2014、15年度ともに3,500円の賃上げ要求を決定/基幹労連の2014春闘方針
(2014年2月7日 調査・解析部)
鉄鋼、造船重機、非鉄関連の労働組合で構成する基幹労連(約25万人)は5日、都内で中央委員会を開催し、2014春闘方針である「AP14春季取り組み方針」を決定した。今回も2年を1つの単位とした労使交渉になるものの、2014、2015年度の両年度で、定昇相当分を確保したうえでの賃金改善を求めることにし、改善額は両年度ともに3,500円を基準に据えた。
挨拶した澤田和男委員長代行は、経団連の「経営労働政策委員会報告」(経労委報告)で示された経営側の春季労使交渉に向けたスタンスに触れたのち、「基幹労連加盟組合における過去の交渉でも、賃金の引き上げについては、賃金の下方硬直性から固定的・構造的コスト増となり、国際競争力の面から応じられないとして否定的な主張を繰り返してきた経営側だ。その思いは今も基本的に変わっていないと思う」との見解を示したうえで、「しかし、今次交渉においては、従来の延長線上での対応ではデフレからの脱却や、安定した日本経済の成長という労使に求められている社会的命題・使命に対して結果を出すことはできない」と主張。「日本全体で働くものすべての賃金の底上げが求められている。そのことを十分踏まえた経営側の対応を求めていかなければならない」と呼びかけた。
基幹労連では2006年の労使交渉から、2年に一度、2年分の賃上げを要求し交渉する、いわゆる「隔年春闘」を全13部門で採用している。2014年は、2年ぶりに賃金について交渉する年に当たり、今回の交渉でも、2014年度と15年度の2年を1つの単位として取り組む。
平均方式は基準内の2%相当を目安に
賃金に関する取り組み方針をみると、まず、制度的な定期昇給を持っている組合は、その実施及びその確認、または定期昇給相当分を確保する。制度未確立・未整備の組合は、制度化や整備に取り組む。制度が未確立または未整備の状態で交渉に入る組合は、2014、15年度の定期昇給額または相当額・率について、標準労働者(35歳・勤続17年)を基準とする場合は3,700円(年功要素のみ)とし、平均方式の場合は平均基準内賃金の2%相当を目安とする。
そのうえで、賃金改善について、「産別一体となって2年分の賃金改善要求を行う」と記述。要求額は「2014年度3,500円、2015年度3,500円を基準とする」とし、「条件が整う組合は、格差改善にも積極的に取り組む」とした。なお、賃金改善分は、産別方針としては一律のベアに限定せず、その配分について、「基本賃金を中心にしながら、課題解決の観点も含め、最も効果的なあり方を各組合で追求する」としている。
継続的な賃金改善、財源投入が必要
賃金改善要求の考え方について方針は、「景気回復と物価上昇が同時並行的に進行する中で、持続的な経済成長と働く者の所得向上の実現を両立させるべく、政策的観点から継続的に賃金改善を進めていくことが必要」と明記。「月例賃金は生活の安心・安定の源泉に位置付けられるものとして、人への投資として最もふさわしく、可処分所得の減少が進行し、家計は厳しさが増す中で、賃金改善により実質生活を守り、安心感・安定感を高めることで、消費マインドを改善し、個人消費の拡大を引き出すことになる」と賃金改善の必要を強調している。
これまでの2年サイクルの賃金交渉では、賃金改善を求める際には、2年度の前半の年でその実施を求めることを基本としてきた。今回は、両年度それぞれに賃金改善を求めるのが、大きな特徴となっている。この点について澤田委員長代行は「今回は従来の延長線上のやり方では対応できない」とし、「2013年度の過年度物価と2014年度の上昇見通し、経済成長実績・見通しを踏まえ、2年分の賃金改善を要求するという考えに加え、デフレ脱却と日本経済を成長軌道に乗せるには、継続的に財源投入が必要と判断した」と説明した。各年度の改善要求額を3,500円に設定したことについては、「2014年度は、連合、金属労協の方針にある1%引き上げを基準とした」(澤田委員長代行)とし、一方、2015年度の3,500円については「2014年度の物価上昇見通しが、消費税の影響を除く数値で1.3%である点や、経済成長率はやや落ち込む見通し、産業・企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続くことなどを考えると、2014年度を上回る明確な理由がない」(工藤智司事務局長)などと説明した。なお、基幹労連は、消費税率の引き上げ予定は賃金改善の要求根拠に含めていない。
年間一時金は40万円プラス4カ月を基本に
年間一時金の要求基準については、「金額」要求方式の場合は、生活を考慮した要素の分を120万円ないし、130万円とし、成果を反映した要素の分を40万円とした。「金額+月数」方式の場合は、40万円プラス4カ月を基本とする。「月数」方式の場合は、5カ月を基本とする。
方針討議では、「産別方針、取り巻く環境を的確に捉え、物価動向、企業の競争力強化の観点、職場の組合員の生活実態、一時金が業績連動方式で決定されることなどを踏まえ、魅力ある労働条件づくりと産業・企業の競争力強化の好循環の創造を基本となる人への投資に向け積極的に取り組む。月例賃金にこだわる」(新日鐵住金労連)、「賃金改善、退職金の増額を要求するとともに、働くものすべての実質生活を守る観点から企業内最低賃金の改定、定年後の再雇用社員・シニア社員の賃金改善も要求していく。組合員は賃上げの状況は整いつつあると受け止め、一層、期待も大きい。しかし、マクロ環境議論だけで、すべての要求に対して成果を得ることは簡単ではない。経済動向や企業業績に関して、現時点の見通しでは不確実な面がある2015年度分の賃金改善交渉は、相当に難航する可能性がある。今次労使交渉では労働組合の力量が大きく問われる取り組みとなる」(川崎重工労組)、「組合員の生活の安心・安定を担保するうえで、賃金改善は絶対条件であるとの認識のもと、今次取り組みでは、賃金改善と働くものすべての処遇改善に絞った要求とすることを職場に説明し、理解してもらった。結果にこだわった交渉をする」(大同特殊鋼労連)などの意見表明が加盟労組から出された。
要求提出は、第1次要求提出ゾーンは2月7日~14日とし、大手組合は7日に集中して要求提出する。