平均賃上げ要求基準を1万500円に設定/JAM中央委員会

(2016年1月20日 調査・解析部)

[労使]

金属、機械関連の中小労組を多く抱えるJAM(宮本礼一会長、約36万人)は15日、都内で中央委員会を開き、平均賃上げでの要求基準を1万500円(賃金構造維持分含む)とする2016年春季生活闘争方針を決定した。賃金構造維持分を把握している組合は、6,000円を基準に水準引き上げ要求を組み立てる。

企業間の付加価値の適正配分などに取り組む

方針は、11月下旬に執行部が提示した闘争方針大綱(方針のたたき台、本メールマガジンNo.1163(注)で紹介)での記述から変わらず、今次闘争の「基本スタンス」について、「デフレ脱却と経済の好循環実現に向けて、引き続き賃金の底上げ・底支えの取り組みが必要である」と主張。さらに、「2014年を起点として、一つでも多くの単組が賃金の底上げを実現していくことを目指す」とした。

大綱にはなかった「『大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動』(連合方針)の追求、『企業間の付加価値の適正配分、適正取引の確立とバリューチェーンにおける「付加価値の適正循環」構築』(金属労協方針)に向けて、連合・金属労協と連携して取り組む」との文言を追加。そして、「すべての単組は、賃金の引き上げに向けた要求提出に取り組む。要求の組み立てに当たっては、個別賃金方式の考え方を重視する」などと明記した。

賃金構造維持分がわかる単組は賃金水準引上げ額として6,000円を基準に

「賃上げ要求の基本的な考え方」では、賃上げ要求水準を2%程度と設定した連合の闘争方針を踏まえ、「賃金構造維持分に加える、生活改善、格差是正、賃金改善等のための、月例賃金における賃金水準の引上げ額について、6,000円を基準とする」とした。今回は、6,000円の設定根拠において、過年度物価上昇率を勘案していないことから、「なお、ここでは過年度消費者物価上昇率に拠らず、賃金改善に取り組む」とも記述し、賃金底上げや格差是正を目的とした水準引き上げであることを強調している。

具体的な要求基準をみると、平均賃上げでの要求基準は、「平均賃上げ要求基準を10,500円とする」とした。ただし、これは賃金構造維持分が分からない単組に当てはまる要求水準であり、賃金構造維持分がわかる単組は、「賃上げ要求の基本的な考え方」の趣旨に沿って、賃金水準の引き上げ分を、6,000円を基準に考えるとしている。

一方、個別賃金での要求基準をみていくと、単組が個別賃金要求する際に用いる水準の指標であるJAM一人前基準の具体的な金額は、18歳=15万9,000円、20歳=17万2,500円、25歳=20万6,250円、30歳=24万円、35歳=27万円、40歳=29万5,000円、45歳=31万5,000円、50歳=33万5,000円と設定。これらは、JAMが全単組を対象に実施した調査データに基づき作成されている。初任給水準が上昇傾向にあることを踏まえ、18歳の金額については昨年から3,000円積み増した。

標準労働者の要求水準は、昨年と同様、高卒直入者の所定内賃金で30歳を26万円、35歳を30万5,000に設定した。

なお、個別賃金の水準がこれらの要求基準をすでに上回っている単組は、金属労協が設定する「基幹労働者のあるべき水準」を活用して、さらに上の水準を目指して取り組む。

「大手追従・大手準拠の構造から脱却を」/宮本会長

中央委員会であいさつした宮本会長は、中小企業を取り巻く直近の状況について、「円安による輸入原材料価格の高騰や、電気料金の高止まりなどで、生産コストが上昇し、さらには上昇した分のコストを吸収する価格転嫁をできていないという悪循環に陥っている中小企業も未だ数多い」と指摘。また、「労働力人口の減少が続いているところに、大手企業の業績回復が重なり、中小企業では人材確保が困難な状況になっている」などとして人材確保の問題や設備面での課題などに言及した。

今春闘に向けては、「人口減少問題などの構造的問題が顕在化し、将来の雇用や生活に対する希望を持ち続けるためには、働く者・生活者が主役の経済成長が不可欠であり、そのためにもバリューチェーン全体で生み出した付加価値の適正な分配に資する取引ルールを実現していくことが求められている」と主張するとともに、「2016春季生活闘争ではこれまで春季生活闘争が果たしてきた賃金決定メカニズムを活かしつつ、大手追従・大手準拠の構造から脱却することで、中小サプライヤー企業で働く組合員のみならず、未組織労働者や非正規労働者に光を当てた春季生活闘争へと転換しなければならない」と強調した。

企業内最低賃金協定額800円未満は協定額引き上げを要求

企業内最低賃金協定については、18歳以上の企業内最賃協定をまだ締結できていない単組では協定締結を目指す。また、地域最低賃金の水準が引き下げ傾向にあることを踏まえ、800円未満の協定額となっている単組、または地賃等法定最賃との差が50円に満たない協定額となっている単組では、ただちに協定額の引き上げを要求する。

一時金要求は、「年間5カ月基準または半期2.5カ月基準の要求とする」とし、最低到達基準は「年間4カ月または半期2カ月」とした。

日程に関しては、「全単組がこの日までに要求を提出する」統一要求日を2月23日に設定した。方針は、「2014年以来努力を重ねてきた、統一要求日における要求提出の集中に、引き続き取り組みの強化をはかる」としている。過去2年の統一要求日における要求提出率をみると、14年が43%、15年が45%となっており、JAMでは「今年は6割以上をめざす」(河野哲也書記長)としている。全単組が回答の引き出しに全力をあげる統一回答指定日は、3月15、16の両日とした。

方針討議では、方針案に対して特に意見や質問は出ず、満場一致で方針案を承認した。