古賀会長が来春闘での月例賃金引き上げの必要性を強調/連合・中央委員会
(2014年10月3日 調査・解析部)
連合(古賀伸明会長、約670万人)は2日、都内で中央委員会を開催し、2015年度活動計画を決定した。古賀会長は挨拶のなかで、2015春季生活闘争に向けたスタンスを表明し、今年に引き続いて、月例賃金の引き上げに取り組むことの重要性を強調した。
労働者保護ルールの改悪阻止を
挨拶した古賀会長は、今後の運動課題としてまず「労働者保護ルール改悪を阻止すること」をあげ、キャンペーン活動を今後2カ月あまりをかけて組合員だけでなく地域にも呼びかけ、全国で展開していくと強調した。そのうえで、今臨時国会に提出された労働者派遣法改正案について、「いまの不安定雇用・低処遇を是正することなく、派遣はずっと派遣のまま働かせることができるようにする悪法だ」と表現し、「この改悪を許せば、正社員から派遣労働者への置き換えが進み、未来の子どもたちの就職先は派遣ばかりという世界になりかねない」と述べた。
一方、日本再興戦略改訂2014のなかで政府が提起する新たな労働時間制度については、「いくら働かせても残業代を払わなくてよい、いわゆるホワイトカラー・エグゼンプションの導入だ」と指摘。「年収が1,000万円以上なら、働く者の命と健康を守るためにつくられた労働時間のルールを無視して働かせてもよいのかまったく理解できない。導入しさえすれば、次のステップで年収要件を引き下げる、そんな意図も見え隠れしている」と批判した。
さらに古賀会長は、過重労働で心身の健康を害する労働者が増え続けている状況を指摘したうえで、「このような状況のなかで時間外労働の上限規制など過度な働き方を規制する法律改正には目もくれず、働かせる側の理屈だけで残業代ゼロ制度を導入しようとしていることは許せない。それは先の国会において全会一致で成立した過労死等防止対策推進法の精神にも反するものだ」と主張。「労働者保護ルール改悪阻止の取り組みはこれからが正念場だ」とし、当面の最重要課題と位置づけて運動を展開していく考えを表明した。
生活できる賃金水準への底上げは道半ば
2014春季生活闘争については、「1999年以来となる定昇込み平均2%を超える賃上げ回答を引き出すことができた。長期にわたるデフレ経済下で賃金の改善が遅々と進まなかったなかで、要求の趣旨からすれば充分とはいえないものの、賃金水準を引き上げたことの意義は大きなものがあった」と振り返った。ただ、その一方で、「規模間や非正規労働者の賃金格差の是正は依然として進んでいない。法定最低賃金も現在の制度になってからもっとも高い引き上げ額となったが、生活できる賃金水準への底上げに道半ばといわざるを得ない」と残る課題もあげた。
2015闘争は総実労働時間縮減の取り組みも
2015春季生活闘争向けて古賀会長は、「デフレ経済から脱却し持続的な成長軌道に乗せることができるのか、それとも、賃金は停滞し物価だけがあがる悪いインフレに陥るのか、日本の将来を左右する分水嶺といっても過言ではない」と述べたうえで、「経済の好循環の実現に向けては、内需の6割を占める個人消費を冷やすことはあってはならず、そのためには月例賃金の継続的かつ安定的な上昇が不可欠だということ、もう1つは非正規雇用労働者や中小企業で働く仲間の『底上げ、底支え』『格差是正』をよりいっそう重視した取り組みが必要だということだ」と引き続き月例賃金の引き上げに取り組む必要性を強調。さらに「ディーセント・ワーク、ワーク・ライフ・バランス社会の実現に向けて、こだわりをもって総実労働時間の縮減に向けた取り組みを加速しなければならない」として、2015年は時短にも重点を置いて取り組む方向を明らかにした。
9月29日に再開された政労使会議に関しては、「貧困と格差の拡大、不安定・低賃金労働の増大など、デフレの根っこにある問題を解決していくうえで重要な切り口になるものだ。労使で話し合うべき課題、三者構成の審議会で扱うべき課題などを峻別しながら、積極的に関与していく」などと述べた。
2014年は、2013年の定期大会で決定した運動方針を展開する中間年にあたるため、中央委員会では、この先1年間の活動計画(「2015年度活動計画」)を決定した。活動計画の総論では、①仲間を増やし、弱い立場にあるものを結び、社会的広がりを持った運動をつくる②大衆行動を組織し、労働者保護ルールの改悪阻止、格差社会の是正に取り組む③「働くことを軸とする安心社会」の実現に向け政策実現力を強化する――の3点を柱にあげた。
団体交渉権などの新たな機能強化の取り組みに着手
各領域での具体的な取り組み内容をみていくと、仲間を増やす運動では、組織化方針である「1,000万連合」実現に向け、連合本部内に2014年度に設置した組織化専任チームを中核にして、連合本部、構成組織等、地方連合会・地域協議会の三位一体での取り組みを引き続き展開。中小や地場企業での組織化でより成果をあげるため、組織化専任チームが団体交渉に直接参画できる態勢づくりに着手する。
また、「連合の日」を設定し、構成組織や地方連合会が、単組や職場にまで連合運動を伝える取り組みをするほか、非正規労働者の組織化と処遇改善を促進させる取り組みを継続する。女性労働者や若年労働者との対話の機会も増やすとし、若年者については雇用・就労環境の改善に向けて法的整備の検討やその実現に向けて取り組むとしている。
労働者保護ルールに関しては、構成組織・地方連合会と連携して「改悪阻止に引き続き取り組む」とし、「ルールの後退を招かないよう労働政策審議会で議論する」としている。解雇規制や労働時間規制以外の取り組み項目としては、改正労働基準法第37条による月60時間超の割増率引き上げに関する中小企業への適用猶予措置の早期廃止や、勤務間インターバル規制や時間外労働にかかる量的上限規制の導入、有給休暇の取得促進、労働者派遣法改正案への対応などをあげている。2015春季生活闘争については、「引き続きすべての働く者の労働条件の底上げ・底支えをはかる」と記述した。
政策実現力の強化では、2015年4月に予定される第18回統一地方選挙を、「働く者・生活者」の立場で総掛かりで取り組むとし、組合員の政治活動の重要性の理解促進を図るため、とくに若年層や女性、非正規雇用労働者を意識した研修会を実施するとしている。
中央委員会ではこのほか、役員補充選挙を実施するとともに、第18回統一地方選挙に向けた特別決議を採択した。役員選挙により、今夏、基幹労連委員長に就任した工藤智司氏が副会長に加わった。