「3年連続して賃上げが実現できたことは大きな成果」/連合の中央委員会
(2016年6月3日調査・解析部)
連合(神津里季生会長、約675万人)は2日、都内で中央委員会を開き、2016春季生活闘争中間まとめを確認した。中間まとめは闘争全般に対する現時点までの受け止めについて、「『月例賃金の引き上げ』にこだわる取り組みを進めた結果、3年連続して賃上げが実現できたことは大きな成果」などと評価した。
「特に中小の組合での健闘が目立っている」(神津会長)
あいさつした神津会長は2016春季生活闘争について、「交渉の現場では、年明け以降の金融市場の混乱や新興国、特に中国経済の失速など先行きの不透明感を訴える経営側との間で、厳しい交渉となった。それでも、5月上旬の集計段階で約7割の組合が妥結し、そのうち半数近くが賃上げを獲得した。これは昨年を上回っており、3年連続して『月例賃金の改善』を達成できたといっても良いのではないかと考えている」と評価するとともに、「特に過年度物価上昇がほとんどないなかで賃上げを獲得したという点では、画期的な春季生活闘争を展開しているといえる」と強調した。
また、「特に中小の組合での健闘が目立っている」とし、「例年、集計の回を追うごとに全体の賃上げ率とのかい離が大きくなる傾向にあるが、今次闘争ではその開きが小さく、企業規模間格差の是正につながる結果となっている。非正規労働者の賃上げについても時給で昨年を超え、正規を上回る結果を引き出した」と、今次闘争における格差是正の取り組みの成果を強調した。
非正規労働者の賃金改善は「正規以上に進展した」
中間まとめのベースとなっている最終の回答集計(5月9日集計)では、平均賃金方式での定昇相当込み賃上げ額は5,915円で、率は2.02%(昨年は2.28%)だった。300人未満では額が4,514円で、率が1.86%(同1.99%)。要求を提出した6,234組合のうち、妥結済みなのは4,281組合で、賃金改善分を獲得した組合数は45.6%にあたる1,950組合となっている。非正規労働者の時給の引き上げ額は、加重平均で18.21円となっており、昨年同時期を1.14円上回った(5月13日付メールマガジンに詳細記事。パート時給は18.21円の引上げ、昨年を1円以上上回る/連合の回答集計(2016年5月13日調査・解析部))。
中間まとめは、闘争全般に対するここまでの受け止めについて、「『月例賃金の引き上げ』にこだわる取り組みを進めた結果、3年連続して賃上げが実現できたことは大きな成果であり、この流れを未解決組合に繋げていくことが重要である」と強調。また、「『企業規模間格差の是正』は中小組合の頑張りにより進展が図られた」とし、「中小企業における賃上げ原資確保のためには、サプライチェーン内で生み出された付加価値を適正に分配することが必要であり、そのためには企業間取引の適正化が必須であるという点について、中小企業労使においては認識が一致していることが確認された」とした。非正規労働者の賃金改善については、「正規以上に進展した」と振り返った。
各要求項目への回答状況に対する受け止めをみていくと、賃上げでは、平均賃金方式での賃上げ額、率ともに昨年同時期を下回ったものの、「3年連続で賃上げを実現できたことは今後の運動に大きな意味を持つといえる」と言及し、また、300人未満での昨年マイナス比の方が全体計よりも小さかったことから「企業規模間格差の是正に繋げ得たと言える」と総括した。
非正規労働者の労働条件改善については、賃上げ回答の結果とともに、「改善の対象となる非正規組合員が昨年同時期比で約10万人増加」していることを指摘しながら、「『底上げ・底支え』『格差是正』の取り組みの広がりが実現できている」と評価した。
ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取り組みでは、要求において『長時間労働の是正・過労死ゼロの取り組み』等のワーク・ライフ・バランス関連の事項が3,282件提出され、昨年同時期の2,634件を大幅に上回ったと指摘。回答が引き出された数も1,560件と昨年同時期の1,456件を上回ったなどと評価した。
今後の主な検討課題については、「『底上げ・底支え』『格差是正』や『大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動』の継続的な取り組みが必要」として、めざすべき賃金水準の絶対値の設定と到達にこだわった取り組み、情報開示や、サプライチェーン内で付加価値を適正に分配すること、月例賃金にこだわった取り組みを継続すること、中小企業の賃金制度確立・整備に向けた具体的な支援を行うことなどについて検討を進めていくことが必要だとしている。
中央委員会ではこのほか、2017年度重点政策を決定した。最重点政策には、東日本大震災からの復興・再生の着実な推進、「公平・連帯・納得」の税制改革の実現、労働者の健康・安全の確保のための労働時間制度の見直しと労働者保護ルールの堅持・強化など、7項目を据えた。具体策としては、特別条項付き36協定締結時の上限時間規制の法定化や解雇規制の緩和反対などを盛り込んでいる。
化学総連がJEC連合との連携解消で連合から離脱
活動報告では、2015年10月1日~2016年3月31日までの組織拡大実績の報告があり、122組合、3万4,170人の組織拡大実績があったことが本部から紹介された。
なお、神津会長は挨拶のなかで、JEC連合を通じて連合に加盟していた化学総連(住友化学、三井化学などの大手化学各社の労組で組織)が、JEC連合との連携協定を継続せずに5月末をもって連合加盟でなくなったことについて触れた。神津会長は「連合はこの間、JEC連合など関係組織とも連携し、真摯かつ丁寧に会話を重ねてきた。化学総連の単組・支部の中には『引き続き地域の仲間と連合運動を続けたい』という強い声もあったようだが、残念ながらそれが中央において受け止められることはなかった。化学総連からは、JEC連合との連携解消・連合運動からの離脱は産業政策の強化が目的であるとの説明があった。しかし、そのことと連合からの離脱の関係性について、最後まで理解できる説明を受けることができなかったのは極めて遺憾と言わざるを得ない」と、これまでの経緯を報告するとともに化学総連の姿勢を批判。ただ、「今回の結論にとらわれずに真摯に考える機会を持っていただくことをあらためて強く期待したい。私たちの対話の扉は開いている。化学総連および加盟単組が真摯な議論を経て、再び、ともに連合の旗の下で運動できる日が訪れることを切に願っている」とも付け加え、化学総連の意向によっては再加盟も受け入れる考えを明らかにした。
「民進党を全面的に支援」/参院選に向け政策協定を締結
中央委員会終了後、連合は7月10日の参議院議員選挙に向けて、比例代表で推薦を決めている組織内候補者12人および選挙区で推薦する41人の候補者の当選を期して「参院選挙・連合総決起集会」を開催した。集会には民進党の岡田克也代表が出席し、「雇用の安定と公正労働条件の確保」「子どもの貧困解消」などの重点政策を盛り込んだ選挙協力の前提となる政策協定に署名。協定には「連合は民進党を全面的に支援する」と明記されている。
協定の締結を受け、神津会長は「岡田代表を先頭に自民党安倍政治に不安や不満を抱いている人の受け皿になってほしい。民進党を精一杯、最大限、全面的に支援をしていく証としてお互いの決意を固めていきたい」、また、岡田代表は「この重点政策をしっかり軸に据えて参院選挙を戦っていきたい」などと強調した。