151万人強まで組織を拡大/UAゼンセンの定期大会

(2014年9月12日 調査・解析部)

[労使]

最大の産別組織であるUAゼンセン(逢見直人会長、151万8,300人)は10、11日の両日、京都市で定期大会を開催し、この1年間の組織化実績や2014労働条件闘争のまとめを確認するとともに、2015~2015年度運動方針を決定した。組織化では、この1年間で約7万5,000人の拡大実績をあげ、2012年11月の結成時に掲げた2年間の拡大目標である10万人を達成。大会時の組合員総数は150万人を突破した。

2012年11月にUIゼンセン同盟とJSD(流通サービス連合)が統合して結成されたUAゼンセンの、結成時の組合員数は141万2,699人だった。挨拶した逢見会長はこの2年間の活動について、「組織拡大により、151万8,300人で今大会を迎えることができた。結成当初かかげた150万という目標は2年で達成したことになる。この間、未組織企業の組織化、そしてパート等短時間雇用者の組織化に取り組んできた関係者の努力に敬意を表したい」と関係者や加盟組織をねぎらった。一方で、製造産業、流通、総合サービスの3部門制の導入など、新たな組織運営体制を取り入れたことについては、「この2年間で『顔合わせ』から『心合わせ』の段階までいくことができ、地に足のついた活動ができるUAゼンセンとなった」と振り返った。

2015闘争は「過年度物価上昇分を上回る賃上げが必要」(逢見会長)

2014年労働条件闘争については、政府の「経済の好循環に向けた政労使会議」で労働側の訴えもあり、「経済の好循環のためには賃上げが必要であるという共通認識は得られた」としつつ、正社員組合員の賃上げが平均4,057円(前年比511円増)、1.66%、短時間組合員が時間額で11.3円(同2.4円増)、1.26%などとなった最終集計結果に対して、「UAゼンセンの加盟組合には内需型産業や中小企業が多く、アベノミクスの恩恵が及ばない企業が多い。全体としてはベアで過年度物価上昇分0.8%までは確保できなかった点、とりわけ中小規模の組合で確保できなかったという課題を残したものとなった」と総括した。

2015年闘争に向けては、「消費税率が本年4月に8%に引き上げられ、消費者物価は6月以降、昨年同期比に比べて3%台の上昇が続き、国民生活に影響を及ぼし始めている。今後、日本経済がデフレを脱却して持続的な成長軌道に乗るのか、あるいは賃金が上がらず、物価だけがあがる悪いインフレとなるのか大きな分かれ目になる」との見方を示したうえで、「その意味で、来年の賃金交渉が重要な役割を果たすことになり、労働組合としてもその責任を果たす必要がある。具体的には連合台で議論することになるが、過年度物価上昇分を上回る賃上げが必要になると考える」と、ゼンセンとしての来春闘に向けての検討のスタンスを明確にした。

残業代ゼロ法案の阻止と労働時間規制強化を求める全国署名運動を

逢見会長は、政府から提起された「新たな労働時間制度」の創設にも触れた。「これは長時間労働を常態化させかねない提案であり、これを何としても阻止しなければならない」と強調したうえで、本大会終了後に、UAゼンセンとして「残業代ゼロ法案の阻止と労働時間規制強化を求める全国署名」運動を展開すること明らかにした。

また、牛丼チェーン「すき家」における労働実態を調査した「労働環境改善に関する第三者委員会尾」の報告内容をとりあげ、「このような企業の経営者が糾弾されるのは当然だ」と述べる一方で、「労使関係にも問題があったと言える。(UAゼンセンに加盟していない)ZEAN(ゼンショー従業員組合会)のようなうわべだけの労働組合では、集団的労使関係が機能する余地はなく、従業員代表としての責務を果たしたことにならないことは明白だ」と述べ、組織化するだけではなく発言もする労働組合を巻き込んだ集団的労使関係の重要性を強調した。

2014年度は7万5,334人を組織化

大会で確認した組織拡大報告によると、この1年間(2014年度)での新加盟および企業内組織拡大による組合員は7万5,334人。内訳は、新加盟が2万9,556人(53組合+3分会)、企業内組織拡大が4万5,778人(40組合)となっている。単年度目標は5万人だったことから、目標を大きく上回る拡大実績となった。

UAゼンセンでは、特定の業界を業界ごと組織化していく業界戦略と、特定の地域内の組織率をあげていく地域戦略をとっているが、業界戦略では、ホームセンター業界のLIXILビバ(組合員7,000人、2014年4月加盟承認)を組織化。これにより、同業界のトップ10社のうち、ゼンセンが組織化していないのは最大手の企業だけとなった。また、化粧品小売業界では、ハウスオブローゼ(同1,323人、同年7月加盟承認)の組織化に成功した。

地域戦略では、岩手県を中心に展開するスーパーマーケットのベルプラス(同2,160人、同年5月加盟承認)や、青森県を中心に展開するスーパードラッグアサヒ(同769人、同年7月加盟承認)といった東北で実績をあげた。

このほかの主な新規加盟組合は、製造産業部門では、医薬化粧品労働組合ネットワーク・ツムラ労働組合(730人)など、流通部門では、ハートフレンド労働組合(2,703人)、レッドキャベツ労働組合(1,500人)、ハーティウォンツユニオン(1,454人)など、総合サービス部門では雪国まいたけ労働組合(1,288人)、イオングループ労働組合連合会イオン銀行従業員組合(911人)などがある。

一方、企業内拡大の実績をみると、ヤマダ電機労働組合が7,805人、ウエルシアユニオンが7448人を個別オルグで拡大させた。

正社員の平均妥結額は4,057円、パートは11.3円

2014労働条件闘争のまとめによると、正社員については、8月1日現在で闘争参加組合数は1,831組合で、妥結組合数は1,603組合(88%)となっている。賃金の要求額の平均は8,038円(賃金引き上げ分の平均は3,280円)。これに対し、妥結額の平均は4,057円(同791円)、率は1.66%。前年と比べると、額では511円、率では0.21ポイントの増加となった。

一方、パートタイマーでは、額要求の平均が31.9円(時給換算)で、要求幅を率でみると3.48%となる。妥結額は11.3円で、率では1.26%で、前年をそれぞれ2.4円、0.26ポイント上回っている。契約社員は、平均の要求額が5,339円(率では2.83%)で、妥結額は3,134円(同1.67%)。前年に比べ額で488円、率で0.32ポイント上回っている。

すかいらーく労組など9組合でインターバル規制を協定化

闘争結果を6月時点で妥結した組合ベースで分析すると、今回の闘争では、指令・統制・妥結権を中央機関に集約する「統一闘争」に参加した組合の割合は91.3%で、「統一闘争」に参加せずに賃上げ闘争に参加した組合(2013年でいう「統一的運動」組合)が7.6%だった(残りはその他)。2013年に「統一的運動」に参加した組合は148組合あったが、このなかの23組合が今回、統一闘争に参加した。

妥結組合(1,321組合)のうち、ゼンセンが設定する「ミニマム基準」(高卒35歳ポイントで24万円など)に達していない組合は982組合(約75%)あった。ミニマム基準を下回る組合の平均妥結額をみると4,015円であり、2013年の同妥結額平均が3,382円だったことから、ミニマム基準に達していない組合でも妥結実績が上がっていることを評価する一方、ミニマム水準以下の組合の4分の3が水準不明であることを問題視している。ミニマム基準を下回る組合でも、賃金制度が整備されている組合の方が、賃金体系維持分原資が確保されているとの結果が出ているという。

パートタイマーを分析すると(4月24日までの妥結ベース)、タイプについては、「Aタイプ」(職務=正社員と同じ、人材活用=同じ)が要求4組合、妥結2組合、「Bタイプ」(職務=同じ、人材活用=異なる)が要求37組合、妥結21組合、「Cタイプ」(職務=異なる、人材活用=異なる)が要求159組合、妥結129組合と、「Aタイプ」はほとんど報告されていない。妥結額は、「Aタイプ」=23.8円(2.04%)、「Bタイプ」=「15.3円」(1.70%)、「Cタイプ」=13.6円(1.51%)と、タイプがAに近づくほど引き上げ額が増加する傾向がみられた。

賃金以外の総合労働条件改善項目では、西友労組など25組合で、所定労働時間の短縮を実現。年間休日増もあわせて獲得したところもある。また、今年は部会独自の「必須項目(統一要求項目)」を設定する部会もあり、フードサービス部会がインターバル規制の導入に取り組んだ。その結果、すかいらーく労働組合など9組合で協定化に至った。このほかの取り組みでは、マタニティハラスメントの協定締結(SSUAやまと労働組合など)などがある。

新運動方針では、組織拡大や雇用・労働条件の取り組みなどが柱となっている。組織拡大では、製造業では、中小や既存大手のグループ内企業の組織化とともに、医薬品分野での外資系、ジェネリック分野の組織化を進める。流通業では、業界を代表する未組織の巨大企業や外資系企業の組織化に着手するとしている。サービス業では、大手外食の巨大企業グループの組織化を推進するほか、ビルメンテナンス・警備・清掃を含む不動産周辺事業や対企業向けの給食事業や制服リース業などの組織化に着手する。2015~2016年度の目標を新規組織化5万人、組織内拡大5万人に設定した。

大会では役員の改選が行われた。新体制は以下のとおり。会長=逢見直人氏(再、本部)、副会長(本部業務担当)=島田尚信氏(再、本部)、八野正一氏(再、本部)、副会長(部門業務担当)=沖田政憲氏(再、三菱レイオンユニオン)、西田浩蔵氏(新、すかいらーくグループ労働組合連合会)、藤吉大輔氏(再、ダイエーユニオン)、書記長=松浦昭彦(再、本部)。