中小は10,500円以上、すべての組合は月例で2%以上の引き上げを/連合の闘争方針案

(2014年11月21日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は20日の中央執行委員会で、「2015春季生活闘争方針(案)」を確認した。賃金については、物価が上昇局面にあることや経済成長をけん引する観点で、すべての組合が月例賃金にこだわり、「2%以上」の引き上げを求める。中小組合は、都道府県ごとの「最低到達水準」を設定するとともに、要求基準として「10,500円以上」の引き上げを要求。非正規労働者についても、正社員との均等処遇実現をめざして「時給37円以上」の引き上げを求める。方針案は来月2日の中央委員会で正式決定する。

賃上げ・時短・政策制度の3本柱で

方針案は、2015春季生活闘争で、「賃上げ」「時短」「政策・制度実現の取り組み」を3本柱とし、「すべての組合が重点的に取り組む課題」と位置付けた。そのうえで、「これらの取り組みを通じ『底上げ・底支え』『格差是正』の実現と、『デフレからの脱却』と『経済の好循環』に向けて全力を尽くす」と強調。賃上げ要求については、定期昇給・賃金カーブ維持相当分の確保を前提に、「すべての構成組織が取り組みを推進していくことを重視し、2%以上の要求を掲げる」とした。要求について連合は、「定期昇給相当分と賃上げ額を加えた要求は4%以上になる」と説明している。

一方、時短についても触れ、傘下の主要組合の年間総実労働時間が約10年にわたって2000時間台に高止まりしているなかで、「重点的に取り組む必要がある」と指摘。36協定特別条項の上限規制設定に関する協議の推進など、「労使で長時間労働の是正を実現させ、労働安全衛生面や健康確保の観点で過重労働対策を進めていく」としている。

賃上げ6,000円プラス賃金カーブ維持4,500円を目安に/中小共闘

格差是正に向けた中小・地場の取り組みでは、中小労組を抱える構成組織が参画する「中小共闘」の方針で、「組合員の賃金水準の低下を防ぎ、改善をめざすには、引き上げ幅だけの取り組みでは不十分」としたうえで、「過年度物価上昇相当分の確保とともに、『格差是正』『底上げ・底支え』をさらに前進させていくことが重要」との観点で、要求基準として「10,500円以上」の引き上げを目安にするとともに、「最低到達水準」の設定を掲げた。

「10,500円以上」の目安は「連合加盟組合全体平均賃金水準の2%相当額との差額を上乗せした金額」である6,000円を賃上げ水準目標として掲げ、それに中小共闘が賃金制度が未確立だったり、賃金カーブ維持分が算定困難な組合が交渉する際の賃金カーブ維持分として設定している4,500円を含めた。「最低到達水準」は、労働者が最低限の生活を営むのに必要な賃金水準を連合が独自に算出している「連合リビングウェイジ(必要生計費)」の単身世帯と2人世帯の水準をクリアすることをめざすもの。なお、構成組織は産業実態を踏まえ、到達水準目標を設定する。

また、公正な取引関係の実現や地域全体の活性化に向けた取り組みも強化する。昨年、公正取引実現の取り組みの一環として設置した、中小企業などが下請けで発注元から増税分の値上げを拒否された場合の電話相談制度「消費税価格転嫁拒否通報ホットライン(略称:価格転嫁ホットライン)を継続。このほか、地場産業の活性化と働く者の処遇改善を進めるために地域の関係者と連携する「フォーラム」も各地で開催する。

均等処遇の実現に向けて非正規は時給37円の要求を設定/非正規共闘

すべての構成組織が非正規労働者の処遇改善などに取り組む「非正規共闘」の方針は、「非正規労働者の『処遇改善』『底上げ・底支え』『格差是正』はもとより、基本的なワークルールの周知徹底をはかることを通じて、均等処遇の実現に向けた取り組みを強化する」ことを明記。未組織の非正規労働者も含めて、成果を実感できる取り組みを展開することで、社会の波及をはかることを意識している。

賃上げについては、まず、地域特性や職種を考慮しながら、連合が掲げる『誰もが時給1,000円』をめざす。そして、正社員との均等処遇実現に向けた取り組みの第一弾として、「構成組織は現状を踏まえ、中期的に『都道府県別の連合リビングウェイジ』を上回る水準になるよう」取り組みを強める。さらに、正社員との均等処遇をはかる運動として、昇給ルールの導入・明確化の取り組みを強化。ルールが確立されている場合は、その昇給分を確保する。そのうえで、時給の引き上げについては、中小共闘の賃上げ目安の6,000円を時給換算した37円を目安に求めていく考えを示した。連合によると、37円は、「平成25年賃金構造基本統計調査(全国)」の所定内実労働時間数の全国平均である163時間を用いて割り出したという。

このほか、均等処遇実現を含めた総合労働条件改善の取り組みも展開する。具体的には、正社員への転換ルールの導入促進・明確化と、無期労働契約への転換の促進をはかることで雇用の安定を確保。均等処遇に関しては、既述の昇給ルールの導入・明確化にあわせて、 (1) 一時金の支給 (2) 福利厚生全般および安全管理に関する取り組み (3) 社会保険の加入状況の点検と取得促進④年次有給休暇の取得促進――などを列記している。なお、2015闘争では、一時金と年次有給休暇の取得を最重点項目とする。

3月18日を最大のヤマ場に設定

連合は同日、共闘連絡会議の第1回全体代表者会議を開き、当面の日程を確認した。「運動の実効性を高めるために、すべての組合は2月中の要求提出、3月内での決着に向けて、交渉配置を検討する」としたうえで、最大のヤマ場を3月18日に設定。回答ゾーンは、「3月16~20日を先行組合回答ゾーン、3月23~31日を中堅・中小集中回答ゾーン」などとしている。