2014春季生活闘争総括を確認/JAMの定期大会

(2014年9月3日 調査・解析部)

[労使]

金属・機械関連の中小企業労組を多く組織する産別労組のJAM(眞中行雄会長、約36万人)は8月28日から2日間、静岡県熱海市で定期大会を開催した。2014年春季生活闘争総括を確認するとともに、2015年度活動の補強方針を決めた。春闘の最終結果では、過去10年間で、要求、回答、妥結ともに最も高い金額となった。

賃金改善・ベア獲得した560単組の平均額は1,499円に

眞中会長が手術後のリハビリテーション中であることを理由に大会を欠席したため、大会主催者としての挨拶は藤川慎一副会長が行い、眞中会長が予定していた挨拶文を代読した。

2014春闘について、「これまでの企業業績の後追い春闘から、景気回復への先行投資的な意味合いも踏まえながら、物価上昇局面に加え、消費税増税を控えた環境下での取り組みとなった。改めて、春闘の意義と共闘の重要性を強調しながら、統一要求日には過去最高の43.1%が要求するスタートが切れた」と振り返り、結果については、「特に2014年はベア要求の効果もあり、平均賃上げで4,967円、前年比767円の増加となり、560単組では、改善分(ベア含む)として1,499円を獲得した。中堅・中小もほぼ同じような改善分であり、大手を中心とした先行組合の相場形成と中小の粘り強い交渉が展開された成果だった」と評価した。

一方、来年の春闘に向けては、「問題は、『2014年春闘は入口であり、2015年春闘をいかに組織するか』だ」と強調。「消費税増税の影響やガソリン代の高騰など物価上昇が確実になるなか、われわれの要求根拠、よりどころをどこに置くのかが議論になる。労働組合は組合員の生活を守ることはもちろんのこと、経済環境や企業業績などを総合的に勘案し、従来にも増して注目されるなか、社会的責任を果たしていく必要性が高まっている」と述べた。

相場形成も含め、一定の社会的責任果たす

大会で確認した2014年春季生活闘争総括によると、6月20日までの集計で、平均賃上げの要求額は7,624円、回答額は4,930円で、妥結額が4,967円となっている。同一単組で前年と比較すると、今回の要求額は前年を2,346円、妥結額は767円上回る。要求額、回答額、妥結額ともに、2004年以降でもっとも高い水準となっている。

賃金改善・ベアの獲得状況をみると、賃金構造維持分を明示することができる938単組のうち、賃金改善分を要求したのは853単組(53.5%)。獲得できたのはそのうちの560単組(35.2%)で、改善・ベア分の平均は1,499円となっている。この10年間で最も高い回答額を記録した2008年と比べると、改善・ベア分を獲得した単組の数も、獲得額も、同年を上回っている。また、1~99人規模の組合でも、改善・ベア分の獲得額は1,500円台を維持しており、中小組合の健闘が見て取れる。

こうした結果から、総括は、主な成果として、 (1) 物価上昇分と生活改善分のベア要求を軸とする共闘の効果があった、 (2) 従来から取り組まれてきた賃金実態の把握に基づく賃金是正・改善の取り組みが進んだ、 (3) 大手先行組合による相場形成も含め、JAMとしての共闘の結果をマスコミを通じて発信する機会が増え、一定の社会的責任を果たした――ことをあげた。

物価上昇分が「ある程度され、回答もあった」のは約4割

一方、問題点と課題に関しては、賃金構造維持分を超える有額回答を得た場合のその中身(ベアか是正か、どういう是正か配分か、など)の実態把握や、賃金是正・改善要求に対する経営の理解が不十分であることなどをあげた。JAMが主要単組に行ったアンケートによると(約300単組が回答)、物価上昇分について「ある程度理解され、回答もあり」との回答が42.2%あった一方、「理解されたが回答は反映なし」は34.6%にのぼり、「全く理解なし」も11.0%あった。税制改善については、「ある程度理解され、回答もあり」が49.0%、「理解されたが回答は反映なし」が23.0%で、「全く理解なし」が6.1%だった。

昨年の大会から、50万組織を目指す中期的拡大目標である「アタック50」をスタートさせたが、初年度(2014年度)の組織拡大実績は26組合、2,249人にとどまった。ただ、2013年度の拡大実績が10組合、274人だったことから、前年に比べれば大幅な実績拡大となった。この1年間で新規加盟した主な組合には、島津メディカルシステムズ労働組合(379人)、三共製作所労働組合(352人)、コマツ産機ユニオン(335人)、KYBモーターサイクルサスペンション労働組合などがある。また、製造業ではない業種から、日本マクドナルドユニオン(3支部の合計で114人)が加盟した。JAMでは、2015年度までには、2万人以上の組織拡大を目指すとしている。

企業組織再編対応マニュアルの一部リニューアルを

補強した活動方針では、組織強化を目的として、全国で105ある地協の活動強化の取り組みや、執行部の若返りも進んでいることなどから、地協担当オルグによる単組への労働運動・組合活動の指導強化などを盛り込んだ。

2008年に作成した企業組織再編対応マニュアルの一部リニューアルも行う。JAM加盟の単組の労組では、あるグループ企業が、企業ごとに株を低比率で市場で買い進め、株式保有がグループ全体で30%を超えた時点で筆頭株主として姿を現し、企業買収がなされた後で労働協約を破棄されたり、組合員が出向・転籍させられるという事案が発生したという。方針討議のなかで、JAM大阪の代議員は、自らが所属する地協でも、同じの企業グループによって別の加盟単組の企業の株が買い進められる事案があったことを報告。この単組の企業では、今春闘で、企業業績が昨年より改善しているにもかかわらず、一時金は昨年を下回る回答が示され、単組の交渉だけでは妥結に至らず、地協をあげて取り組みを展開したと同代議員は報告した。最終的には、事前労使協議制を確立するなど前進があったという。同代議員は、「企業組織再編対応マニュアルの更新時には、全国でこうした問題に対応できるように、こうした単組の取り組みの経験を活かして欲しい」と本部に要望した。