2%以上の賃上げ要求構想について議論/連合・2015春季生活闘争中央討論集会

(2014年11月5日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は10月30、31日の両日、千葉県浦安市で2015春季生活闘争中央討論集会を開催した。10月17日の中央執行委員会で確認した「2015春季生活闘争方針・基本構想」をもとに、構成組織を交えて議論した。2015春季生活闘争方針は、12月2日の中央委員会で正式決定する。

すべての組合が月例賃金にこだわる取り組みを(古賀会長)

集会の冒頭に挨拶した古賀会長は、2015春季生活闘争の意義について、「2014闘争の基本的な視点を引き継ぐべきと考える。賃金の底上げや底支え、格差の是正に取り組み、デフレ脱却と新たなサイクルでの経済の好循環の実現を図るたたかいと位置づけたい」と強調。「賃上げ、時短、政策制度実現を取り組みの3本柱に据え、すべての組合が要求し、交渉し、回答を引き出す取り組みを強化することが必要であるとの強い決意でこの構想を作成した」と説明した。

賃金の取り組みについては今春の闘争で、「月例賃金の引き上げを実現した流れを継続させなければならない」とし、「物価上昇や経済成長と整合した賃上げを、安定的、継続的に行う。家計消費の拡大のためには月例賃金の引き上げが必要であり、すべての組合が月例賃金にこだわる取り組みを重視する」と述べた。

労働時間短縮の取り組みについては、「労働安全衛生面や健康確保のためにも、長時間労働はあってはならない。また、少子高齢化、人口減少社会とも関わる問題だ。我々の自由な時間は、社会生活のための時間だ。労働時間が長くなると、この生活の時間がそがれてしまう。育児、介護、家事などの時間は、自分たちのための時間でもあるが、地域社会のなかで、自分が果たさなければならない社会的な責任という側面もある」などと持論を展開したうえで、「助け合い、支え合いを行うことにより社会を形成していく。そんな社会にとって、会社人間化することは許されない」「このままでは、働くことを軸とする協働社会の実現は遠のく。ディーセントワーク、WLB社会の実現は、日本社会の持続可能性にとって不可欠だ」と強調した。

15春季闘争では、インターバル規制の導入など時間外労働の規制に関する取り組みを強化する方針だ。

賃金の具体的な制度設計は労使協議で決めるべきもの

古賀会長は、10月22日に開催された第2回「経済の好循環実現に向けた政労使会議」で、企業の賃金制度見直しの例として日立製作所、パナソニック、ホンダから報告があったことについても触れた。古賀会長は「(3社の事例で)共通していることは、入社から一定の勤続年数までの間は勤続の伸びと習熟度は比例し、能力の開発期間でもあり、勤続の伸びと賃金の伸びは比例する考え方をとっている」と報告。「賃金のあり方は、生計費と労働の対価のバランスに考慮しながら考えていくことが必要であり、年功賃金だけとらえて議論することは、企業や社会の雇用、人事システムをゆがめかねない。具体的な制度設計は個別企業の経営戦略や、人材マネジメントを踏まえ、労使で協議し、決定するものだ」と述べ、賃金制度の見直しについては政労使会議で議論するテーマにそぐわないとの考えをあらためて示した。

討論集会では、連合の神津里季生事務局長が、構成組織に基本構想を提案した後、3つの分科会に分かれて議論し、2日目に全体で討論した。基本構想は、2015春季生活闘争について、「賃金相場の波及力を高め、未組織労働者も含め広く社会全体の底上げ・底支えをはかり、格差の是正(規模間、雇用形態間、男女間)に全力を尽くす」とし、「家計消費の回復が求められる中、物価上昇や経済成長と整合した賃金引き上げを継続的に行っていくことが『デフレからの脱却』と『経済の好循環実現』のために必要である」と強調する。

具体的な賃上げ幅については、「定期昇給・賃金カーブ維持相当分の確保を前提とし、過年度の消費者物価上昇分や企業収益の適正な分配の観点、経済の好循環を実現していく社会的役割と責任を踏まえ、すべての構成組織が取り組みを推進していくことを重視し2%以上の要求を掲げ獲得をめざし、取り組みを進めていく」と記述する。

全体会議では、賃上げ幅を2%以上としたことに賛同する意見や、実質賃金水準は維持すべきだという考え方をしっかり出すべきだという意見、銘柄別賃金水準の提示することの重要性をうったえる意見のほか、正規労働者と非正規労働者の格差是正に向けた一層の取り組みを促す意見などが構成組織からあがった。須田総合労働局長は、「11月5日にも労働条件委員会が開かれるので、討論集会での議論も踏まえてさらに整理して、組織討議していきたい」などと答えた。連合では、11月20日に開催する予定の中央執行委員会で2015春季生活闘争の方針案を確認し、12月2日の中央委員会で方針を正式決定する。