基礎情報:フィリピン(2004年)
基礎データ
- 国名:フィリピン共和国 (Republic of the Philippines)
- 人口:8,462万人 (2003年)
- 経済成長率: 4.5% (2003年)
- GDP:864億ドル (2003年)
- 一人あたりGDP:964ドル (2003年)
- 労働力人口(注):3,586万人 (2004年) *速報値
- 失業率:11.8% (2004年平均)
- 就業者数:3,161万1,000人 (2004年) *速報値
注:
労働力人口は、財・サービスの生産に携わっている15歳以上の男女で、就業者、休業者、および完全失業者の合計。
資料出所:LABSTAT January 2005, Bureau of labor and Employment , DOLE, Philippines
National Conciliation and Mediation Board
I.2004年の動向
2004年5月10日の大統領選で、続投が決まったアロヨ大統領は、雇用創出、国庫の安定、インフラ整備などを公約として掲げ、6年間という新たな任期に臨んだ。特に雇用については、任期中の6年で1000万人の雇用創出を目標としている。これは、年平均で、およそ170万人となるが、2004年の雇用率の伸びは3.2%、97万6000人にとどまった。アロヨ大統領の目標数値には届かなかったものの、政府は「目標達成は可能である」と自信を示している。しかしながら、失業率は2003年より悪化しており、厳しい雇用情勢のなか、雇用創出をいかに実現するかが注目される。
また、海外出稼ぎ労働者(OFW)からの送金に頼るところが大きいフィリピン経済であるが、OFW派遣の更なる拡大を目指し、日本とのFTA交渉においても、労働市場の開放を強く求めている。5度に渡る交渉の結果、一定の要件を満たすフィリピン人の看護師・介護福祉士候補者の日本への入国と日本語等の研修修了後、日本の国家資格を取得するための準備活動の一環として就労することが認められた(滞在期間の上限、看護師3年、介護福祉士4年)。なお、国家試験を受験後、国家資格取得者は看護師・介護福祉士として引き続き就労が認められる。この合意により、海外での就労を希望する看護師・介護福祉士は、今後も増加が予想されるが、その一方で、フィリピン国内の優秀な人材が不足するという問題も生じている。
労働年齢人口(15歳以上)は、2.6%(約134万9千人)増加し、およそ5314万人に達した。一方、労働力人口は、より速いペースでの拡大をみせ、3.7%(約128万9000人)の増加。3586万人に達した。この労働力人口の増加傾向は、労働力率の上昇(2003年:66.7%、2004年:67.5%)が影響している。特に若年層(15歳から24歳まで)と男性の労働力率の増加(若年層は50.9%から52.2%、男性は82.2%から83.9%)が目立つ結果となった(表1)。
範囲 | 15歳以上の人口 | 労働力率 | 労働力人口 | 対前年比の増減 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2004 | 2003 | 2004 | 2003 | 2004 | 2003 | 増減 | 増減率 | |
性別 | 53,142 | 51,793 | 67.5 | 66.7 | 35,860 | 34,571 | 1,289 | 3.7 |
男性 | 26,464 | 25,799 | 83.9 | 82.2 | 22,199 | 21,216 | 983 | 4.6 |
女性 | 26,679 | 25,994 | 51.2 | 51.4 | 13,661 | 13,354 | 307 | 2.3 |
年齢 | 50,344 | 51,793 | 67.5 | 66.7 | 35,860 | 34,571 | 1,289 | 3.7 |
15-24歳 | 16,088 | 15,738 | 52.2 | 50.9 | 8,393 | 8,015 | 378 | 4.7 |
25-54歳 | 29,128 | 27,705 | 78.4 | 78.5 | 22,829 | 21,757 | 1,072 | 4.9 |
55歳以上 | 7,922 | 8,344 | 58.5 | 57.5 | 4,635 | 4,798 | -163 | -3.4 |
資料出所:LABSTAT Vol.9 No.2 January 2005
雇用の伸びについては、第1四半期に大きな成長をみせたものの、第4四半期には、急速に減少した。これは、第4四半期に急速に増加した2003年と、全く逆の動きである(表2)。全体的に、2004年の雇用の伸びは、3.2%(97万6000人)で、2003年の1.9%(57万4000人)に比べ、かなり高い。
部門別では、サービス業が4.5%(65万9000人)増の1523万6000人で、全体の48.2%を占めた。工業は、3.3%(15万9000人)増の499万9000人、農林水産業は、1.4%(15万8000人)増の1137万7000人であった。これらの部門における雇用増が、全国的な雇用の伸びに実質的に貢献したといえる。
調査した月 | 総雇用人口 | 対前年同期比増減数 | 対前年同期比増減率 |
---|---|---|---|
2003年(平均) | 30,635 | 574 | 1.9 |
1月 | 30,119 | 414 | 1.4 |
4月 | 30,418 | 232 | 0.8 |
7月 | 30,451 | 347 | 1.2 |
10月 | 31,553 | 1,302 | 4.3 |
2004年(平均) | 31,611 | 976 | 3.2 |
1月 | 31,547 | 1,428 | 4.7 |
4月 | 31,533 | 1,115 | 3.7 |
7月 | 31,632 | 1,181 | 3.9 |
10月 | 31,733 | 180 | 0.6 |
資料出所:LABSTAT Vol.9 No.2 January 2005,
項目 | 2004年 | 2003年 | 増減 | 増減率 |
---|---|---|---|---|
労働力人口 | 35,860 | 34,571 | 1,289 | 3.7 |
雇用人口 | 31,611 | 30,635 | 976 | 3.2 |
産業部門別 | ||||
第1次産業 | 11,377 | 11,219 | 158 | 1.4 |
第2次産業 | 4,999 | 4,840 | 159 | 3.3 |
鉱業 | 118 | 104 | 14 | 13.2 |
製造業 | 3,061 | 2,941 | 120 | 4.1 |
電気・ガス・水道 | 120 | 112 | 8 | 6.7 |
建設業 | 1,701 | 1,683 | 18 | 1.0 |
第3次産業 | 15,236 | 14,577 | 659 | 4.5 |
卸小売業 | 5,872 | 5,601 | 271 | 4.8 |
ホテル・レストラン | 806 | 750 | 56 | 7.5 |
運輸・通信 | 2,426 | 2,310 | 116 | 5.0 |
金融仲介業 | 328 | 303 | 25 | 8.3 |
不動産・レンタル業 | 690 | 639 | 51 | 8.0 |
行政機関 | 1,491 | 1,415 | 76 | 5.4 |
教育 | 939 | 926 | 13 | 1.3 |
医療・福祉 | 360 | 371 | -11 | -2.9 |
コミュニティ・個人サービス | 835 | 861 | -26 | -3.0 |
家政婦 | 1,487 | 1,399 | 88 | 6.3 |
特別地方職員 | 1 | 2 | -1 | -37.5 |
雇用契約内容 | ||||
賃金労働者 | 16,472 | 15,354 | 1,118 | 7.3 |
自営業労働者 | 11,613 | 11,517 | 96 | 0.8 |
無報酬の家族労働者 | 3,526 | 3,765 | -239 | -6.4 |
労働時間別就労形態 | ||||
40時間未満 | 11,610 | 11,311 | 299 | 2.6 |
40時間以上 | 19,367 | 18,845 | 522 | 2.8 |
※数値は、DOLE発表のまま。
資料出所:LABSTAT Vol.9 No.2 January 2005,
年平均の失業率は11.8%と2003年よりやや悪化した(表4)。失業率は、男性、女性ともに上昇している。2003年と比較すると、男性は、11.0%から11.5%に、女性は11.9%から12.4%に、それぞれ上昇している。また、2003年同様、若年層(15歳~24歳)の失業者数が半数近く(47.2%)を占める。若者の失業率は、23.9%で、国全体の平均失業率のおよそ2倍にもなる(表5)。この他に注目すべき点として、失業者の高学歴化が挙げられる。失業者の割合を学歴でみると、大卒者が34.0%(144万4000人)、高卒者は28.0%(119万1000人)となっている。
調査した月 | 失業人口 | 失業率 |
---|---|---|
2003年(平均) | 3,932 | 11.4 |
1月 | 3,559 | 10.6 |
4月 | 4,217 | 12.2 |
7月 | 4,339 | 12.6 |
10月 | 3,567 | 10.2 |
2004年(平均) | 4,249 | 11.8 |
1月 | 3,900 | 11.0 |
4月 | 5,002 | 13.7 |
7月 | 4,206 | 11.7 |
10月 | 3,886 | 10.9 |
資料出所:LABSTAT Vol.9 No.2 January 2005,
範囲 | 失業者数 | 比率 | 失業率 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
2004 | 2003 | 2004 | 2003 | 2004 | 2003 | |
性別 | 4,249 | 3,936 | 100.0 | 100.0 | 11.8 | 11.4 |
男性 | 2,558 | 2,343 | 60.2 | 59.5 | 11.5 | 11.0 |
女性 | 1,691 | 1,592 | 39.8 | 40.4 | 12.4 | 11.9 |
年齢 | 4,249 | 3,936 | 100.0 | 100.0 | 11.8 | 11.4 |
15-24歳 | 2,008 | 1,861 | 47.2 | 47.3 | 23.9 | 23.2 |
25-54歳 | 1,861 | 1,730 | 43.8 | 44.0 | 8.1 | 8.0 |
55歳以上 | 380 | 343 | 8.9 | 8.7 | 8.2 | 7.1 |
資料出所:LABSTAT Vol.9 No.2 January 2005
海外出稼ぎ労働者(OFW)については、前年(2003年)比0.4%増の87万1700人とほぼ横ばいだった。内訳は、陸上ベースの労働者が64万6578人、海上ベースの労働者数は22万5122人となっている。しかし、OFW送金額は、前年(2003年)比11.8%増の85億4445万米ドルに上り、目標の同6%増を大きく上回った。なお、この金額は過去8年間で最高となる。看護師や介護福祉士等の医療関係職や事務職など、高給専門職に就く陸上ベースの労働者数の増加が影響している。
日本とのFTA交渉において、条件つきとはいえ、フィリピン人看護師と介護福祉士の日本での就労が認められたこともあり、海外での就労を希望する医療関係従事者は今後も増加すると予想される。外貨獲得の重要な担い手として期待され、政府は積極的に海外への送り出しを展開する意向を示しているが、国内の医療体制の維持・向上と両立させることが大きな課題といえる。
参考資料:
- LABSTAT Vol.9 No.2, January 2005, " THE 2004 EMPLOYMNT SITUATION(THE YEAR IN REVIEW)", Bureau of Labor and Employment Statistics, Department of Labor and Employment, Manila, Philippines
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- 基礎情報:フィリピン(2004年)
- 基礎情報:フィリピン(2003年)
- 基礎情報:フィリピン(2002年)/全文(PDF:848KB)
- 基礎情報:フィリピン(2001年)/全文(PDF:366KB)
※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:フィリピン」