2%以上の賃上げ要求方針を正式決定/連合の中央委員会

(2014年12月3日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は2日、都内で中央委員会を開催し、2015春季生活闘争方針を決定した。「賃上げ」「時短」「政策・制度実現の取り組み」を、今回の闘争で取り組む3本柱に据え、賃上げでは「すべての組合が月例賃金にこだわり、2%以上の賃上げを求める」としている。

「すべての組合が月例賃金の引き上げにこだわり、2%以上の賃上げ要求を」(古賀会長)

挨拶した古賀会長は春季生活闘争について、「賃上げについて、2014闘争ではすべての組合が月例賃金にこだわることで、これまで長きにわたり一定水準にはりついていた賃金レベルを引き上げることができた。2015闘争は、月例賃金の引き上げを今年度以上に広げていくこと、そして、賃金水準にこだわり底上げ・格差是正をより一層重視した取り組みとする必要がある」と指摘。「物価が上昇局面にあることに加え、経済の好循環を回し内需主導の安定成長を実現するには、月例賃金の安定的かつ継続的引き上げが不可欠だ。すべての組合が月例賃金の引き上げにこだわる取り組みを行うことを重視し、定期昇給相当分の確保を前提に2%以上の賃上げ要求を掲げることで意思統一をはかりたい」と述べた。

また、連合は今回の方針ではじめて、中小・地場の労組が賃金の底上げ・底支えに取り組む上でのターゲットとなる「最低到達水準」の設定を掲げた。このことについては、「最低必要生計費に基づくミニマム基準だ。働くということは私たちの生身の人間の営みであり、その対価は、当然、人間たるに値する生活を送れる水準を上回るものでなければならない。未組織労働者も含め、広く社会全体の底上げ・底支えを実現するためには、個別賃金水準にこだわり、構成組織が掲げる目標への到達闘争の意識を強く持つことが重要だ」と説明した。

最低必要生計費にもとづく「最低到達水準」をはじめて設定

方針は、2015春季生活闘争で、「賃上げ」「時短」「政策・制度実現の取り組み」を3本柱とし、「すべての組合が重点的に取り組む課題」と位置付けた。賃上げ要求については、定期昇給・賃金カーブ維持相当分の確保を前提に、「すべての構成組織が取り組みを推進していくことを重視し、2%以上の要求を掲げる」とした。

時短については、傘下の主要組合の年間総実労働時間が約10年にわたって2,000時間台に高止まりしていることなどから、「総実労働時間1,800時間への取り組みを加速する」とし、また、36協定特別条項の上限規制設定に関する協議を推進するなどとしている。

「底上げ・底支え」「格差是正」に関する具体的な取り組みでは、賃金の底上げ・底支えが必要な中小・零細、地場労組などがクリアすることをめざす「最低到達水準」の設定をはじめて掲げたのが目玉。「最低到達水準」は、労働者が最低限の生活を営むのに必要な賃金水準を連合が独自に算出している「連合リビングウェイジ(必要生計費)」にもとづき、都道府県ごとに設定。具体額は、埼玉県を例にとると、単身世帯・自動車保有なしの月額で15万3,000円、2人(父子)世帯・自動車保有なしの月額で20万9,000円となっている。一方、中小の賃金引き上げ要求基準を1万500円以上(賃金カーブ維持相当分4500円)と設定した。

非正規は時給37円を引き上げ目安に

また、賃金相場に関する情報開示を積極的に進め、未組織労働者を含めた社会全体の底上げ・底支えに波及することをめざす。また、正規・非正規間の格差是正に向け、重点要求項目を設定し、時給の引き上げでは、地域特性や職種を考慮しながら正社員との均等処遇実現の実現と社会的な波及を強めるため、連合が掲げる『誰もが時給1,000円』をはじめ、①中期的に『都道府県別の連合リビングウェイジ』を上回る水準になるよう指導を強化する、②昇給ルールの導入・明確化の取り組みを強化する、③時給の引き上げについて、37円を目安に求めていく――のいずれかの取り組みを展開するとしている。連合によると、37円は、中小共闘の賃金引き上げ目安(6,000円)を時給換算した額であり、「平成25年賃金構造基本統計調査(全国)」の所定内実労働時間数の全国平均である163時間を用いて割り出したとしている。

闘争の進め方では、新たなと取り組みとして、地場産業の活性化と働く者の処遇改善を進めるために地域の関係者と連携する「フォーラム」を各地で開催することにした。取り組み体制では、産業・業種特性に合った非正規労働者のための取り組みとしていくため、今回は非正規共闘と5つの部門別共闘連絡会議の連携を深める。

この半年で11万5,000人の組織拡大実績

中央委員会ではまた、2014年4月1日~9月30日まで(第Ⅱ期)の組織拡大実績が報告された。組織拡大実績をあげた産別数は30組織で、産別による拡大実績は106組合1万3,251人(うちパート7万1,602人)。地方連合会の組織拡大実績を加えた合計の拡大実績は、155組合1万4,552人となっている。

6カ月間での拡大実績が10万人を超える規模となったのは、第4次アクションプラン21(2007年10月~)以降では、はじめてのこと。また、拡大実績数は、今活動期の1年目である2013年10月1日~2014年3月31日に続き、前活動期の同期の実績を上回った。

構成組織別の拡大実績をみると、UAゼンセン=34組合6万8,290人(うちパート5万7,326人)、JP労組=1万1,149人(同7,988人)、日教組=9,867人(同2,628人)、情報労連=6組合7,922人(同787人)、自動車総連=8組合2,867人(同6人)、損保労連=2,800人(同2,250人)、電機連合=5組合2,268人などとなっている。

連合では、2020年での1,000万連合の実現に向け、新たな組織化方針に基づく取り組みを2013年10月から展開している。連合本部、構成組織、地方連合会が連携する三位一体の取り組みを展開しているほか、本部に組織化専任チームを設置しており、これらの効果が現れてきた形となっている。

なお、12月14日が投票日となっている衆議院選挙について古賀会長は、「政権に都合の悪い争点から国民の目をそらせ、政権維持をはかろうとする党利党略の解散だ。そうした政治手法を含め、この2年間の安倍政権そのものの是非を問う総選挙にしていかなければならない」などと言及した。