イオン労使、UNI、UAゼンセンがグローバル枠組み協定を締結

(2014年11月12日 調査・解析部)

[労使]

イオン株式会社、サービス産業を組織する国際産別組織のUNIグローバルユニオン、UAゼンセン、イオングループ労働組合連合会の4組織は10日、職場における基本的人権の確保など、労働や人権、環境に関する「グローバル枠組み協定」を締結した。都内のUAゼンセン本部で調印式が行われた(写真)。日本企業の労使による協定締結は、髙島屋、ミズノに続き3例目。

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「グローバル枠組み協定」とは、グローバルに事業展開する企業と国際産別組織(GUF)との間で締結する協定で、企業と労働組合がお互いをパートナーと認識しながら、労働や人権、環境などについて、企業の社会に対するコミットメントを推進することをうたう共同公約。決まった形式が定められているわけではなく、協定の内容は協定締結者がそれぞれの考え方や基準に基づいて決定する。一般的には、国際労働機関(ILO)の中核労働基準である8つの条約(団結権・団体交渉権、差別の禁止、児童労働の禁止など)を入れることが基本となっている。あえて労使で協定を締結・宣言し、企業内外に公表することで、具体的な取り組みの確保が促される面がある。

ILO中核労働基準などの適切な実施を公約

今回締結されたイオンにおける「グローバル枠組み協定」は、序文で、「本協定締結者はイオン株式会社がイオンの基本理念に基づき事業成長を果し、持続可能な成長に向けた国際的な取り組みに寄与するため、連携して取り組むことを宣言するものである」と強調。ILO中核的8条約とILO条約第155号(職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約)、国連グローバル・コンパクト10原則について、「適切な実施において共同で責任を負う」とした。また、地球環境に関しても、「持続可能な社会の実現を目指して、『低炭素社会の実現』、『生物多様性の保全』、『資源の有効利用』、『社会的課題への対応』を柱とした活動を推進する。さらに事業活動が自然環境と人間環境に及ぼす恐れのある影響に積極的に対処する」とうたった。

4組織は、今後、協定に関する状況を報告するため、1年に1回会議を行い、必要に応じて改善が必要な項目について協議するとしている。

協定締結者は、イオン株式会社が岡田元・取締役兼代表執行役社長/グループCEO、UNIグローバルユニオンがフィリップ・ジェニングス書記長、UAゼンセンが逢見直人会長、イオン労連が新妻健治会長。同日の調印式には、イオン株式会社の岡田社長が出席できなかったため、横尾博・取締役兼取締役会議長、石塚幸男・執行役グループ人事最高責任者兼グループ環境最高責任者が出席して岡田社長の署名を持参し、他の3氏が署名を行った。調印式では、上岡恵子・ILO駐日事務所代表、石井淳子・厚生労働省政策統括官が立会人を務めた。

「グローカル経営の推進が必要」(横尾・イオン株式会社取締役会議長)

調印の後、締結者の4者が挨拶し、イオン株式会社の横尾取締役会議長は、今回の協定締結を「大変意義あるもの」と表したうえで、「今後もサステイナブルな経営を推進していくためには、グローバルな観点での経営と、ローカルな視点に根ざした経営を両立させたグローカル経営の推進が必要。ガバナンスやコンプライアンス、安全や品質管理体制など、日本本社で得てきたノウハウを海外本社と共有しながら、地域の要請に柔軟に対応していくことが重要になる」などと述べた。

UNIグローバルユニオンのジェニングス書記長は、「私にとって、大きなニュースであり、大きな突破口になる」とし、「イオンは平和、人権、地域社会に強くコミットしていくことを表明した。今日の協定締結は平和に向けてのプロセスに貢献するものだ。なぜなら、これで対話が促進されることになるからだ」などと歓迎の意を表した。

UAゼンセンの逢見会長は「イオンの国内外の従業員規模からみると、今回の協定の及ぼす影響は大きく、その分、われわれも重みを感じている」とし、「ゼンセンの役割は、協定の履行に向け、他の3者の仲介者の役割を果たすことだ。また、海外の労使関係・慣行は日本と異なることもあり、協定でうたわれている理念が正しく伝わるよう、啓発活動を行っていく必要がある」などと述べた。

「協約の維持・発展を訴えていく」(新妻・イオン労連会長)

イオン労連の新妻会長は、今回の協定締結までに3年かかったことを明かしたうえで、会社が2011年度からの中期経営計画でアジアシフトを打ち出したことが大きな契機になったと説明。「今回の協定締結はあくまでも始まりであり、グローバル枠組み協定を維持・発展させることについて具体的な運動論と方法論をもって、その実践の裏付けをもって行動し、世界に広がるイオンピープルに訴え、社会に訴えていきたい」と抱負を述べた。

イオングループでは、イオン株式会社を中心に約300社が、総合スーパー、食品スーパーなど12の事業を展開。グローバル規模では約43万人の従業員がおり、中国、韓国、マレーシアなど13カ国に事業展開している。近年の環境・社会貢献の取り組みでは、2008年に温暖化防止宣言、2010年に生物多様性方針策定、2011年にサステナビリティ基本方針策定などを行っている。

イオンより早くグロ-バル枠組み協定を締結した髙島屋(2008年)、ミズノ(2011年)の労働組合はともにUAゼンセン加盟。UNIグローバルユニオンは、イオンの締結前までで53のグロ-バル協定を多国籍企業と結んでいる。主な企業には、アデコ、H&Mなどがある。