注している地方自治体は、2月10日、8つの労働組合のボイコット運動にまで発展した労使紛争により、ラトビア企業が工事を完成させることは不可能であると判断した。これによりL&P社とラトビア人労働者は本国に帰る決断を下した。2月22日、最高裁判所は、L&P社の控訴を棄却した。

外国人労働者の賃金をめぐる紛争は、ラトビア企業に限ったことではなく、ポーランド企業のいくつかでも発生している。今後も同様の事件の発生が予想されるため、スウェーデン労働組合総同盟(LO)とスウェーデン経営者団体連盟(SAF)は、スウェーデンで操業する外国企業の賃金決定制度の設計に関する話し合いを行っている。

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※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:スウェーデン」

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