要求方針で2%以上の賃上げ幅を提起/連合の2015春季生活闘争「基本構想」
(2014年10月22日 調査・解析部)
連合(古賀伸明会長)は17日に開いた中央執行委員会で、「2015春季生活闘争方針・基本構想」を確認した。基本構想は、2015春闘における賃上げ要求(いわゆるベア分)に向けて、2014春闘で要求方針に掲げた「1%以上」を上回る、「2%以上」とする考え方を提起した。今後、基本構想をもとに構成組織を交え議論を行い、12月2日の中央委員会で最終的な要求方針を決定する。
社会全体の底上げ・底支え、格差是正に全力を尽くす
基本構想は、2015春季生活闘争の基本的な考え方について、「2015春季生活闘争は、賃金相場の波及力を高め、未組織労働者も含め広く社会全体の底上げ・底支えをはかり、格差の是正(規模間、雇用形態間、男女間)に全力を尽くすことである」と主張。そのために「賃金の上げ幅のみならず、賃金の絶対額を重視した要求の組み立てを行う必要がある」と強調する。
また、「家計消費の回復が求められる中、物価上昇や経済成長と整合した賃金引き上げを継続的に行っていくことが『デフレからの脱却』と『経済の好循環実現』のために必要である」とし、2015春闘でも賃上げが必要との認識を示したうえで、「足元で物価は継続的に上昇しており、働く者の実質的な生活は十分に改善したとはいえない状況を踏まえ、賃上げ要求については、その上げ幅の議論とともに、生活できる賃金水準や、仕事の内容や役割などに見合った納得できる賃金水準を求めていくこととする」との基本スタンスを示した。
そのうえで、賃上げの上げ幅について、「賃金引き上げ幅については、定期昇給・賃金カーブ維持相当分の確保を前提とし、過年度の消費者物価上昇分や企業収益の適正な分配の観点、経済の好循環を実現していく社会的役割と責任を踏まえ、すべての構成組織が取り組みを推進していくことを重視し2%以上の要求を掲げ獲得をめざし、取り組みを進めていく」と提起。定期昇給相当額と賃上げ額を加えた要求は4%以上とすることも付け加えた。
2014春闘では、賃上げ要求方針を「1%以上」(それとは別に「格差是正・配分のゆがみの是正(1%を目安)」も掲げる内容)としたが、今回の基本構想は、今年に入ってからの物価上昇率が、2013年実績を上回って推移している状況などを勘案し、前回方針を上回る賃上げ幅を策定した形。連合はこの基本構想について、今月30~31日に開く「2015春季生活闘争中央討論集会」で構成組織による討議に付し、基本構想を踏まえた最終的な2015春闘方針を、12月2日に開催する中央委員会で正式決定する。基本構想の内容で方針が決定されれば、連合が2%以上の賃上げ要求方針を掲げるのは、1998年に2.9%(8,900円)を掲げて以来のこととなる。
物価上昇や企業収益の適正配分、経済の好循環などを総合的に判断
同日の中央執行委員会後に記者会見した古賀会長は、賃上げ分を2%以上とした根拠について、「ロジックでは説明できないが、物価上昇や企業収益の適正な配分、デフレを脱却し経済を好循環に回していくための役割と責任、産業動向にバラツキがあるなかですべての構成組織が取り組めるようにすることなどを総合的に判断した」と説明。物価上昇分をどのように織り込んだかについては、「物価も含めて総合的に判断した。消費税率の引き上げも1つの切り口ではあるが、それを引いたり足したりの算式で議論はしていない」とし、「消費税については社会保障制度の安定と財政再建のために国民で負担を分かち合うという面もあり、この分をすべて企業に要求することがどうかという見方も一方である。また可処分所得をどう上げていくかは政策制度要求で実現させていくという考え方もあり、トータルでみていく必要がある」と述べた。
このほか、2015春闘に向けて古賀会長は「デフレを脱却し、新たなサイクルで経済・社会を好循環にしていくために何が必要かと考えたとき、企業業績を良くして配分するという方法もあるだろうが、何といってもGDPの6割を占める個人消費を冷え込ませてはデフレに逆戻りしかねない。現在、物価上昇に所得の伸びが追いついていないからこそ、2015春闘で要求を掲げたら、構成組織で徹底的に一丸となって交渉に入っていくことが重要になる」などと意気込みを語った。
労働時間縮減の取り組みも柱に
基本構想は、賃上げ要求以外では、企業内最低賃金の取り組みの強化や、ワーク・ライフ・バランスの実現、非正規労働者の労働条件改善などを具体的な要求項目に掲げている。なかでも、ワーク・ライフ・バランスの実現における労働時間短縮の取り組みは2015春闘の取り組みの柱の1つ。総実労働時間の縮減に向けた取り組みを継続して行うほか、三六協定(特別条項付協定)の点検・適正化、インターバル規制、時間外割増率の引き上げ、年次有給休暇取得率の向上に向けた取り組みなどを行うとしている。