ヤマ場を越え正社員223組合、パート90組合、契約社員47組合が妥結/UAゼンセン2015賃金闘争

(2015年3月27日 調査・解析部)

[労使]

UAゼンセンの2015賃金闘争は、第二のヤマ場(3月25~26日)となる交渉を終え、これまでに、正社員については223組合、短時間組合員についてはパートタイマーが90組合、契約社員が47組合の妥結に漕ぎ着けた。集計結果によると、正社員では、総額単純平均で、対前年同組合比プラス684円(0.22%)となる6,937円(2.46%)。このうち、体系維持分と区分できる141組合平均で、ベア等の賃金引上げ分を算出すると、同プラス588円(0.19%)の1,816円(0.62%)となっている。短時間組合員については、パートタイマーの時間給の引上げ額は19.9円(2.10%)で、同組合の前年比で4.9円(0.51%)高い。また、契約社員の月給引上げ額は、総額単純平均で4,405円(2.17%)となり、同433円(0.20%)上回っている。

イオン、ヨーカドー、三越伊勢丹はベア1,000円前後で決着

UAゼンセンは、スーパーマーケット・百貨店などの小売・流通業界や、繊維や医薬品などの製造業、外食産業など幅広い業種をカバーする、わが国最大の産別組織。多様な産業を網羅するため、組織を製造産業、流通、総合サービスの3部門に分けて運営しているが、その中では流通部門の組合員数が約6割を占め、また、約半数が契約社員やパートタイマーなどの短時間組合員となっている。

第二のヤマ場では、短時間組合員を多く組織する流通部門の所属大手組合が、相次いで回答を引き出した。

イオン労連の「イオンリテールワーカーズユニオン」は、正社員組合員について、賃金引上分(ベア)1,156円+賃金体系維持原資5,877円の、一人平均賃上げで7,033円(2.25%)を獲得。また、短時間組合員(パートタイマー)についても、制度昇給1円+昇格昇給3.6円+交渉分14円+過年度分4円と、計22.6円(2.55%)で妥結した。

セブン&アイ労連の「イトーヨーカドー労組」は、正社員組合員については、賃金引上分(ベア)928円+賃金体系維持原資4,272円と、一人平均賃上げ5,200円(1.46%)で妥結。また、短時間組合員については、契約社員(月給制)で賃金引上げ588円+昇格昇給516円+制度昇給1,585円の計2,689円(1.19%)、パートタイマー(時給制)では賃金引上げ7.2円+制度昇給10.4円の計17.6円(1.84%)を獲得した。

「三越伊勢丹グループ労組 三越伊勢丹支部」では、正社員組合員については、賃金引上分(ベア)1,000円+賃金体系維持原資5,495円の一人平均賃上げで、6,495円(1.79%)となった。短時間組合員については、契約社員(月給制)で交渉分1,000円+制度昇給3,683円の計4,683円(2.33%)、パートタイマーでは交渉分5円+制度昇給13.4円の計18.4円(1.73%)で妥結した。

なお、昨年の賃金闘争では、賃金引上げ分として、イオンリテールワーカーズユニオンが2,200円、イトーヨーカドー労組は2,031円等を、第一のヤマ場で既に引き出していたこと(※2)を踏まえると、苦戦した様子が浮き彫りとなっている。

こうした状況を踏まえて妥結集計を部門別にみると、「総合サービス部門」が賃金引上分2,323円(0.8%)を含む、一人平均賃上げで7,665円(2.80%)、「製造産業部門」が同1,483円(0.50%)を含む、6,812円(2.36%)なのに対し、「流通産業部門」は同1,893円(0.66%)を含む6,552円(2.32%)。また、同組合で前年妥結実績と比較すると、前年差は、「総合サービス部門」が+1,105円(0.36%)、「製造産業部門」が+800円(0.27%)に対し、「流通部門」は+317円(0.09%)となっている。

契約社員やパートの引上率が正社員を上回る妥結相次ぐ

一方、上記3組合にもみられるように、今次賃闘の特徴として、契約社員やパートタイマーといった短時間組合員の賃金引上率が、正社員組合員のそれを上回るところも多くなっている。

「イオンリテールワーカーズユニオン」は、正社員組合員が2.25%に対し、パートタイマーについては2.55%を獲得。また、「イトーヨーカドー労組」は、正社員が1.46%に対し、パートタイマーは1.84%。「三越伊勢丹グループ労組 三越伊勢丹支部」でも、正社員が1.79%に対し、契約社員は2.33%で妥結している。

同様に、「イオン労連 未来屋書店労組」は、パートタイマーで賃金引上げ31.4円+制度昇給16.5円の計47.9円(5.01%)を獲得し、正社員の妥結率(一人平均賃上げで5,952円(2.39%))を大きく上回った。

また、「三越伊勢丹グループ労組 名古屋三越支部」でも、契約社員(月給制)について、交渉分1,000円(正社員と同水準)+制度昇給5,352円の計6,352円(3.6%)、パートタイマーでは、交渉分5円+制度昇給13円の計18円(1.8%)を獲得。正社員の一人平均賃上げ率(賃金引上分(ベア)1,000円+賃金体系維持原資4,616円の計5,616円(1.65%))を、上回る結果となっている。

このほか、正社員組合員の妥結状況が明らかにされていないものの、パートタイマーについて、5%以上の賃上げ率を引き出したところもみられた。例えば、「SSUAザ・クロックハウスユニオン」は、賃金引上分40.6円+制度昇給7.4円で計48円(5.5%)を獲得。また、「三越伊勢丹グループ労組 札幌丸井三越支部」も、賃金引上分31円+昇格昇給5円+制度昇給5円の計41円(5%)で妥結した。

長谷工など平均賃上げで1万円超えの回答も

第一のヤマ場を終えた19日朝までに妥結したところでは、一人平均賃上げ1万円を超えるところが多くみられた(※1)が、その後、妥結承認を得たところでも1万円超えがみられている。

例えば、「長谷工グループ労組」。賃金引上分1,500円+賃金体系維持原資10,120円で、一人平均賃上げは11,620円(3.84%)となった。また、外食の「どんユニオン」は、賃金引上分(ベア2,768円+体系是正等1,036円)+賃金体系維持原資7,664円の一人平均賃上げで、11,468円(3.55%)を獲得した。さらに、「シティボウルユニオン」も、一人平均賃上げ10,681円(4.06%)で妥結している。

なお、1万円にはわずかに届かなかったものの、「象印マホービン労組」も、賃金引上分(ベア)2,667円+賃金体系維持原資7,286円で、一人平均賃上げ9,953円(3.05%)を獲得した。

三菱レイヨンでベア1,900円、繊維産業の回答も出揃う

このほか、交渉の第二のヤマ場では、繊維素材系労組も一斉に回答を引き出した。

「三菱レイヨンユニオン」は、賃金引上分1,900円+賃金体系維持原資5,816円で、一人平均賃上げ7,716円(2.57%)で妥結した。また、「日本エクスラン労組」は、賃金引上分1,400円+賃金体系維持原資5,059円の、一人平均賃上げで6,459円(2.5%)、「東邦テナックス労組」は、賃金引上分1,610円+賃金体系維持原資3,965円の、一人平均賃上げで5,575円(2.02%)となっている。

「東洋紡績労組」と「日東紡績労組」の賃金引上分はともに1,200円で、一人平均賃上げは「東洋紡績労組」が6,628円(2.166%)、「日東紡績労組」は5,451円(1.815%)。このほか、「ダイワボウ労組」や「日清紡績労組」「シキボウ労組」「セーレン労組」「富士紡績労組」の賃金引上分は、いずれも1,000円となっている。