新人事・給与制度や要員確保などを議論/JP労組定期全国大会

(2014年6月25日 調査・解析部)

[労使]

日本最大の単一労組である日本郵政グループ労働組合(JP労組、組合員約24万人)は18、19の両日、名古屋市で定期全国大会を開き、2014年度の運動方針を確認した。来春以降の株式上場の準備が進められるなか、2014~2016年度までの中期経営計画の進捗確認や、今年4月から一部が実施されている「新たな人事・給与制度」の導入状況のチェック、将来を見据えた必要労働力の確保などを重要課題に掲げた。組織拡大では、25万人早期達成に向け、正社員や期間雇用社員の加入率引き上げなどの取り組みを強化する。

中期計画の確実な実行をチェック機能発揮で将来の成長戦略に繋げる(小俣委員長)

日本郵政グループは今年2月、2015年度の株式上場をめざすとして、「日本郵政グループ中期経営計画~新郵政ネットワーク創造プラン2016~」を公表した。同プランは、2014~16年度の実行計画として策定されたもので、今年は3カ年計画の初年度となる。

小俣利通委員長はあいさつで、「中期経営計画の初年度として、JP労組のスタンスに基づき、計画の推進を確実に実行させ、労働組合のチェック機能を最大限発揮し、将来の成長戦略にどう繋げていくかの重要な取り組みになる」と強調。「株式上場に向けた準備が進められていく過程において、組織の活性化・再構築による組合員の重心力を高めることにより、郵政グループの持続的な成長・発展に向けた取り組みを強化する」と述べたうえで、人事・給与制度と労働力政策(局所等別所要人員数)への対応や、30万人組織をめざすことなどに取り組むことを表明した。

写真・小俣利通 JP労組委員長

投資計画が「人への投資」の阻害要因にならないよう見極める

中期計画は、経営の基本コンセプトとして、 (1) 主要三事業の収益力と経営基盤の強化 (2) ユニバーサル・サービスの責務の遂行 (3) 上場を見据えたグループ企業価値の向上――の3つの柱を策定。グループ総額で約1兆3000億円の投資を行うとしており、具体的には、郵便・貯金・保険の各事業の基幹システムの更改・改修やグループ各社の共通インフラ基盤の提供、郵便・物流ネットワークの再編、郵便局ネットワークの最適化などへの投資を予定するほか、「ヒト」への投資として、人材育成を軸にグループの成長をめざすことも盛り込んでいる。

これに対するJP労組のスタンスは、 (1) 将来の収益を生み出す投資については、積極的に行う (2) 過去に行ってこなかった設備投資は、その必要性と重要性を加味して、明確な優先順位をつけて行う (3) 聖域なき改革によりさらなる体質改善を図る④「風通しの良い職場づくり・企業風土改革」を積極的に推進する⑤投資計画が組合員の処遇改善、「人への投資」の阻害要因にならないか慎重に見極める――としており、方針は「今後もこのスタンスを堅持して対応する」としている。

新人事・給与制度の導入状況を注視し、職場意見を踏まえた対応を

日本郵政グループは現在、「新たな人事・給与制度」の導入を進めている。新制度では、役割を基軸としたコース別の人事体系を設定。それに伴い、原則、勤務地や職務内容が限定される「(新)一般職」の働き方を新設する。また、給与制度では基本給に毎年の査定で昇降する成果給部分を盛り込むとともに、査定については賞与や退職金にも反映する仕組みにして、中長期的な報酬にもメリハリをつけることなどが柱になっている。

今年4月からは、 (1) コース制への移行と、それに基づく人事評価(4~6月で試行) (2) (新)一般職への登用 (3) 日本郵便の業績手当・営業インストラクター等の営業指導手当・窓口事務繁忙局加算額の見直し――を実施している。

方針は、こうした導入の状況を注視しつつ、「地本書記長会議での議論を行い、職場の意見を踏まえた対応を進める」とした。さらに、来年度からは、 (1) 新たな給与への移行 (2) ポイント制退職手当制度への人事評価の反映――など新制度の本格実施が予定されていることから、「継続課題の交渉を強化する」としている。

(新)一般職に4,704人が登用

こうした改革に伴う各局所などの業務運行に必要な労働力(所要人員)の確保も、重要な交渉課題となっており、これまでの要求交渉により、要員算出の考え方と算出方法などの基準の概略が明らかにされている。大会では、その内容について算出根拠から漏れている項目や職場実態にそぐわない項目などの基準の明確化を求める意見集約を行った。今後、大会議論を踏まえた交渉を展開。その結果については、2016年度の採用計画に反映できるよう、秋の中央委員会で一定の整理をはかる。その後、 (1) 必要な労働力確保に向けた道筋を明らかにさせる (2) 今後の労使協議ルールの具体化に向けた議論を深める――などの対応を進める方針を示している。

なお、(新)一般職については、期間雇用社員6144人が応募し、4704人が登用されている。これに加えて、2014春闘では、3月末の退職者数と正社員の新規採用者数を踏まえ、とくに要員確保が困難と思われる地域について、2014年度中の(新)一般職(郵便外務)の中途採用を行うことで決着。現在、採用規模やスキーム、スケジュールなどについて最終調整を行っているという。

30万組織達成に向け、当面25万人をめざす

一方、組織拡大に関しては、30万組織達成に向けた当面の取り組みとして、まずは25万人組織の早期達成をめざす方針を打ち出している。そのためには、「組織加入率で正社員93%、期間雇用社員40%を意識した組織行動を展開することが重要」と指摘。今後、未加入エリアや加入率の低い職場、期間雇用社員未加入者の組織拡大行動を強化するとともに、社員出向などで組合員が存在するグループ関連子会社の組織化にも取り組む。

このほか、政治基盤の強化に向けた対応も確認。大会では、「株式上場後の日本郵政グループの成長・発展にはさまざまな政治対策なども想定され、組織内議員の活動は極めて重要」(小俣委員長)として、次期参議院選挙の候補者擁立について、現組織内議員の難波奨二参議院議員を擁立するための組織内調整を進める方針を明らかにした。秋の中央委員会で正式に組織決定する。