平均賃上げで1%または2,500円以上が統一基準/UAゼンセンの闘争方針

(2014年1月31日 調査・解析部)

[労使]

わが国最大の産別労組で、組合員のほぼ半数を契約社員やパートタイマーが占めるUAゼンセン(逢見直人会長、約145万人)は30日、福島県福島市で中央委員会を開催し、2014労働条件闘争方針を決定した。すべての加盟組合が賃金体系(カーブ)維持分を確保したうえで、一人平均賃上げ(ベア)1%(対所定内賃金)または2,500円以上を要求することを、全加盟組合統一基準に設定。パートなど短時間組合員の賃金引上げについては、正社員との均等・均衡処遇を考慮したうえで、1%以上を要求することを要求基準の基本とした。

デフレ脱却は包括的行動、連帯経済で

挨拶した逢見会長は、安倍内閣の経済政策と賃上げ要請について、「安倍内閣は、デフレ脱却と持続的景気回復のために賃上げが重要であるという認識を示している。このことは労働組合も従前から主張していたことであり、基本的に見解に相違はない」としながら、さきに「経済の好循環の実現に向けた政労使会議」で確認された政労使による取り組みについて、「この恩恵が、一部の産業の大企業や正社員などに限定されることなく、中小企業あるいは、パートタイム労働者、派遣労働者などにも波及し、均てん、すなわち皆が等しく分け前を得られるようにしていかなくてはならない」と主張。「重要なことは、排他的経済行動であってはならないことだ。排他的経済行動とは、わが社だけが儲かればいい、他人のことなどは心配していられないという考え方。こうした思想ではなく、大企業も下請けも、中央も地方も、みんなで豊かになるという包括的経済行動(インクルージョン)あるいは連帯経済といった思想がデフレ脱却には必要だ」と自論を展開した。

実質賃金確保のためにはベアが必要

一方、2014春闘に向けて、「昨年までと大きく違うのは、統一的にベア要求を組んでいることだ。これは、物価がプラスに転じていることを受け、実質賃金確保のためには、月例賃金の引き上げ、すなわちベアが必要と考えたものだ」などと説明。「今後の労使間の真摯な協議により、労働者の将来への安心感を醸成し、賃金上昇を通じて消費拡大につながり生活防衛の観点からもしっかりした解決が重要だ」と強調するとともに、「まずは労働組合のあるところが賃上げ相場を形成し、それが、労働組合のない未組織企業や短時間等労働者にも広がる、こうした賃上げ相場をつくっていくことが私たちの役割だと思う。厳しい局面が予想されるが団結を強化して闘っていかなくてはならない」と呼びかけた。

方針は、2014闘争に対する基本姿勢として、「経済回復の兆しも見えつつあり、物価上昇局面であることもふまえ、働く者の総意を結集し適正な配分を求めていく」と記述。「2013年度の物価上昇は、単身者であれ世帯形成者であれ、また若年層であれ、さらには正社員であれ正社員以外であれ、それぞれに影響を受けている。私たちが適正な賃上げを獲得し、すべての労働者に配分されなければ、組合員は生活を切り下げることでしか対応できない」とするとともに、「これまでの賃金改善のような、一部の体系是正や該当者が限定される一部手当などの引き上げのみに配分することは避け、一律的に配分していくことが必要である」として、明確に統一ベア要求の必要性に言及した。

「ミニマム水準」未達組合は9,500円を要求

具体的な要求基準をみると、全加盟組合統一基準では、「すべての加盟組合は、賃金体系(カーブ)維持分を確保した上で、一人平均賃上げ(ベア)1%(所定内賃金)または2,500円以上を要求する」とした。

正社員組合員の要求基準の設定にあたっては、昨年に引き続き、最低限クリアすべき統一水準である「ミニマム水準」、企業規模・業種にかかわりなく当面すべての加盟組合が到達をめざす水準である「到達水準」、到達水準を上回った組合が目標とすべき水準の「目標水準」、という3つの具体的な賃金水準を設定。「ミニマム水準」に達していない組合は、「賃金体系(カーブ)維持分を含め賃上げ原資として一人平均9,500円(基準)を要求する」とした。

UAゼンセンによると、全組合員の平均賃金から1%を算出すると、2,500円程度になるという。9,500円の内訳の考え方は、賃金体系維持分4,500円、ベア分2,500円、格差是正分2,500円となるという。中央委員会で方針を提案した松浦昭彦書記長は、「本部からは(賃上げ幅について)当初1万円以上を提起したが、検討の過程で、理屈は理解するが地方・中小の置かれた状況から5ケタとなると厳しい。もっと精査してほしい、などの加盟組合からの意見もあった」などと述べ、9,500円基準に落ち着いた経緯を説明した。

なお、ミニマム水準の具体額は、「高卒35歳・勤続17年」と「大卒30歳・勤続8年」の2つのポイントで、ともに17万円としている。「到達水準」と「目標水準」の具体額は、「流通」、「製造産業」、「総合サービス」と3つに分かれている各部門が、自部門の加盟組合の現状をふまえ設定する。到達水準は、「製造産業」と「総合サービス」部門では、産別が基準として示した「高卒35歳・勤続17年」25万5,000円、「大卒30歳・勤続8年」25万円に設定する方向。「流通」部門は、「大卒30歳・勤続8年」26万円、「大卒35歳・勤続13年」30万円と設定する方向だ。

短時間組合員の処遇改善は無期転換に関する取り組みを最優先に

一方、組合員の半数を占める短時間組合員の処遇改善では、2013年4月に施行された改正労働契約法により、2018年から一定の条件を満たした有期契約労働者の無期契約労働への転換が始まるため、「現在から労使協議を進めていく」としている。無期転換に関する取り組みとして、「有期契約労働者の勤務月数を労使で把握することができる仕組みを検討・導入する」ことや、「無期契約労働への転換後の待遇についての労使協議を行う」ことなどを最優先取り組み事項に設定した。

また、賃金引上げ要求については、パート労働法の職務・人材活用の仕組みによる均等・均衡待遇を考慮したうえで、実質賃金の維持をめざし、1%以上の賃上げ(ベア)要求を行う、ことを基本方針とした。

具体的な要求基準は、<正社員と職務・人材活用が同様の短時間組合員(均等・均衡待遇)>では、【賃金制度が整備されている場合】で、 (1) 正社員組合員の水準が「到達水準」以上となっている組合は、「契約社員」「パートタイマー」ともに、「正社員と同様の率(制度に基づく昇給+ベア1%)」、 (2) 「ミニマム水準」に到達していない組合は「正社員と同様の率(制度に基づく昇給+ベア1%)+格差是正)」とした。

一方、【賃金制度が未整備の場合】で、 (1) 正社員組合員の水準が「到達水準」以上となっている組合は、「契約社員」は「6,000円を目安とする」、「パートタイマー」は「40円を目安とする」とし、 (2) 「ミニマム水準」に到達していない組合は、「契約社員」は「7,500円を目安とする」、「パートタイマー」は「45円を目安とする」とした。

次に、<正社員と職務内容が異なる短時間組合員・分類が不能な短時間組合員>についてみていくと、【賃金制度が整備されている場合】は、「契約社員」「パートタイマー」ともに、「正社員との均衡待遇を考慮し、正社員の要求をもとに短時間組合員の職務内容などを勘案した水準」とし、水準の設定は個別組合に委ねた。一方、【賃金制度が未整備の場合】は、「契約社員」で「5,000円を目安とする」とし、「パートタイマー」は「30円を目安とする」とした。

松浦書記長は、「均等・均衡処遇ということであれば、正社員と同じ上げ幅にしていかないといけない」と述べた。なお、パートタイマーの賃上げ要求額は、昨年は20円~40円の幅であり、今年の方が20円~5円高いことになる。

闘争の進め方については、闘争全体を賃金闘争として位置づけ、全加盟組合が参加することを原則とするが、2013闘争で、妥結権を中央闘争委員長(=UAゼンセン会長)に委ねない「統一的運動」で労使交渉した加盟組合(一昨年11月に統合したサービス・流通連合の加盟組合)については、今回の闘争でも単組妥結を認める(統一闘争参加も可)。それ以外の加盟組合の交渉(元UIゼンセン同盟の加盟組合がほとんど)は、統一闘争となり、中央闘争委員長が妥結権をもつ。

日程については今後、中央闘争委員会で決定するが、ヤマ場は3月12日に設定される見通し。各部門の要求基準は、1月31日に開催される各評議員会で決定される。