労働法制や安全衛生を強化する新運動方針を確認/基幹労連大会

(2014年9月10日 調査・解析部)

[労使]

鉄鋼、造船重機、非鉄関連の労働組合で構成する基幹労連(約25万人)は4、5日の両日、神戸市で定期大会を開催し、向こう2年間の運動方針を決めた。2014春闘で、多くの組合が2年分の基本賃金の有額回答を得たことなどを評価。新運動方針では、労働法制への対応や安全衛生活動の取り組みを強化する姿勢を打ち出している。また、大会では建設連合との組織統合を確認した。役員改選では、工藤智司事務局長が新委員長に就任。新事務局長には新日鉄住金大分労組の神田健一組合長が就いた。

写真・基幹労連第12回定期大会

基幹労連の春季労使交渉は、働く人への投資で魅力ある労働条件をつくり上げることで、産業・企業の競争力強化との好循環を生み出すとの考え方にたち、2006年の労使交渉から2年サイクルの労働条件改善(AP:アクションプラン)で統一要求を掲げる形をとっている。初年度は大手が中心になって賃金などの主要労働条件を集中的に交渉し、2年目には企業・業種間の格差是正などの交渉を重点的に行う。

2014年は2年ぶりに賃金について交渉する年に当たり、2014年度と15年度の2年を1つの単位として取り組んだ。具体的には、定昇相当分を確保したうえでの賃金改善を両年度に求めることとし、改善額は「具体的配分として最も効果的なあり方を各組合で追求する」としながらも、2014年度、15年度ともに3,500円を基準に設定した。2003年に結成された基幹労連として、年度毎に要求額を掲げるのは今回が初めて。その結果、総合大手などは「2014年度1,000円、2015年度1,000円を中心とする2年分の2,000円」の賃金改善で妥結した。

先行組合の賃金改善の流れが産別全体に波及

大会で報告された「AP14春季取り組みの評価と課題」によると、賃金については、要求を行った組合の7割程度が2014年度、2015年度にわけて要求し、そのうち各年度3500円を要求する組合が9割を超えた。その結果、「会社からは、2014年度1,000円、2015年度1,000円という2年分の財源投入を行うものをはじめ、多くの有額回答が示された」。また、業種別の組合では、「総合組合と同水準の回答や非常に厳しい産業事情のもとで一定の有額回答を引き出すなど、回答を受けた組合のうち前進回答が6割におよんだ」一方で、「主に2015年度分の要求に対して、『別途協議』『継続協議』とする回答も一定程度あった」という。

「評価と課題」は、「2015年度分の財源投入を巡って、次年度以降の経済・物価等の見通しにもとづく交渉展開は極めて厳しいものにとなったが、今次交渉において2年分の回答を獲得した点は、最終局面まで粘り強く交渉努力を尽くしたことが結実したものだ」と評価。業種別組合の回答状況に対しても、「先行組合の賃金改善の流れが産別全体に波及したもの」と受け止めたうえで、別途協議・継続協議になった組合も「厳しい企業状況のもと、なんとしても具体回答を引き出すべく交渉した結果だ」としている。

一方、「60歳以降の安定雇用」確保では、85組合が産別の取り組み方針に沿って要求し、58組合で賃金改善回答の60歳以降者への適用や、60歳以降者を対象とする積立年休制度の新設・充実などの前進回答を得た。これに関しては、「処遇の納得性向上や労働条件の底上げに資するものと評価できる」と総括している。

「AP15は格差是正とAP16に向けた物価上昇局面の議論を」(澤田委員長代行)

こうした結果について、挨拶した澤田和夫委員長代行は、「賃金改善として基本賃金部分で有額回答を引き出したことは、デフレからの脱却と日本経済の回復基調維持に向けた第一歩として高く評価できる」と指摘。その一方で、継続協議・別途協議となった組合への対応について「AP15春季取り組みは、業種別部会のまとまりを重視した格差是正の取り組みと合わせて、AP14の継続協議・別途協議のフォローをしっかり行う」と述べた。

さらに、次の主要労働条件の交渉年度であるAP16に向けて「経済成長や消費者物価指数の動向を見極めつつ、物価上昇局面における取り組み方針について議論し決定していかなければならない」との考えを示した。

今後の春季取り組みについては、向こう2年間の新運動方針のなかで、「AP15春季取り組みは個別年度となり、2年サイクルの完遂に向けた重要な取り組みになる」として、「『評価と課題』を踏まえ、丁寧な議論の積み重ねにより方針を策定する。さらに、AP16春季取り組みに向け各種課題整理を進める」とした。具体的には、AP14で賃金改善の継続・別途協議となった加盟組合へのフォローを業種別単位で進めることが最優先課題になる。

討議では他産別との取り組みの遅れ、格差などを懸念する声も

春季取り組みに関する運動方針の討議では、「2015年度分の回答を引き出したことは大きな成果といえるが、日銀の物価見通しが現実のものとなれば、この2年サイクルの期間でわれわれの実質賃金が低下する状況になってしまうのではないか。また、他産別の動向によっては、2015年の春闘で基幹労連の賃金改善の取り組みが遅れを取る可能性もある」(川崎重工労組)や、「2年分の財源投入をはじめ、多くの有額回答が示されたことは、産別が一体となった要求と交渉が結実したものと評価できるが、物価上昇が継続する状況においては、基本年度で2年分の有額回答を先取りしても、個別年度で労働界全体でさらなる賃上げが広がれば、他産別との賃金格差が生じるのではないかとの不安・懸念がある」(IHI労働組合連合会)といった、今後の取り組みへの慎重な判断を求める声が上がった。

一方、新日鉄住金労連は、「この2年間に財源投入が果たせたことは複数年協定の成果。既に経済が成熟化した先進国の多くは複数年協定が一般的であり、取り巻く課題が多岐に渡るなかで、限られたエネルギーを効果的に活用するためには、2年サイクル運動のさらなる深化に向けて幅広い検討を行うべきだ」と指摘。「AP15春季取り組みは格差改善や実質賃金の維持向上に向けて、グループ関連各組合などに対し、積極的に支援を展開していく」姿勢を明らかにした。さらに、「経済の持続的成長が求められるなか、ものづくり産業においてはグローバル競争が熾烈化し、足元では産業企業の空洞化や雇用問題も発生しており、電力問題がさらに拍車をかけている。また、現政権が進めている労働法制改革が実現すれば組合員の働き方や雇用が深刻な事態に陥りかねない」として、政策・制度の取り組みにエネルギーを集中することを要請した。

労働法制改悪には社会的なうねりで阻止する

新運動方針は労働法制への対応について、政府が検討を進めるとしている「時間ではなく成果で評価される新たな労働時間制度の創設」や「予見可能性の高い紛争解決システムの構築」などに対し、「労働法制改悪に向けた動きは安易な解雇や不安定な派遣労働の拡大などを招きかねない極めて短絡的な発想のものであり、技術・技能の伝承の停滞や現場力の弱体化を招き、結果的に国際競争力を弱める事は明白だ」と厳しく批判。そのうえで、「苦難をともに乗り越えてきた、ものづくり産業の経営者が安易に同調するとは思えないが、引き続き連合と連携を強化し各種取り組みを行い社会的なうねりで改悪を阻止する」と強調している。

労働災害発生の連鎖を断ち切る活動に注力

また、安全衛生活動の強化も明記。「安全はすべてに優先する」との考えに立って、災害発生の連鎖を断ち切る活動に注力する姿勢を鮮明にしている。

基幹労連によると、「2013年の死亡災害は21件、21人で「憂慮すべき状況にあった」が、2014年はさらに増加傾向にあり、同労連の統計で7月末現在、13件18人の重大災害が発生している。また、2013年の死亡災害を型別にみると、「挟まれ・巻き込まれ」「墜落・転落」が全体の70%以上を占め、ここ数年の傾向として経験年数が5年未満の労働者の災害が多いという。

方針は「それぞれの作業や設備のリスクを低減し、さらに残された危険要因を周知させることが重要だ」として、「あらゆる場面で災害の傾向を周知徹底し、共通認識のもと類似災害の撲滅に向けた取り組みを進めて災害発生の連鎖を断ち切る」決意を示している。

建設連合との組織統合を確認

組織関連では、中堅建設業の労組で構成する建設連合(星野康幸委員長、約4,000人)との組織統合を確認した。

建設連合との統合に関しては、昨年の大会で組織統合に向けた検討委員会を設置。以降、課題の抽出と整理・解決に向けた検討を行い、今年2月の中央委員会で「基本的に大きな問題はない」旨の中間報告が行われていた。他方、建設連合も2月に開いた中央委員会で基幹労連との組織統合を議決。9月3日に解散大会を開き、36年の建設連合としての活動にピリオドを打っている。大会では、業種別部会運営規定を一部改正し、建設部会を新たに設置。今後は、「基幹労連の一員となり、より広い視点に立って、新たな立場で建設労働運動を展開していく」(星野委員長)という。

なお、大会では新たな組織拡大計画も確認した。2014年9月~2020年8月までの6年間で各企業グループの関連会社などを対象に6万人の組織化をめざす。

新委員長に工藤事務局長、新事務局長には新日鉄住金大分労組の神田組合長が就任

大会では、役員改選が行われ、澤田委員長代行が退任し、新委員長には三菱重工業労組出身で現事務局長の工藤智司氏が就任。新事務局長には、新日鉄住金大分労組組合長の神田健一氏が就いた。