日本再興戦略に対する連合見解を確認

(2014年7月18日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は17日、中央執行委員会を開き、政府が6月24日に閣議決定した「日本再興戦略」改訂2014(「再興戦略2014」)と「経済財政運営と改革の基本方針2014」(「骨太方針2014」)について、政府方針の課題や問題点を整理した連合の考え方を確認した。見解では、労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した「新たな労働時間制度」の創設について、成果のみ求められれば、対象労働者の長時間労働が助長されることは明らかとして、容認することができないとの考えを示している。今後、見解を踏まえ、連合は国会や審議会、予算編成などに対応する方針だ。

「新たな労働時間制度」は容認できない

連合は、「再興戦略2014」について、「企業や投資家の目線にたち、一部の業界やその関係者の要望に沿う形でとりまとめたもの」と批判。「いま行うべきは、劣化した雇用の立て直しを日本再興の中心に据え、格差社会に歯止めをかけ、ボトムアップを通じて経済の好循環を回していくこと」との考えを示した。

とくに、政府が「一定の年収要件(例えば少なくとも年収1,000万円以上)を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者」を対象として、「労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した『新たな労働時間制度』を創設する」としていることについて、「こうした制度が創設された場合、労働時間に関する基本的かつ最低限のルールの保護さえ受けられなくなるために、成果のみ求められれば、対象となる労働者について更なる長時間労働を助長することになるのは明らか」と指摘。ワーク・ライフ・バランスに反し、過重労働による精神疾患や過労自殺、過労死などの健康・安全を害する事態を招く制度を容認することはできない、としている。連合は、すべての労働者を対象とする「勤務間インターバル規制の導入」や「労働時間の量的上限規制の法定化」といった長時間労働防止策や、実効的な休日・休暇の取得促進策を講じるべきとしている。

また、政府が「企業の中核部門・研究開発部門等で裁量的に働く労働者」を対象として「『裁量労働制の新たな枠組み』を構築する」としている点についても、「裁量労働制の新たな枠組み」の構築や既存の裁量労働制の見直しは、「長時間労働防止や対象労働者の健康確保の観点から、適正な労働時間管理や健康・福祉確保措置の充実等こそ措置されるべき」として、対象者の安易な拡大等は行うべきではないと主張している。

「解雇の金銭解決制度」の導入に断固反対

見解では、政府が「透明で客観的な労働紛争解決システム」を構築するとして、「解雇の金銭解決制度」(金銭救済ができる仕組み)を導入しようとしていると指摘。政府が裁判所の協力のもと労働審判や裁判における和解事案での解決金額等の分析・整理を行うとしている点についても、非公開とされている労働審判などの記録を行政府が閲覧する場合の法的根拠に対する疑問や、解雇事案の解決金額の水準が事案の内容によって相当幅があることから、平均値の算出などを行う場合に本質を見誤った分析となるおそれが高いなどの問題点にも言及。連合としては、「解雇の金銭解決制度」や導入議論の進め方について、「労働者の救済手段の多様化をはかること等を名目に解雇ルールの緩和をはかろうとする『解雇の金銭解決制度』の導入には断固反対する」との見解を示した。

女性の活用には性別役割分担意識や働き方の見直しが重要

このほか、政府が外国人技能実習制度について、「対象職種の拡大、技能実習期間の延長(最大3年間→最大5年間)、受け入れ枠の拡大」などを見直そうとしていることについては、本来、開発途上国などの経済発展を担う「人づくり」に協力する国際貢献を目的としている本旨に立ち返った制度の適正化に向けた施策こそ講じるべきとし、「職種・作業ごとに最低年収基準を定める」べきだとしている。また、「再興戦略2014」での女性の活用については、「性別役割分担意識等の性差別意識の是正、そして格差是正の観点」が欠けていると批判。性別役割分担意識や働き方の見直しが重要との考えも示した。