中小は9,500円目安、非正規は時給30円目安の賃上げ要求へ/連合の闘争方針案
(2013年11月22日 調査・解析部)
連合(古賀伸明会長)は11月21日の中央執行委員会で「2014春季生活闘争方針(案)」を確認した。景気回復や今後の物価上昇の見通しを踏まえたうえで、生産性向上分も勘案し、すべての組合が月例賃金にこだわり、約2%の定期昇給相当分に加え「1%以上」の賃上げを求める。中小・地場組合は9,500円、非正規労働者の処遇改善は時給30円を要求目安にする。
過年度物価上昇分や生産性向上分など含め3%ないし4%以上の要求を
方針案は、「2014春季生活闘争を、従来からの主張である『デフレから脱却し、経済の好循環をつくり出す』ことを実現するための『底上げ・底支え』『格差是正』に向けた取り組み」と位置づけた。そのうえで、「景気回復と物価上昇の局面にあることを踏まえ、経済成長と所得向上を同時に推し進めていかなければ、いわゆる『悪いインフレ』となり、社会が混乱する」と強調。賃上げ要求について、すべての構成組織が月例賃金にこだわり、底上げ・底支えをはかることとし、そのために、 (1) 定期昇給・賃金カーブ維持相当分(約2%)を確保し、 (2) 過年度物価上昇分はもとより、生産性向上分などを賃上げ(1%以上)として求め、 (3) 格差是正・配分のゆがみの是正(1%目安)の要求を掲げるとした。
今回は、「『賃上げ1%以上』について、過年度物価上昇をきちんと取り切ることを含め、生産性向上分なども求めていくことを明確にした」(古賀会長)格好。要求について連合は、「平均賃上げ要求方式では、3%ないし4%以上に相当する内容」と説明している。
賃上げ要求に関しては、このほか、企業内最低賃金の取り組みとして、すべての組合が最低賃金を要求し、協定化をはかることを掲げるとともに、「すべての賃金の基礎である初任給について社会水準を確保する」として、18歳高卒初任給の参考目標値(16万5,400円)を示した。一時金についても、「月例賃金の引き上げにこだわりつつ、年収確保の観点も含め水準の向上・確保をはかる」とうたった。
賃金カーブ維持4,500円プラス賃上げ5,000円目安で/中小共闘
中小・地場の取り組みでは、中小労組を抱える構成組織が参画する「中小共闘」での賃上げ要求方針(案)で、「景気回復局面、物価上昇局面にあることや、賃金水準の低下や賃金格差、賃金のひずみの是正をはかることをめざし、5,000円の賃金引き上げを目安とする」こととした。地域ミニマム運動で集めたデータによると、300人未満規模の月例賃金は、24万9,091円(年齢38.9歳、勤続13.8年)となっている。賃上げ目安の5,000円は、この約25万円の2%が根拠となっているという。
また、中小共闘では、賃金制度が未確立だったり、賃金カーブ維持分が算定困難な組合は、賃金カーブ維持相当分を4,500円としている。この場合、「その相当額4,500円を加えた9,500円を目安に賃上げを求める」ことになる。
なお、中小共闘が賃金の下支えのために13春闘で初めて設定した「最低到達水準値」については、14春闘も同額(30歳19万円、35歳21万円)を示している。
幅広い非正規労働者の処遇改善を意識/非正規共闘
すべての構成組織が非正規労働者の処遇改善などに取り組む「非正規共闘」の方針(案)は、「非正規労働者の雇用や労働条件の問題は、民間の職場だけでなく、公務の職場においても取り組むべき課題」と明記。あわせて「非正規労働者の置かれた状況等が様々であることを十分に踏まえた運動を展開していく」として、パートタイム労働者や契約社員、60歳以降の再雇用者、公務職場の臨時職員など幅広い非正規労働者を意識した方針になっている。
賃上げの取り組みについては、まず、「時給が800円に達していない組織は800円をめざし、達している組織は『誰もが時給1,000円』をめざす」。そして、単組が取り組む地域ごとの水準について、「構成組織は現状を踏まえ、中期的に『県別リビングウェイジ』を上回る水準となるよう指導を強化する」とした。さらに、正社員との均等・均衡処遇をめざす取り組みとして、昇給ルールの導入・明確化を提示。ルールが確立されている場合は、その昇給分を確保する。
そのうえで、物価上昇・景気回復の局面であることや、「底上げ・底支え・格差是正」を進める観点から、時給改善分として30円を目安に時給の引き上げを求めていく方針を示した。連合によると、30円の時給目安は、中小の賃上げ要求目安額5,000円を時給換算して割り出したという。
価格転嫁拒否の通報ホットラインを開設
また、連合は来年4月からの消費税増税に伴い、公正取引実現の取り組みの一環として、中小企業などが下請けで発注元から増税分の値上げを拒否された場合の電話相談制度「消費税価格転嫁拒否通報ホットライン(略称:価格転嫁ホットライン)同1月から開設する。相談で寄せられた価格転嫁違反などの事実内容については、公正取引委員会や経済産業省、中小企業庁などに通報する考え。
方針案は来月3日の中央委員会で正式決定する。