継続して月例賃金引き上げに取り組む/金属労協大会、相原氏が新議長に

(2014年9月5日 調査・解析部)

[労使]

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の金属関連5産別労組でつくる金属労協(JCM、約203万人)は2日、都内で定期大会を開催した。挨拶した西原浩一郎議長は2015春闘に向けて、「継続して月例賃金の引き上げに取り組むべき」と加盟産別組織に訴えた。また、金属労協の発足時の組織である「IMF-JC」が設立されてから50周年になるのを祝い、大会終了後には記念イベントも行われた。

「非正規雇用の拡大に歯止めを」(西原議長)

挨拶した西原議長は、今後の金属労協の活動について、「日本の金属ものづくり産業の守るべき強みを守り、産業・企業の健全成長と長期安定雇用を基軸とする良質な雇用の維持・創出を目指す総合的な取り組みを引き続き強化・継続していかなければならない」と述べた。金属ものづくり産業の最大の強みは「人材力」「現場力」だとし、これらを守り持続的な生産性向上を図っていくためには、「企業行動における過度の短期利益・業績志向を是正し、より長期的・戦略的視野に立った経営を促すとともに、非正規社員の拡大に歯止めをかける」ことが必要だと強調。人への投資をコスト的側面に傾斜して焦点をあてるのではなく、「未来への投資としてその拡充を図るべき」と訴えた。

要求水準は「実質生活・実質賃金の維持」を基本に

2014年闘争について西原議長は、「回答結果から判断して、金属労協全体で一定の社会的責任を果たし、デフレ脱却と経済の好循環への第一歩を踏み出すことができたものと評価する」と総括。2015年闘争に向けては、「デフレ脱却と経済の好循環を確実なものにしていくために労働組合として、継続して月例賃金の引き上げに取り組むべきと考える」と述べた。ただ、その一方で、「現状が消費税引き上げの影響も含め物価上昇局面にあることを踏まえれば、組合員の生活を守る観点を重視し、実質生活の維持、実質賃金維持を基本に要求水準のあり方の検討を進めるべきと考えるが、本年の交渉経過等から判断して来春の経営側の交渉姿勢はきわめて厳しいものとなることは必至だ」との見解を示したうえで、「総合的な情勢判断を起点に、必ずや結果に結びつけるための要求根拠の精査と最大限の共闘効果が発揮できる交渉体制を構築する観点から各産別での論議・検討を加速してほしい」と呼びかけた。

半数超が定昇以外のベア等の賃上げを獲得――「賃上げの流れを全体に波及できた」

大会で報告された今春闘の闘争経過によると、賃金では、最終的に2,895組合が要求し、8割にあたる2,329組合が賃上げを要求した。回答を引き出したのは2,800組合で、そのうち2,332組合が賃金構造維持分を確保し、さらに1,562組合(回答引き出し組合の55.8%)が賃上げを獲得した。月例賃金を引き上げた組合の平均引き上げ額は1,320円。闘争経過は、「集計登録組合の95%、中堅・中小登録組合の80%が月例賃金の引き上げを実現」したとし、「賃金引き上げの流れを日本全体に波及させることができた」との評価を下している。

一方、企業内最低賃金は今季闘争の結果を受け集計した全体(3,272組合)のうち協定を締結する組合が前年から164組合(5.1ポイント)増え、1,644組合(50.2%)と5割を超えた。この結果を踏まえ、「企業内最低賃金協定の取り組みを特定(産業別)最低賃金の引き上げに波及させる取り組みを強化する」と総括している。

2015、2016年闘争は実質生活維持を求めJC共闘を強化

大会で決定された2015~16年度運動方針は、賃金、一時金の取り組みについて、「経済の好循環を実現し、デフレ脱却・経済成長を確実なものとするためには、継続的に賃金の引き上げに取り組むことが重要であり、労使が引き続き社会的責任を果たしていくことが求められる」と基本的なスタンスを述べたうえで、「2015年闘争、2016年闘争は、そのための重要な取り組みとなることから、経済成長や物価動向、可処分所得の動向、雇用、産業動向、企業の生産性や収益、勤労者の生活実態などを十分に精査し、賃金引き上げによる経済の好循環実現に寄与するための闘争について議論を尽くしていく。加えて、物価上昇局面にあることから、実質生活維持を求める闘争に向けて、JC共闘の強化に向けた議論をさらに進める」と盛り込んだ。

方針討議では「2015年は生活防衛闘争に」の声も

金属労協における2015年闘争方針に向けた議論は秋に向けて今後本格化するが、方針討議では、「2015年に向けては、勤労者の生活実態を精査し、論議を尽くし、積極的な運動の展開をお願いする」(全電線)、「足元の経済情勢は、消費税率の引き上げ、増税前の駆け込み需要の反動、ガソリン価格の高騰などマイナス要因も多いものの、企業業績は回復しつつあり、今後は物価上昇が鍵となる。デフレ脱却とマクロ経済を安定成長に向けるため2015年も引き続き取り組む必要がある」(JAM)、「物価が上昇する見通しであること、企業業績も回復の基調にあることもあり、デフレからの脱却と経済の好循環を実現していくことは政労使共通の認識であり、引き続き賃金水準の改善に取り組むべき状況にある。具体的要求は今後になるが、賃金要求の基本である実質生活の維持という観点が重要であり、生活防衛闘争という位置付けとなる。経営側からはすでに慎重な発言が聞こえてきており、相当厳しい交渉になることを覚悟しないといけない。理論的な準備を整えて向かう必要がある」(電機連合)などの意見が出た。

答弁した本部の若松英幸事務局長は、「物価が上がるだけでは勤労者の生活は苦しくなるだけだ。消費税率の引き上げは所得が少なければ少ないほど打撃が大きい側面がある。賃上げが実施されてはじめて経済の好循環サイクルが機能することを経営側にも認識してもらう必要がある」などと述べた。

新議長に相原・自動車総連会長、新事務局長は浅沼・電機連合前書記長

役員改選が行われ、西原議長(自動車総連)が退任し、新議長に自動車総連の現会長である相原康伸氏が就いた。事務局長も交代し、若松氏(電機連合)に代わって浅沼弘一・前電機連合書記長が就任した。

なお、大会終了後には金属労協50周年を記念し、レセプションなどが開催された。金属労協は1964年5月に、当時の国際金属労連(IMF、現在のインダストリオール・グローバルユニオン)に加盟するための日本協議会(IMF-JC、設立時は4単産・2単組47万人)として結成され、同年11月にIMFに正式に加盟。その後、加盟産別によるJC共闘が、毎年の春闘で賃金交渉をリードしつつ、相場を形成するパターンセッター役となり、現在に至っている。