トヨタ労組は4,000円の改善分を要求/自動車メーカー労組が一斉に要求提出
(2014年2月14日 調査・解析部)
トヨタや日産、本田技研などの労働組合を含む自動車総連の拡大戦術会議登録組合(12組合)は12日、今春闘の要求書を一斉に経営側に提出した。拡大戦術組合の多くの組合が賃金改善額として3,500円(組合員平均)を要求。トヨタ労組は、7,300円の賃金制度維持分に4,000円の賃金改善分を上乗せした1万1,300円(同)を要求した。
自動車総連の拡大戦術会議登録組合は、トヨタ、日産、本田技研、マツダ、三菱自工、スズキ、ダイハツ、富士重工、いすゞ、日野自動車、ヤマハ発動機の各大手メーカー組合と、サプライヤーの日本発条の組合で構成する。拡大戦術組合は同日以降、足並みを揃えて毎週水曜日に経営側と交渉し、3月12日に統一して回答を引き出す。
各組合の要求内容をみると、トヨタ労組は、平均賃上げで1万1,300円(うち賃金制度維持分が7,300円)を要求し、一時金は年間で6.8カ月を求めた(昨年の要求は5.0カ月+30万円)。日産労組は、賃金制度上、賃金制度維持分の算定が困難なため、賃金改善分のみの切り分けができないが、「平均賃金改定原資」として9,500円を要求する。一時金は、昨年要求より0.1カ月分多い年間5.6ヶ月を要求した。
4輪・2輪メーカー9組合の改善要求は3,500円で足並み揃う
本田労組は、賃金改善分として3,500円(組合員平均)を要求する。ホンダでは、賃金カーブ維持分は労使確認されているため、組合側は要求には盛り込まない。一時金は「年間5.0+0.9カ月」で、昨年と同様の要求月数となっている。
ヤマハまでを含めたこのほかの4輪・2輪メーカー9組合の賃金改善要求額は、すべて3,500円(富士重工は3,500円相当)で揃っている。拡大戦術組合で唯一のサプライヤー組合である日本発条労組の要求額は、「賃金制度改定原資」として9,450円。一時金の要求内容は、マツダが5.3カ月(昨年要求比0.3カ月増)、三菱自工が5.0カ月(同0.7カ月増)となっており、特に業績好調な富士重工、いすゞ、日野自動車の各組合の要求はそれぞれ6カ月となっている。
すべての拡大戦術組合が15年ぶりに一時金要求を5カ月以上に
自動車総連の拡大戦術組合すべてが賃金改善要求するのは2002年以来12年ぶりで、一時金においてすべての組合の要求月数が5カ月以上となるのは1999年以来15年ぶりだ。
12日午後に会見した相原康伸・自動車総連会長は、スタートした今次交渉について、「職場で生み出した高い付加価値に強い確信を持って、取り組みたい。ここ数年、血のにじむような努力がさまざまな職場で展開されてきている、『異次元の働き方』が自動車産業を支えてきたと言っても、言い過ぎではない。組合員の努力と、将来に向かうためのメッセージとなるような、新たな成長の糧となる節目の交渉としたい」と抱負を語った。
各自動車メーカーの収益状況をみると、2013年度決算見通しでは過去最高益を見込むメーカーもあり、軒並み業績は回復基調となっている。ただ、業績好調の一因には、円高是正や海外需要とそれに伴う海外生産が寄与していることもあげられる。相原会長は、この点と今回の交渉への影響について、「今回は、国内事業の再構築と国内雇用の安定化、国内で働くことでいかに競争力を強化していくかということを見出す重要な協議・交渉となる」とし、「為替は確かに、随分と是正されたが、職場の組合員の努力や働き方の変化などにより、同じ為替状況の場合の収益への跳ね返り度合いは高くなっている。この点は交渉・協議の場ではっきりさせたいところだ」と強調した。また、「経営側は、国内基盤の重要性を認識しているし、国内で働く組合員にも期待を寄せていると理解している。グローバルで生んだ付加価値をいかに配分するかを決めるのはあくまで経営側であるが、日本の職場が生み出した付加価値から目を背ける経営者はいないと思う。交渉・協議で経営側のこの態度が明らかになることを期待する」などと述べた。