給与制度見直しに備えて統一行動を展開/自治労の当面の闘争方針

(2014年5月30日 調査・解析部)

[労使]

地方自治体職員などを組織する自治労(氏家常雄委員長、約83万人)は27、28日の両日、宮城県仙台市で中央委員会を開催し、当面の闘争方針などを決定した。また、中長期的な政治の対応のあり方を示す「新たな政治対応方針」の組織討議案を確認した。当面の闘争では、公務員の給与制度を総合的に見直す動きに対する取り組みを強化し、人事院への要求提出や、中央・地方が一体となった行動を進めるとしている。

「政府が自律的労使関係制度確立に消極的なことは明らか」(氏家委員長)

あいさつした氏家委員長は、4月11日に可決・成立した国家公務員法改正案について、自律的労使関係制度は盛り込まれなかったものの、同制度に関する「職員団体と所要の意見交換を行いつつ、合意形成に努めること」との附帯決議を伴って可決・成立したことから、「(衆議院で自公民の3党が合意した附帯決議の内容の)趣旨を大きく変えることなく成立に至ったことは一定評価できる」と述べる一方で、「政府が自律的労使関係制度の確立に消極的なことは明らかだ」と強調。「引き続き、ILO対策や国会・省庁対策を強化していく」と述べた。

また、4月25日に成立した地方公務員法改正案について、「地方公務員の政治的行為を制限しようとする一部の政治的な動きもあった」とし、「公務労協とともに、民主党の意思統一や公明党などへの働きかけを不断に行った結果、そうした動きに歯止めをかけた」などと、最近の国会の動向を紹介しながら、「猛威をふるう新自由主義勢力や新保守主義的な勢力は、引き続き公務員、とりわけ自治労や日教組をターゲットに、公務員の権利抑制、総人件費抑制の政策を推し進めようとすることは明らか。今後も常に警戒をしながら運動を展開していく必要がある」と強調した。

給与制度見直しは「地域経済へのマイナス効果」や「地域間格差の拡大」につながる

一方、人事院が実施を表明している公務員の「給与制度の総合的見直し」に対しては、「政府・自民党の要請を踏まえて、民間賃金の低い地域をピックアップする手法で恣意的に官民格差を作り出し、地域で働く公務員の賃金を引き下げようとするもの」と批判。「地域経済へのマイナス効果、地域間の格差拡大の視点からも認められるものではない」と訴えた。

今回決定した当面の闘争方針は、人事院が昨年8月の人事院報告のなかで実施を表明した国家公務員に対する「給与制度の総合的見直し」に対する取り組みなどが柱となっている。人事院は、「社会経済情勢の変化や公務における職員構成の高年齢化などの官民の状況を踏まえると、一層の取組を進めるべき諸課題が生じてきている」(人事院総裁談話)として、同報告のなかで、こうした課題への対応策として、地域間・世代間での適正な給与配分を進めると同時に、俸給表構造や諸手当のあり方を含めた給与制度の総合的な見直しの検討を提起した。昨年11月の人事院総裁による談話は、「給与制度の総合的見直し」について、「検討を早急に進め、必要な勧告を行っていく所存」としており、労働側は今夏の人事院勧告で何らかの給与制度見直しの勧告が出されると想定する。

自治労では、国家公務員における人事院勧告が2015年4月に実施されることになれば、「地方自治体での人事委員会でも同様の勧告がなされるのは確実だ」として、「(連合の)公務員連絡会の諸行動に積極的に参加するとともに、人事院・政府に対し、「見直し反対」の意見を反映していくため、中央・地方一体的に取り組むとしている。闘争方針は、人事院に対して、人事院勧告が発表される夏までに要求書提出や要請行動・集会、全国統一行動などを実施していくとしている。

給与制度の総合的見直しの問題として自治労は、「国家公務員の場合は、地域間配分の見直しを実施したとしても、給与の全体原資の配分が変更となるのに対し、地方公務員の場合は、配分の見直しではなく賃金水準の低下に直結することになる」(氏家委員長)と指摘。また、地方の民間労働者では公務員給与を参考にして賃金決定が行われているケースも多いとして、「地域経済にもマイナス効果」があると非難している。

新たな政治対応方針の組織討議案を提示

中央委員会ではまた、「新たな政治対応方針~『自由・公正・連帯』の日本社会をめざして」の組織討議案を提示し、確認した。自治労は、昨年の大会で確立した運動方針で、「『保守勢力』『新自由主義勢力』への対抗軸となる政治勢力の総結集が必要」とし、「『共生と連帯に基づく持続可能な社会』をめざす政治勢力を、民主党を中心に再構築することをめざす」ことを打ち出しており、昨年10月に「政治委員会」を発足させて、今後の中長期的な政治への対応についての検討を重ねていた。

組織討議案は、「安倍自民に対抗するためには、『中道』『リベラル』政党や政治勢力が統一対応を取ることが必要となる」と指摘。「民主党が担うべき役割は重要となる」としながら、「同時に、社民党をはじめとする政党との連携を積極的に進め、『リベラル』勢力の強化をはかりつつ、国民意識の多数派に対応した『中道』『リベラル』の結集を進めるよう求めていく」と記述。自治労としては、そうした勢力の結集を進め、政権を担いうる政治勢力を形成することを当面の戦略目標とするとし、また、「連合や、理念や政策において一致できる市民団体・NPOなどとともに、新たな政治勢力の結集に向けて、中央・地方で積極的に対応する」などとしている。

氏家委員長はあいさつで、「自民党『一強他弱』のもとで安倍政権が繰り広げる強権的・暴走政治を何としても食い止めなければならない」「もはや、自治労として、『民主党だ』『社民党だ』と言っている、そんな悠長な状況ではない」などと述べた。