総合的見直しを地公には実施させない/自治労が大会で当面の闘争方針を確認
(2014年9月3日 調査・解析部)
地方自治体の職員を中心に組織する自治労(氏家常雄委員長、約83万人)は8月28日から2日間、大分県別府市で定期大会を開催し、当面の闘争方針や新たな政治対応方針を確認した。賃金の確定期に向け、今年の人事院勧告に盛り込まれた国家公務員の給与に関する総合的見直しに準じた賃金引き下げが実施されないよう、対政府、地方人事委員会対策に注力して取り組むとしている。
「今年の勧告は連合の成果を踏まえたもの」(氏家委員長)
挨拶した氏家委員長は、まず、今年の人事院勧告について触れ、7年ぶりにプラス勧告となったことに対し、「2014春闘で、連合が、あくまでも月例賃上げにこだわった成果を踏まえたものであると考える」とし、「決して満足いく数字ではないが、官民較差の大部分を俸給表への配分としたことは、一時金の勧告とともに、ぎりぎりの到達点と考える」と評価した。一方、併せて勧告された「給与制度の総合的見直し」については、「私たちはこの間、制度見直しについて幾度となく疑義を呈し、自治体職員の士気や組織活力の低下が懸念されることなどの問題点について、公式・非公式に指摘してきた」とし、「人事院が2012年の報告において、『給与構造改革における地域民間賃金の反映は、所期の目的を達成した』と自ら評価をしていたにもかかわらず、今回勧告を強行したことは、政府・自民党に迎合するもの以外の何物でもない」と人事院を強く批判しながら、引き続き実施見送りを求めていく意向を表明した。
今後予想される地方への影響について、氏家委員長は、8月に地方公務員の給与表も国と同様の引き下げが必要だと主張した総務省の「地方公務員の給与制度の総合的見直しに関する検討会」の中間報告に対して、「われわれとして到底納得いくものではない」と主張。「多くの自治体で地域手当が支給されていない実態からしても、国と同様の見直しを行うことには大きな問題がある」と強調した。
見直しは地方公務員にとっては給与の引き下げに
今年は中間年の大会にあたるため、当面の闘争方針を本部が提案し、確認した。方針の柱は、「自治体確定闘争の推進」や「公務員制度改革、職場の権利と勤務条件を確立する取り組み」など。
自治体確定闘争では、氏家委員長が挨拶のなかで触れたように、8月7日に出された人事院勧告への対応が中心となる。人事院は、月例給と一時金を引き上げる勧告を行った一方で、一部の地域で給与の官民格差がある(官の方が高い)として、俸給表の平均2%引き下げと地域手当の級地区分および支給割合の見直しなどを勧告した。自治労は、国家公務員の場合は給与配分の見直しで済んだとしても、地方公務員の場合は地域手当が支給されていないことから、単純に給与引き下げに繋がると警戒する。
方針は、国に対しては公務員連絡会との十分な交渉・協議を行い、総合的見直しの実施を見送ることを求める一方、地方自治体の人事委員会対策としては、安易に国の追随することなく各地域の公民比較に基づく報告・勧告を行うことを求めると明記。地方公務員の給与を、公民比較に基づかずに引き下げることは実施させないとしている。
2014確定闘争に向けては7項目からなる取り組みの柱を示した。具体的には、月例給の水準を引き上げること、総合的見直しに準じた賃金水準の引き下げを実施させないこと、臨時・非常勤等職員の賃金を改善することなどをあげ、賃金では、30歳、35歳など年齢ごとに設定した到達目標の達成をめざす。
運動面では、連合の公務員連絡会に結集し、9月に賃金闘争交流集会を実施するほか、総務省交渉などを実施する。対自治体賃金確定闘争のヤマ場を11月17日の週を基準に設定するとしている。
新たな政治対応方針も確認
大会ではまた、「新たな政治対応方針~『自由・公正・連帯』の日本社会をめざして~」を確認した。対応方針は、今後想定される複数回の国政選挙を念頭に置きつつ、中長期的な政治への対応方向を示すもの。
対応方針は、現在の政治状況について、「国会が全体的に右傾化した一方で、国民多数派の政治意識に対応した政治勢力が形成されていない」ことが重大な問題点だと指摘し、従来のリベラル勢力を再建・強化することに加えて、「中道」「リベラル」な政治勢力を結集させることを提言する。
自治労の対応としては、協力政党を中心に、中道、リベラル勢力の結集を進め、政権を担いうる政治勢力を形成することを当面の戦略目標とする一方、連合や政策において一致できる市民団体・NPOなどとともに、新たな政治勢力の結集に向けて中央、地方で積極的に対応するなどとしている。