年間一時金と格差改善を中心とした取り組みへ/基幹労連のAP15方針たたき台

(2014年12月10日 調査・解析部)

[労使]

鉄鋼、造船重機、非鉄関連などの労組でつくる基幹労連(工藤智司委員長、約25万人)は4日、静岡県熱海市でAP15春季取り組み討論集会を開催し、2015春闘方針案のたたき台となる基本構想について、構成組織を交え討論した。2015春闘は基幹労連にとって、全体として賃上げに取り組まない、いわゆる「隔年春闘」の中間年にあたる。2015春闘ではほとんどの産別が賃上げに取り組むことが見込まれるなか、基本構想は、2014春闘で考慮してきた環境条件が「大きく異なる状況にない」とし、当初の方向のとおり年間一時金と格差改善を軸に取り組む考え方を示した。

長時間労働の是正も柱のひとつに

基幹労連では、全体としての賃上げ交渉は2年に一度行う、いわゆる「隔年春闘」を採用している。賃上げ交渉を行わない年には、「年間一時金」と、賃金格差の是正が必要な主に業種別組合(鉄鋼総合、総合重工、非鉄それぞれの大手を除く各業種別の中堅・中小労組)が「格差改善」などに取り組むことを基本的な考え方としている。

討論集会で本部が提示した基本構想は、AP15春季取り組みについて、「基本年度において考慮してきた環境条件が大きく異なる状況にないことから『年間一時金』『格差改善』を中心とした『個別年度』の取り組みとし、連合・金属労協(JCM)の取り組みも踏まえ、社会的な課題への対応も含めた取り組みをすすめていく」と記述し、年間一時金と賃金の格差改善、長時間労働の是正などを柱に取り組む考え方を提示した。

一時金は5カ月以上を基本に

基本構想が示した基本各項目の取り組み方針をみていくと、年間一時金は、要求基準を金属労協の「年間5カ月分以上を基本とする」ことを踏まえ、構成要素は、従来どおり、「生活を考慮した要素」と「成果を反映した要素」とし、「生活を考慮した要素」については年間4カ月(額では120~130万円)程度とするとしている。「成果を反映した要素」については、産別方針としてそれぞれの要求方式で示した水準以上をめざすことができる組合がその増額について取り組むとした。

各要求方式の要求基準は、金額で要求する場合、生活を考慮した要素について「120万円ないし130万円とする」とし、成果を反映した要素については従来通り「世間相場の動向などをふまえながら40万円を基本に設定する」とした。「金額+月数」で要求する場合は、「40万円+4カ月を基本とする」、月数で要求する場合は、「5カ月を基本とする」とした。

一方、月例賃金の格差改善については、「格差改善の観点を基本に、条件の整う組合はその実現に向けて取り組む」とし、改善額は、業種別部会ごとに定めた当面の目標をふまえ、部会や個別組合の実情に応じて設定するとした。

また、今回、産別基準の達成に向けて速やかに是正すべき項目を、 (1) 年次有給休暇の初年度付与日数を20日以上とする (2) 時間外・休日割増率の改善 (3) 労働災害付加補償、通勤途上災害付加補償の総合組合水準への到達――に設定した。

2015春闘に向けた情勢認識等について議論

構成組合との討論では、年間一時金と格差改善を主要な取り組み項目とすることなどについて討議した。格差改善に取り組む業種別組合からは、AP15に向かう情勢認識について「環境条件が大きく異なる状況にない」と判断した理由やその判断基準に対して質問があったほか、「AP15は個別年度の取り組みとして格差改善に取り組むことになっているが、親会社の賃上げ結果がAP14で決まっているなかでそれを超えられることができるのか」、「賃上げは全体で一緒にやらないとしっかりした答えが出ないのではないか。今回の結果次第では、2016年から単年度の取り組みにしてもいいのではないか」などといった意見が出された。

これらに対して本部の神田健一事務局長は、あらためて2年サイクルの春闘の狙いや意義を説明。環境条件が大きく異なる状況にないと判断した理由については、「急激な変化があれば個別年度でも賃金改善要求できることになっているが、今回は状況に大きな違いはないと判断した」などと説明した。

基幹労連は最終的なAP15方針を、2月18日に開く中央委員会で決定し、要求提出を2月20日に集中して行う方向だ。