99年の結成以降で最高のベア額獲得/JAMの今春闘中間総括
(2014年5月28日 調査・解析部)
金属・機械関連の中小労組を多く組織するJAM(眞中行雄会長、約36万人)は27日、福島県福島市で中央委員会を開催し、今春闘の中間総括を確認した。これまでの回答状況をみると、1999年のJAM結成以降で最高のベア額の獲得となったとともに、300人未満の組合でも獲得したベア額の平均が1,500円台を維持していることなどから、産別内での「共闘の効果があった」などと総括した。
平均妥結額は5,072円
今春闘でJAMは、賃上げ(ベア・賃金改善)の要求基準として4,500円を掲げた。ここまでの交渉状況をみると、5月18日現在での妥結率は63.6%で、2011年以降で最も高い進捗率となっている。また今年は、「ベア要求をしているため、粘り強い交渉を例年以上に展開している結果」(藤川副会長)、回答を得ているものの、妥結に至っていない組合の割合が例年よりも高い。
18日現在の平均賃上げでの要求・回答状況をみると、要求、回答、妥結とも2004年以降でもっとも高い金額となっており、妥結額の平均は5,072円。同一組合で前年と比べると794円増となっている。300人未満の組合だけでみても妥結額は4,825円で、同一組合で前年と比べると764円高い水準となっている。
中小でも1,500円台のベアを獲得
賃金構造維持分と、賃金改善やベアを明示できる組合で、回答を引き出している組合の賃金改善分の平均額をみると、1,519円(521組合)となっており、過去2年の獲得額(2013年=1,080円・143組合、2012年=976円・180組合)を大きく上回った。ベア獲得は100~300人未満、100人未満の組合でも1,500円台を維持しており、中間総括は「規模間の格差がほとんど感じられない」としている。
なお、賃金構造維持分が明示できない組合の回答額の平均をみると、3,900円をやや下回る水準となっており、賃金構造維持分確保だけだった組合の賃上げ回答額(4,400円程度)と比べても差がある。今回の100人未満の要求組合で、賃金構造維持分を把握していない組合は3分の1程度あったが、JAMの藤川慎一副会長は中間総括の提案時に「自分の賃金構造がわかっていないとやはり交渉にならない」と述べた。
「ベア要求を軸とする共闘の効果があった」(中間総括)
これらの回答状況から中間総括は今春闘の主な成果について、まず、組合数、金額ともJAM結成以来最高のベア獲得となったことや、企業状況だけによらない賃金改善の獲得が進んだことなどから、「物価上昇分と生活改善分のベア要求を軸とする共闘の効果があった」とした。また、賃金構造維持分とベアの内訳表示が進んだことなどを理由に「従来から取り組まれてきた賃金実態の把握に基づく賃金是正・改善の取り組みが進んだ」と評価した。
一方、問題点と課題については、賃金維持構造分を超える有額回答を得た場合に、ベアか是正分かなどその中身について、「JAMとして実態把握を進める必要がある」とした。そうした情報の蓄積から中小組合の取り組み強化につなげるとともに、賃金データの把握ができていない組合での具体的な取り組みを進める必要があるとしている。
「生活防衛の観点からは課題を残した」
また、中間総括は、統一闘争という枠組みを踏まえながら「賃金の絶対額水準を重視する、個別賃金の取り組みの一層の強化が必要である」とした。今回のベア獲得額が過年度物価上昇率(総合指数で0.89%)を満たさなかったことについては、「生活防衛という観点から課題を残した」と記述した。
あいさつした眞中会長は今春闘について、「ベアに真正面から取り組むのは2001年以来、賃金改善としても5年ぶりの要求方針となり、当初は一部に不安を訴える声もあった。そのため、オルグ活動に積極的に取り組む必要があると判断し、1、2月に全国を6つのエリアに分け、春闘の意義や経営分析の仕方などを研修するためにオルグに入った。この成果もあって統一要求日の要求提出率が43%と結成以来最高の状況となった」と振り返りながら、来年以降について、「2015年は今年に比べてさらに情勢の厳しさが増すだろう。今後のオルグ活動では今次交渉を評価・点検することを企画しており、回答内容がどうであったのか、交渉でどこが争点となったのかなどについて分析して、2015年に備えたい」と述べた。
中央委員会ではこのほか、2015年度活動方針骨子などを確認した。
▽2014年春季生活闘争状況報告No.18/JAM(ものづくり産業労働組合)ホームページ