「150万全労連」をめざす/全労連定期大会

(2014年7月30日 調査・解析部)

[労使]

全労連(大黒作治議長、約82万人)は7月27日から3日間、都内で定期大会を開き、向こう2年間の運動方針を決めた。方針では、前回大会で確認した「組織拡大中期計画」の中間到達点を確認するとともに、「150万全労連」への接近に向け、すべての組織で10%の純増を求めた。役員改選では、大黒作治議長が退任し、新議長に小田川義和事務局長(国公労連)が選出された。

組織拡大が最優先の取り組み課題

向こう2年間の運動方針は、(1)労働法制改正反対、社会保障改正反対闘争と結んだ「全労連大運動」の継続(2)「かがやけ憲法署名」を軸とする憲法闘争の強化(3)「組織拡大中期計画」への目標達成に向けた取り組み強化――を柱にすえた。

第1の「全労連大運動」(安全・安心社会をめざす大運動)は、前回大会で提起されたもので、大企業中心、経済効率重視の社会から、働いて人間らしく暮らせる社会への転換をめざすもの。今後2年間は、雇用改革や税と社会保障一体改革に反対する国民的運動を広げるため、憲法と国際労働基準に依拠した「安定した良質な雇用と社会保障を中心におく日本」をめざす世論を高めていく。

第2の憲法闘争の強化は、憲法を守りいかす取り組みが、労働者と国民の権利侵害、攻撃を食い止めるたたかいと位置づけ、「闘争本部」を設置。職場や地域での憲法学習を強化し、自治体などの団体に要請を行う「かがやけ憲法キャラバン2014」を今秋に実施し、全国的な取り組みへと広げる方針だ。

第3の組織拡大については、最優先の取り組み課題と位置づけ、前回大会で打ち出した「組織拡大中期計画」(2012年~2016年)を補強し、「150万全労連」への確かな道筋を切り開く取り組みを進める。全労連の集計では年金者組合も含め組合員数は109万9,386人で、前年より1万3,715人の純減となる。医労連など一部の単産は純増したが、自治労連や全教では団塊の世代の大量退職分を埋め合わせることができず、全労連としては減少傾向に歯止めがかかっていない。

大黒議長は、冒頭のあいさつで、「この1年間で11万人以上の組合員の拡大につなげ、実数でも減少傾向に歯止めがかかる時点にさしかかってきた。1日も早く増勢に転じよう」などと訴えた。

具体的には、残り2年間で「150万全労連」に接近するために、すべての組織が10%純増に全力を注ぎ、増勢に転じることをめざす。単産と地方組織の連携による組織化運動を強化し、地域・業種・職種などに焦点を絞った「総がかり作戦」による組織化を急ぐ。最重点分野と位置づけられた介護・ヘルパー分野では、介護労働者の専門性に相応しい処遇の実現を求める運動とも連携した組織拡大運動を全国に広げる方針で、14年はそのモデルづくりをすすめる。そのほか、労働相談活動からの組織化を加速させるため、オルグ養成講座などでの実践例の交流を深める。また、次世代の組合活動家を育成するための、「全労連・初級教育制度」を来春からスタートし、2,000人の受講をめざす。

雇用の安定をめざす

方針の重点課題をみると、雇用の安定をめざす取り組みでは、労働者派遣法改正、労働時間適用除外制度の導入など、雇用改革に反対する取り組みを強化する。9月を「なくせブラック企業、若者にまともな雇用を!」キャンペーン月間として宣伝行動を繰り広げるとともに、12月に「労働相談ホットライン」と連動した「ブラック企業告発110番」の具体化など、若者雇用アクションの取り組みを進める。そのほか、電機産業などでの大規模事業所撤退に伴うリストラ攻撃への反撃を強めることなどをあげる。

一方、賃金と労働時間では、「すべての労働者の賃金改善こそ内需拡大」との世論づくりを継続し、横並びの賃金改善の場としての春闘の活性化をめざすほか、地域間の賃金格差の是正の取り組みとして地域最低賃金の引き上げ、全国一律時給1,000円以上の実現を求める取り組みの継続、労働時間規制緩和に反対し、「8時間労働原則」の堅持、「ただ働き残業根絶キャンペーン」など労働時間短縮の取り組みの強化、「過労死等防止対策推進法」を活用した職場の取り組み強化などを重点課題とした。

賃上げは2%台を確保

大会では14春闘も総括した。全労連や中立労組からなる国民春闘共闘は14春闘で、「時間額120円(率換算12%)以上、月額1万6,000円(同5%)以上」を統一要求に掲げ、「ベア要求」「ベア獲得」にこだわる交渉を重ねた。

最終となる第8回賃上げ集計(7月3日時点)では、登録854組合の6割強にあたる544組合が回答を引き出しており、前年同期(2013年7月5日、520組合、60.1%)に比べ24組合増えている。うち金額・率回答を引き出した403組合の単純平均(一組合あたりの平均)は5,739円(2.02%)で、前年同期を427円(0.14ポイント)上回っている。一方、組合員一人あたりの加重平均では6,174円(2.09%)となり、こちらも前年同期を247円(0.10ポイント)上回る結果となった。小田川事務局長は、「第1回からの回答状況を時系列でみると、第2回の集計時を除き、右肩あがりの状況となったのが今春闘の特徴」と振り返る。

一方、パート・アルバイトについては、時間額の引き上げ回答があった189件の単純平均は25.2円で、前年同期(24.4円)を0.8円上回る。日額では22組合平均で212円(前年同期133.1円増)、月額では60件平均2,783円(同895円減)となった。

以上の状況を踏まえ、14春闘については、「すべての労働者の賃金改善にこだわり成果をめざす組合の増加を反映している」(小田川事務局長)と総括。その上で、「(横並びの賃金改善を実現した14春闘が)ベアは論外という職場の雰囲気を払拭する転機となり、春闘への確信を深めた職場の広がりが確認できた」「春闘当初から、パートの時給引き上げを求める労働組合の増加がうかがえ、すべての労働者の賃上げにこだわる組合の増加が全体の到達点をひきあげた」ことなどを14春闘の到達点として確認した。

役員改選では、大黒作治議長が退任し、新議長に小田川義和氏(全労連事務局長、国公労連)、新事務局長には井上久氏(全労連事務局次長、日本医労連)がそれぞれ信任投票で選出された。なお、議長候補には当初、神奈川労連の水谷正人氏(神奈川労連議長)が立候補していたが、提出していた修正案が幹事会で検討されることなどを受け、大会討論終了時に立候補の取り下げを表明した。