基礎情報:中国(1999年)・続き

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

1. 労働時間に関する法律

1994年2月7日、国務院は『労働者の労働時間に関する国務院の規定』を発布した。同『規定』の中心的な内容は「国が労働者毎日8時間労働・週平均44時間労働の労働時間制度を実行する」ことである。『規定』は、中国に成文化した労働時間法規がない歴史に終わりをつげ、労働者に休息権の保障を確実に獲得させた。それは、新中国成立後全国に適用する最初の労働時間制度の規定でもある。

1994年7月5日に発布された『中華人民共和国労働法』は労働時間制について再度明確な規定をしている。その第4章『労働時間と休息休暇』の第36条では「国は、労働者の労働時間が毎日8時間を超さず、毎週44時間を超さない労働時間制度を実行する」と規定されている。『労働法』は1日の労働時間を規定すると同時に、週の労働時間が44時間を超さないよう明確に規定している。

1995年3月25日、国務院は『労働者の労働時間に関する国務院の規定の改訂に関する国務院の決定』を発布した。同『決定』は1995年5月1日から1日8時間労働、週40時間労働の新しい労働時間制度を実行すると規定し、1995年5月1日からの施行に困難のある企業は延期できるが、遅くとも1997年5月1日から実施すべきであるとしている。1997年4月24日、労働部は『企業における新しい労働時間制度の全面的実施の促進に関する労働部の通知』を発布し、企業が1997年5月1日から1日8時間、週40時間の新しい労働時間制度を実行するよう通知した。

2. 企業の労働時間

現在、国の関係諸法規の規定により、企業の労働時間は1日8時間、週40時間、すなわち週5日労働制となっている。労働者使用単位は、労働者の週休を最低1日を保証する。同時に『労働法』の規定により、企業はその生産の特殊事情に基づいて「その他の労働、休息形式を採用する」こともできる。たとえば、不定時労働時間制の採用はそれである。不定時労働時間は職責範囲が固定した労働時間数の制限を受けない労働者に対して採用する労働時間制度を指す。これに対し『労働法』第37条は「出来高労働に従事する労働者に対しては、労働者使用単位は本法第36条の規定による労働時間制度に基づいてその労働ノルマと出来高報酬基準を合理的に確定すべきである」と規定している。

企業は生産の必要に基づいて労働時間の延長をすることもできる。つまり、労働者に時間外労働をさせることができる。労働時間の延長については『労働法』では明確に規定されている。

  1. 第41条は「労働者使用単位は、生産経営の必要で、労働組合および労働者と協議したうえ、労働時間を延長することができる。通常、1日1時間を超えてはならないが特別な理由で労働時間の延長が必要な場合は、労働者の健康保障を条件に1日3時間まで延長できる。ただし、月36時間を超えてはならない」と規定している。
  2. 第42条は「つぎの諸事情の1つに該当する場合、労働時間の延長は本法第41条の規定による制限を受けない」と規定している。
    • 自然災害、事故の発生またはその他の原因で、労働者の生命健康および財産の安全が脅かされ、緊急措置が必要となった場合。
    • 生産設備、交通輸送線路、公共施設の故障で生産と公共利益に影響がおよぼされ、即時に応急修理をしなければならない場合。
    • 法律、行政法規に規定されるその他の事情。

上に述べた事情で労働時間の延長をする場合は、つぎの基準に基づいて労働者の正常の時間給を上回る賃金報酬を支給すべきである。

  1. 労働者に労働時間を延長する場合は、賃金の150%を下回らない報酬を支給する。
  2. 休日に労働者を出勤させ、代替休暇を与えない場合は、賃金の200%を下回らない報酬を支給する。
  3. 法定休暇に労働者を出勤させる場合は、賃金の300%を下回らない報酬を支給する。

3. 企業の休暇制度(有給・無給)

企業労働者の休暇制度は国の関係規定に基づいて執行する。

法定祭日。『労働法』第40条は「つぎの祭日期間に法律によって労働者に休暇を与えるべきである。1)元旦、2)春節、3)メーデー、4)国慶節、5)法律・法規に規定されるその他の法定休暇、祭日」と規定している。休暇日数は、元旦1日、春節3日、メーデー1日、国慶節2日となっている。祭日休暇の場合は、企業が法律に基づき賃金を支給する。

年間休暇。これは労働者が毎年1度連続有給休暇の享受を指す。年間休暇の時間は勤続によって決まる。『労働法』第45条は「国は年間有給休暇制度を実施する。労働者は勤続1年以上に達した場合、年間有給休暇を享受する。具体的な規則は、国務院が規定する」としている。

結婚、葬儀休暇。労働者本人の結婚または労働者の直系親族(父母、配偶、子女)死亡の場合は、1日ないし3日の結婚・葬儀休暇をとることができる。結婚の場合、双方が同じ場所にいない場合、他の地方にいる直系親族が死亡し、本人がそこへ行って葬儀を処理する必要がある場合は、道のりの遠近によって道のり休暇を別に与える。

出産休暇。女性労働者の出産休暇は90日間で、そのうち産前休暇は15日間である。難産の場合は、出産休暇を15日間増やす。多胎児出産の場合は、多く生まれた嬰児1人につき、出産休暇15日間増やす。

帰省休暇。労働者が他の地方で働く場合、未婚者は毎年20日間の有給休暇をとって両親のご機嫌を伺うことができ、既婚者は毎年30日間の有給休暇をとって配偶者を訪問することができる。配偶者双方が他の地方で働く場合は、4年ごとに1回20日間の有給休暇をとって両親のご機嫌を伺うことができる。

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1. 労動関係概況

過去15年間、中国は対外開放、経済発展、改革の深化に伴って、公有制を主体とする諸経済形式と諸経営方式をつくりあげ、単一の国営集団の労働関係を改めた。新しい労働関係は以前より複雑なものになった。

1978年に始まった経済改革前の計画経済体制のもとでは、企業の労働関係は単なる国と労働者の関係であった。企業には労働者使用の自主権がなく、労働者には職業選択の自主権がなかった。国は労働関係主体として、労働者を支配する役割をしてきた。企業は国が下した指令、計画を執行し、労働者は国の統一配置に服従しなければならなかった。

改革開放ののち、中国では一連の労働制度の改革が下から上へ、上から下へと行われた。中国の労働関係は安定した良好な発展をとげた。政府による積極的な促進策のもとで、政策基準、労働契約管理、労働監察、労働争議処理を含む労働関係の調整体系が一応形成された。

労働制度の改革を通じて、企業の労働者使用自主権と労働者の職業選択自主権は次第に解決の方向に向かった。企業と労働者は新しい労働関係の主体となり、対等の立場にあるとされている。企業と労働者は労働契約の締結で相互の労働関係を確定し、双方の責任、権利、利益を明確にし、かつこれを労働争議処理の依拠とし、双方の合法的権益に法律の保護を受けさせる。労働契約制度の実行により、企業と労働者は協議のうえにたって互いに選択しあうことができる。企業は必要性と市場の需給変化に応じて労働力構成の調節を行い、労働力の配置を合理的に行うことができる。他方で、労働者は自身の条件と意思に照らして、適当な職業を選択することができる。締結される労働契約は、法律上の拘束力をもつ。したがって、労働契約は企業と労働者に法律による保護を平等に受けさせる。双方は労働契約に基づいて自己の職責を履行すると同時に、労働契約の諸条項の規定による権利を享受する。現在、労働契約制度は、中国の諸企業があらゆる労働関係を確立する主要形式となっている。

労働契約制度を実行すると同時に、団体契約制度の実験が行われはじめている。一部の地方、一部の非国有企業と株式制企業は、団体協議で団体契約を締結し、団体契約で労働報酬、労働時間、休息休暇、労働安全衛生、保険福祉などを規定する試みをしている。

労働監察活動の展開は労働法規の実施を保証している。労働監察機構の設置、要員の配置、制度の創設および活動の展開はいずれもしっかりした基礎ができている。労働争議処理制度は改善され、労働関係の合法的権益に法律による保護を受けさせている。各地には、労働争議仲裁委員会が設置され、政府の労働行政部門、労働組合と企業の主管部門の3者からなる労働争議処理専門組織体系が形成されている。同時に、各地の労働行政部門はまた労働争議処理専門機構を設置し、専従と兼職の要員を配置し、労働争議仲裁委員会の事務機構の職能をひきうけるほか、労働争議に対する調節活動をくりひろげる。国有企業では、企業労働争議調節委員会が設置され、企業と労働者の協議による労働争議処理体制が形成されている。

現在、労働関係と監察制度はたえず改善されているが、その最終目標は、調和のとれた労働関係を促進し、社会安定を実現するため、労働関係調整の法律、政策体系、完ぺきな労働監察体系と労働争議の処理体系をつくり、社会主義市場経済の要求にかなった主体(企業と労働者)自らの協議と政府の調整による労働関係調整制度を全面的に推し進めることにある。

1997年末現在、全国の都市部企業では、労働契約制の実行に加わった労働者は1億787.8万人に達し、労働者総数の98.1%を占めている。農村部の集団企業では労働契約制の実行に加わった従業員は1944.5万人に達し、私営企業と個人経営商工業でば労働契約制の実行に加わった従業員は790.6万人に達している。

団体協議と団体契約制度は進められつつある。1997年1年間で労働部に送付された団体契約は6.7万件に達し、それにかかわる労働者は2,430万人に達している。審査認可ずみの団体契約は6.6万件(そのうち、国有企業は3.8万件)となっている。1997年末現在、労働部に報告され、その記録にとどめられた団体契約は13.1万件で、それにかかわる労働者は4498万人となっている。

2. 労働組合

労働組合主要組織

中国の労働組合の全国組織は中華全国総工会である。

1992年4月3日に発布された『中華人民共和国労働組合法』は、労働組合は労働者が自由意思で結合する労働者階級の大衆組織であると規定している。

労働組合の各段階の組織は、民主集中制の原則に基づいてつくられる。各段階の労働組合委員会は労働組合員大会または労働組合員代表大会における民主選挙によって生まれる。各段階の労働組合委員会は同じ段階の組合員大会または組合員代表大会に責任を負い、かつ活動を報告し、その監督を受ける。労働組合員大会または労働組合員代表大会はかれらが選出した代表または労働組合委員会のメンバーをリコールし、または罷免する権限を有する。上級労働組合組織は下級労働組合組織を指導する。

企業、事業単位、機関は、組合員が25人以上に達した場合、労働組合末端委員会をつくることができる。組合員が25人未満の場合は、オルガナイザーを1人選出して、組合員の活動を組織させる。県段階以上の地方は、地方総工会をつくる。同一業種または性質の近いいくつかの業種は必要に応じて全国または地方産業労働組合をつくることができる。

労働組合の末端組織、地方各段階の総工会、全国または地方産業労働組合組織の創設は、一段階上の労働組合に報告し、その批准を得なければならない。労働組合末端組織所在の企業、事業単位、機関がなくなった場合、当該組合組織もなくなる。

現在、改革にともなって労働組合は民主管理の組織、参加、労働法執行の監督、労働争議処理への関与などで主要な役割を果している。

労働組合末端組織

1996年末現在、全国で58万6672の労働組合末端組織がつくられている。そのうち、公有経済の労働組合末端組織は45万1098組織、集団経済11万3395組織、私営経済2025組織、個人経済238組織、共同経営経済975組織、株式制経済5758組織、外国投資経済7619組織、香港・澳門・台湾経済2925組織、その他1932組織となっている。

1996年末現在、労働組合の組合員人数は1億218万9268人となり、組織率は66.9%に達している。そのうち、公有経済の組合員は8,332万3579人、集団経済1423万6932人、私営経済11万3352人、個人経済2万2388人、共同経営経済16万4007人、株式制経済23万2178人、外国投資経済146万394人、香港・澳門・台湾経済33万4645人、その他の経済13万6478人となっている。

3. 労働争議件数と参加人数

1996年末、全国労働争議調停委員会が受理した労働争議は8万6000件で、それにかかわる労働者は43万6000人であった。そのうち、団体労働争議は1万7000件、それにかかわる労働者は27万7000人であった。労働争議の調停は7万5000件で、そのうち調停に成功した案件は6万3000件。調停成功率は80%であった。調停成功案件にかかわる労働者は32万8000人。調停不調で仲裁申請をした案件は3518件であった。労働争議調停委員会が受理した労働争議のうち、労働報酬、労働契約の変更、解除、終了、再締結、労働者の解雇などによる労働争議が55.7%を占めていた。

1997年、全国各段階の労働争議仲裁委員会が受理した労働争議案件は合計7万2000件で、それにかかわる労働者は22万1000人であった。それぞれ1996年より48.6%と16.9%上昇した。案件解決率は98.9%で、前年より1.9ポイント上昇した。

4. 労働関係の法制度

改革開放が始まってから、政府は労働者使用単位と労働者双方の労働関係の規範化を図るため、一連の法律、法規を制定、発布し、労働関係を発展させた。労働関係の調整にはつぎの諸法規がある。

  • 『中華人民共和国労働組合法』1992年4月3日国家主席令第57号で発布。
  • 『中華人民共和国企業争議処理条例』1993年7月6日国務院発布。
  • 『労働争議仲裁委員会案計処理規則』1993年10月18日労働部発布。
  • 『労働争議仲裁委員会組織規則』1993年11月5日労働部発布。
  • 『中華人民共和国労働法』1994年7月5日第8期全国人民代表大会常務委員会第8回会議採択、国家主席令第28号で発布。
  • 『外国投資企業労働管理規定』1994年8月1日労働部発布。
  • 『企業経済性全員削減規定』1994年11月14日労働部発布。
  • 『労働監察員管理規定』1994年11月14日労働部発布。
  • 『労働契約違反・解除の経済補償規定』1994年12月3日労働部発布。
  • 『団体契約規定』1994年12月5日労働部発布。
  • 『団体協議による団体契約締結の実験活動に関する労働部の意見』1994年12月5日労働部発布。
  • 『労働契約鑑定活動の関係問題に関する労働部の通知』1994年12月15日労働部発布。
  • 『中華人民共和国労働法』違反行政処罰規定』1994年12月16日労働部発布。
  • 『労働仲裁員招聘任命管理規定』1995年3月22日労働部発布。
  • 『平等協議と団体契約締結への労働組合参加の試行規定』1995年8月17日全国総工会発布。
  • 『団体協議と団体契約制度の逐次実行に関する労働部、全国総工会、国家経済貿易委員会、中国企業家協会の通知』1996年5月17日労働部発布。
  • 『郷鎮企業の労働契約制度の実施に関する農業部、労働部の通知』1996年6月7日農業部発布。

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1. 労働政策の概況

中国では、国有企業の改革を主流とする経済体制の改革は堅塁攻撃の段階に入っている。中央は、3年前後で改革・改造・管理強化を通じて、大多数の国有大中型欠損企業に苦境を抜け出させ、本世紀末に大多数の国有大中型企業に現代企業制度を初歩的に創設させると提起している。こうした改革、発展目標の順調な実現を確保するため、企業の人員過剰問題の解決に力をそそがなければならない。現在、職場離脱労働者はすでに655.7万人に達し、2000年までにさらに年平均300~400万人増えると予測されている。国有企業の人員削減、効率向上、職場離脱労働者の基本生活保障およびその再就業を実現することは政府の責任である。

国有企業の職場離脱労働者の再就業と生活保障問題は中国労働活動分野および中国経済体制転換と国有企業制度転換過程における中心活動となっている。それは政府の最優先事項であり、政府機構改革後に成立した労働・社会保障部の何より重要な任務でもある。

中共中央、国務院は1998年5月14日に「国有企業職場離脱労働者の基本生活保障と再就業活動会議」を開いた。中共中央、国務院はまた、6月9日に『国有企業職場離脱労働者の基本生活保障と再就業活動を立派に行うことに関する通知』を発布し、国有企業職場離脱労働者の基本生活と再就業活動を立派に行うことについての規定を打ち出した。1998年7月24日、労働・社会保障部は全国善孝保険と再就業サービス・センター創設活動会議を開き、国有企業職場離脱労働者の基本生活保障と再就業活動の実施のための基本任務と要求をさらに明らかにした。

上に述べた会議の精神に基づいて、労働・社会保障部はつぎの諸労働政策を制定した。

(1)再就業サービス・センターの設置

全国各地で再就業サービス・センターの組織体系を上から下へと設置し、再就業サービス・センターを通じて国有企業の職場離脱労働者の基本生活を保障する。再就業サービス・センターの設置は、当面、職場離脱労働者の基本生活保障にとって最も重要な措置である。

再就業サービス・センターは、国有企業の職場離脱労働者の基本生活を保障し、その再就業を促進する組織である。それは、生活保障制度がまだ不完全である状況のもとでは、職場離脱労働者のための現実的で実行可能な保障方式であり、企業労働者が企業と新型の労働関係を締結する過渡的形式である。職場離脱労働者のいる国有企業がいずれも再就業サービス・センターまたは類似機構を設置するよう要求されている。職場離脱労働者が少ない企業の場合は、企業の科または室がその管理の代理をする。

再就業サービス・センターは、本企業の職場離脱労働者に基本生活費を支給し、職場離脱労働者に代わって、善孝・医療・失業等社会保険に保険料を納付する責任を負い、職場離脱労働者を組織して職業指導や職業訓練に参加させ、何よりもまず再就業するよう指導し、援助する。

再就業サービス・センターの対象は、主として労働契約制度実施前に入社したか、国有企業の正式労働者および労働契約制実施後に入社し、かつ労働契約期間未満の労働者が企業の生産経営等の原因で職場を失ったが、いまだ企業と労働関係を解除せず、まだ職を見つけていない者である。

再就業サービス・センターにおける職場離脱労働者の在留期間は3年を超えないこととする。3年間の在留が満了して依然再就業できない場合は、企業との労働関係を解除し、規定によって失業救済か社会救済を受領すべきである。再就業サービス・センター在留期間の基本生活費は、原則的には失業救済よりやや高い基準で支給するが、適当な比率で逐年逓減させることになっている。ただし、最低は失業救済水準を下回ってはならない。具体的な基準は各地の実情によって決められる。

(2)社会保障制度の改革

国有企業労働者の順調な職場離脱を確保し、就業者の社会保障福祉に関する統一制度をできるだけ速く創設することが要求される。個人経営・私営等非国有企業を含むあらゆる企業および外国投資企業の中国側従業員のなかで善孝・医療・失業等社会保障制度および住宅制度の改革を推進し、深化させ、社会保障体系を完璧なものにし、労働力資源の合理的配置と正常な流動に条件をつくる。

(3)善孝保険

国有企業の改革を推進するため、職場離脱労働者の基本生活保障を行うと同時に、企業労働者の善孝保険制度の改革を引き続き深化させ、立法のテンポを速めなければならない。離・退職者の基本生活を確保し、時間通りに善孝保険金を100%支給するよう保証しなければならない。善孝保険の適用範囲を拡大し、善孝保険基金の取集活動を強化し、納付率を高めなければならない。中央政府は、1998年に全国範囲で基本善孝保険の省段階調達を実現し、善孝保険の調節メカニズムをつくるように提起している。

(4)失業保険

失業保険のメカニズムを完璧なものにするため、1998年から失業保険基金の拠出比率が企業賃金総額の1%から3%に引き上げられ、企業による一方的負担が企業・労働者による共同負担に改められた。そのうち、個人拠出は1%、企業拠出は2%となっている。

(5)医療保険

これまでの医療保険には以下の弊害がある。

  1. 医療費は国と企業が請負い、合理的な資金調達メカニズムと安定した資金源泉がない。
  2. ほとんど無料の医療なので、病院・患者双方に対する制約メカニズムが欠け、医療費用の増加がとても速く、ムダがすこぶる大きい。
  3. 適用範囲が狭く、管理とサービスの社会化程度が低い。

これらの弊害を克服するため、「低水準、広い適用範囲、多段階、調達・個人口座相結合」の原則に基づく医療保険改革案が制定された。

(6)職場離脱労働者の就業促進

職場離脱労働者の就業問題を解決するため、政府はつぎの諸措置を制定している。

  1. マクロ・コントロールを強化し、職場離脱労働・分流の速度を制御する。
  2. 職場離脱労働者に信用貸し、税、訓練など諸優遇策とサービスを提供する。
  3. 職場離脱労働者の創業活動を奨励し、支持する。
  4. 経済を大いに発展させ、就業ルートを拓く。
  5. 労働市場メカニズムをつくり、就業サービス体系を完璧なものにする。
  6. 職業紹介のサービス・ネットワークを強化し、職業紹介活動の規範化を図る。
  7. 都市部労働市場の需給情報(コンピューターネットワーク)の実現を速め、区域内・区域間・全国の統一した労働市場の情報ネットワークの建設を推進する。

2. 労働関連行政機関

国務院の労働社会保障部(省)が労働行政を担当している。同部には12の庁、司(局、部)が設置されている。

住所:中国北京市和平里中街12号

電話番号:84203431

労働関連行政機関組織図

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労働法律体系を順次完璧なものにし、労働活動を法制化の軌道にのせることは、中国労働活動の既定目標である。改革開放後、労働立法活動の進展は速く、顕著な成果がおさめられている。全国人民代表大会が審議、発布した労働法および国務院が審議、発布した労働法規は40にのぼり、労働部が発布した労働規定は200余にのぼっている。これらの労働法規と規定は、労働行政の基準を確定し、企業と労働者の合法的権益を保護し、労働行政機関の法律による行政を促進するうえで主要な役わりを果たしている。

改革開放後、労働立法分野における重要な成果は『中華人民共和国労働法』の発布、実施である。『労働法』は、労働者の権利と義務および労働者使用単位の責任を確定し、労働者使用単位と労働者の行為規範でもあれば、労働権利保護の法律保障と労働義務履行の基準でもある。『労働法』は13章107条からなり、労働者の権利と義務、労働関係の締結と調整、労働基準の確定と執行、労働行政部門の職責と規範などについて規定している。

  • 『労働法』発布、実施後、関連する諸法規が制定されている。つぎの諸法規がすでに発布、実施されている。
  • 『企業最低賃金規定』1993年11月労働部発布。
  • 『労働者労働時間の規定に関する国務院の実施規定』1994年2月8日労働部・人事部発布。
  • 『職業指導規定』1994年10月27日労働部発布。
  • 『賃金支給暫定規定』1994年12月労働部発布。
  • 『団体契約規定』1994年12月5日労働部発布。
  • 『就業訓練規定』1994年12月9日労働部発布。
  • 『未成年労働者特殊保護規定』1994年12月9日労働部発布。
  • 『企業労働者生育保険試行規定』1994年12月14日労働部発布。
  • 『企業労働者労働災害保険試行規定』1996年8月12日労働部発布。
  • 『企業労働者教育訓練規定』1996年10月30日労働部発布。
  • 『外国投資企業賃金収入管理暫定規定』1997年2月14日労働部発布。
  • 『生育保険適用範囲計画』1997年10月8日労働部発布。
  • 『職業紹介サービス規程(試行)』1998年1月6日労働部発布。

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1. 労働災害の概況

1997年、全国で企業労働者の業務上労災事故が1万8268件発生し、死亡者1万7558人に達したが、労災発生率は1996年同期よりそれぞれ12.5%と9.8%下回った。労災事故が最も多いのは鉱山企業であり、1997年に企業労働者業務上労災事故が合計7266件発生し、死亡者1万1265人に達したが、労災発生率は1996年と比較してそれぞれ14.9%と7.7%下回った。非鉱山企業では1997年に労働者業務上労災事故が合計1万1002件発生し、死亡者6293人、事故発生率は1996年と比較してそれぞれ10.85%と1.8%下回った。

一方、重大死亡事故は1997年に合計696件発生し、死亡者4929人に達したが、事故発生率はそれぞれ1996年より15.6%と1.8%下回った。そのうち、鉱山企業では重大な死亡事故が合計527件発生し、死亡者4,009人に達したが、事故発生率は1996年と比べそれぞれ16.8%と0.8%下回っている。非鉱山企業では重大な死亡事故が1997年に合計169件発生し、死亡者920人、事故発生率は1996年と比較しそれぞれ12%と5.8%下回った。

2. 労働災害補償制度の概要

1996年8月12日、労働部は『企業労働者労働災害保険試行規定』を発布した。この『規定』は初めて労災保険を単独の制度として制定、実施し、かつ初めて3項目の労災保険、すなわち労災予防、労災リハビリ、労災補償を結びつけ、1990年代初期まで使ってきた労災保険制度(企業の自己労災保険制度)を全面的に改革した。

同『規定』は労災認定基準と手続き、労災保険待遇、労災保険基金の調達、労災予防と労災リハビリテーション、管理と監督監察、企業と労働者の責任、争議処理などを規定している。

中国の労災保険制度は制定したばかりの新しい制度で、労災の予防、リハビリテーション、その他に改善の余地がある。

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1. 生育保険

生育保険は1994年『企業労働者生育保険試行規定』に基づいてつくられたものである。生育保険は都市企業およびその労働者に適用される。生育保険は「収入で支給を決め、収支にバランスを基本的に保たせる」原則に基づいて資金の調達を行い、労働者賃金総額に対する一定の比率で社会保険の経営機構に生育保険料を企業に納付させて生育保険基金を設ける。納付比率は最高賃金総額の1%を超えてはならない。労働者個人は生育保険料を納付しない。女子労働者が出産した場合は、法律、法規によって出産休暇を享受する。出産休暇期間の生育手当は、当該労働者が働く企業の前年度の労働者平均賃金で計算し、生育保険基金から支給される。女子労働者が出産する場合、検査費、助産費、手術費、入院費および薬代は生育保険基金から支給される。

2. 人的資源開発、教育訓練

改革開放ののち、労働者の職業技術開発制度が設立された。現在、職業分類、職業技能基準、職業技能訓練、職業技能鑑定と技能競争を主要内容とする職業技能開発訓練体系がある。

労働者職業技能開発訓練の基本原則はつぎのとおりである。すなわち「教育訓練を受けてから職につき、教育訓練を受けてから職場につく」原則に基づいて、就職者または職場転換の際、必要な訓練を受けなければならないことを労働者に要求する。国は「教育訓練、考課、使用と賃金分配を結合する」原則により、諸訓練機構が教育・訓練した合格者に卒業証と職業資格証の2証書を発行し、企業と事業単位は労働者の労働・生産活動の実績と実際の技能水準によってその賃金待遇を確定し、同時に国が発布した『労働者考課条例』に基づいて、労働者に対して初・中・高3級の技術等級と技師・高級技師の任命を実行する。

中国の職業技能訓練機構は主として技工学校、就業訓練センター、職業中学校である。職業技能訓練と職業技能の向上を推進するため、労働部は『国家各種分類目録』を制定し、若干の職種に関する国家または業種の職業技能基準を発布し、かつ『職業技能鑑定規定』を発布、職業技能鑑定機構に対してライセンス制度を設け、職業技能鑑定の管理を実施している。20世紀末までの職業技能開発訓練について、政府はつぎの基本目標を提起している。

  1. 全社会の労働者職業開発情報・ネットワークの形成。
  2. 国の職業分析、職業資格分類、職業技能基準体系の形成。
  3. 政府指導による職業技能鑑定の管理を行い、国の職業資格証書制度を設ける。
  4. 教育訓練を施し、多段階、多形式、都市と郷鎮企業をカバーし、かつ農村まで延長し得る職業技能訓練ネットワークを形成する。

基礎情報:中国(1999年)

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