賃金に不満が月給制73.9%、時給制58.7%
/NCCU処遇改善調査

(2014年12月19日 調査・解析部)

[労使]

訪問介護ヘルパーや施設介護員など、介護業界で働く労働者を職業横断的に組織する「日本介護クラフトユニオン」(NCCU、陶山浩三会長、組合員約6万7,100人、UAゼンセン傘下)は16日、「2014年処遇改善調査」結果を公表した。毎年、実施している定点観測調査で、今年で6回目。それによると、昨年の税込年収は、月給制(常勤職員)が平均304.7万円、時給制(非常勤職員)が平均156.9万円となり、月給制の73.9%、時給制の58.7%が「不満」と回答した。会見した染川朗・事務局長は「団塊の世代が75歳以上になる2025年までに、介護職員を現在より約100万人増やす必要があると言われている。介護従事者の役割に見合うような、『仕事への誇り』が持てる『魅力ある処遇』を確保する必要がある」と強調した。

月給制で2,885円増の22万4,542円

調査は、本年9月時点で組合員6,500人を対象に実施。月給制1,983人(回収率59.6%)、および時給制1,359人(同41.8%)から得た回答を集計した。主に従事している職種は多い順に、月給制が (1) 施設系介護員(入所型)19.6%、 (2) ケアマネジャー13.2%、 (3) 訪問系介護員10.0%、 (4) サービス提供責任者9.4%、 (5) 施設系介護員(通所型)7.5%など。時給制では、 (1) 訪問系介護員30.8%、 (2) 施設系介護員(通所型)21.0%、 (3) 施設系介護員(入所型)19.4%などとなっている。

調査では、2014年3月と8月の所定内賃金の変化について尋ねた。それによると、全体平均で、月給制の8月は平均22万4,542円と、3月時点より2,885円(1.3%)増加した。また、時給制は同13万3,585円で、本年3月時点を4,549円(3.5%)上回った。村上久美子・副事務局長は、「月給制は(NCCUが目指す)賃金センサスの全産業平均(29万5,700円)と比較して、まだ7万円ほどの開きがある。また、UAゼンセンの今春の賃上げ幅(5,471円)と比較してもだいぶ低い。時給制についても、職種別の平均時給は微増にとどまっており、平均月収の増加は人手不足による残業に依るものと考えられる」などと指摘した。

介護職員改善加算は「手当」や「一時金」が多い

一方、今回の調査では、介護職員の処遇を改善するため平成27年3月末までの例外的かつ経過的な取り扱いとして創設された、「介護職員処遇改善加算」の賃金への反映状況についても尋ねている。

まず、自身が働く事業所が「介護職員処遇改善加算」の申請をしているか尋ねると、月給制で「申請している」は64.1%、時給制では44.5%となった。この回答者を対象に、「介護職員改善加算」が賃金にどのように反映されているか尋ねると、「手当として入っている」(月給制35.3%、時給制42.1%)や、「一時金として入っている」(同26.1%、25.1%)が多く、「基本給に入っている」は月給制で6.2%、時給制で9.1%にとどまった。一方、賃金としては「支払われていない」がそれぞれ13.0%、5.3%、「分からない」は12.3%、10.4%などとなった。

こうしたなか、染川事務局長は、同加算の拡充等を図る一方で介護報酬を引き下げたいとされる報道が一部にあることに触れ、「例外的・経過的な取り扱いでは、多くの事業者は変動可能な賃金項目に加算分を反映せざるを得ず、結果として基本給の引き下げにつながる恐れがある。人材確保のため、着実に基本給の引き上げにつながるような措置を講じてもらいたい」などと強調した。

NCCUは11月10日、介護報酬(3年毎に見直し)の2015年度改定に向け、その引き上げを求める19万筆以上の署名を、塩崎厚生労働大臣に提出している(「介護報酬引き上げを求める署名19万924筆を塩崎厚生労働大臣へ手渡しました」/NCUU新しいウィンドウ)。