月例賃金と底上げにこだわった交渉を/連合の2014闘争中央討論集会

(2013年11月8日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は11月5~6日、都内で「2014春季生活闘争中央討論集会」を開催し、約500人が参加した。集会では、「すべての加盟組織が底上げと月例賃金にこだわって闘争を進めていく」ことを確認。提起された闘争構想案では、賃上げ要求について定昇・賃金カーブ維持相当分(約2%)を確保したうえで、ベースアップに相当する賃上げ1%以上(過年度物価上昇+α)に加えて格差是正分(配分のゆがみの是正・1%を目安)を求めることを基本的な考え方としている。

労組の力量が試され、社会的な責任が問われている(古賀会長)

冒頭の挨拶で古賀伸明会長は「すべての働くものの現状と暮らしの実態を十分把握し、説得力のある要求をすべての組合が掲げ、粘り強い交渉による成果を得ることでしかデフレからの脱却はできない」と主張。政府が賃金の引き上げを求めていることについては、「当事者の労使が自主的・主体的に決定するのが原則である。雰囲気や期待で上がるものではない」とクギを刺した。デフレに陥ったのは企業が人件費削減を押し進め、それが合成の誤謬となったことを指摘。政府の賃上げ要請は「企業が社会的な責任を踏まえた対応をとるべきだとのメッセージだと捕らえるべきだ」とした。

そのうえで、2014闘争については、「労組の力量が試され、社会的な責任が問われていると肝に銘じるべきだ」とその重要性を強調した。

賃上げ要求の考え方については、底上げと月例賃金にこだわるべきだとし、「定昇2%程度の確保はもとより、2012年のこれまでの物価上昇分(0.5~0.6%+α)に加え、生産性の向上分、1997年からの賃金水準の低下分、賃金カーブの歪み是正分といった格差是正分を1%目安で積極的に求めるものとする」と説明。これをもとに、すべての組合が要求を掲げるよう要請した。平均賃上げ要求方式の場合、格差是正分を求めない場合でも3%以上、格差是正分を求める場合は4%以上の賃上げを求めていくことになる。

「賃上げ1%以上」と「格差是正分1%目安」の考え方で質疑

2014春季生活闘争について議論した第一分科会では、賃上げ要求の考え方について、詳しい説明やよりわかりやすい表現を求める意見が相次いだ。

集会2日目の全体会議での分科会報告によると、まず、「賃上げ1%以上」の文言について、「去年との違いを明確にするという点で賃上げ要求1%以上では弱い。2%の数字を掲げるべきだ」(UAゼンセン)、「物価上昇分は必ず取るべきであり、賃上げ1%以上では弱い。デフレに逆戻りさせない方針提起が必要だ」(JAM)、「単組の交渉力を高める観点で『+α』の根拠をそれぞれの組合が明確にすべきだ。『過年度物価上昇分を反映した1%以上の賃上げ』と(いう文言に)してはどうか」(自動車総連)との発言があった。

格差是正・配分の歪みの是正の目安を1%とすることについては、運輸労連が昨年まで取り組んできた「傷んだ雇用・労働条件」の復元をはかっていくため、「すべての労働組合は賃上げ・労働条件の改善のために1%を目安に配分を求める」考え方との関係性を指摘。「格差是正分は『復元分』ということを強調してきた。これまでの取り組みとの整理が必要だ」と述べた。自動車総連も「配分の歪みの是正について、今の書きぶりでは個々の配分の歪みの是正との読み取り方ができる。連合がめざしている格差の是正の観点からすると真逆に取られるのではないか」と疑問を投げかけた。

また、UAゼンセンは基本構想のなかに消費税への対応が示されていないことを指摘。「4月の消費増税を迎えるにあたり、賃上げ要求のなかに消費税に触れることが必要ではないか」と問題提起した。

これらの発言に対し、連合本部は「企業業績も異なることを理解し合ったうえで、すべての労働組合が月例賃金にこだわり、賃上げをするという同じ方向で結集できる方針にした。従来の賃金カーブ維持分、過年度物価上昇分、生活向上分という考え方のなかで、生活向上分は一人あたりGDPの伸びをあててきた経過がある。今日の成熟社会においては、単純にその式に当てはめることはできない実態にある。格差是正の1%の目安については、これまでの運動の継続性を尊重した表現。消費税は要求根拠を考えるにあたり考慮する一案件ではあるが、今次要求の根拠とはしていない。税と社会保障の一体改革のなかで扱うこととしたい」などと答弁した。

中小・非正規の要求にも水準の目安を

一方、中小・非正規の処遇改善の対応に関する意見では、「中小の水準の目安を出して欲しい。未組織も含めた影響力を出せるよう、中小の水準の目安を出して欲しい」(JAM)、「非正規の要求についても水準を出すべきだ。中核組合だけでなく情報開示組合を増やすことにより、全体的な底上げにつながる」(UAゼンセン)などの声が上がった。

本部は、中小共闘方針について、「2014闘争では額を掲げることを考えている」との見解を示すとともに、非正規労働者の要求では、「まず800円をめざし、800円を上回っているところは1,000円をめざす方針を掲げている。来週開く非正規共闘担当者会議で非正規労働者の実態を踏まえた要求のあり方について、具体的な論議をする」などと説明した。

写真:連合2014討論集会

全体会議の最後に神津里季生事務局長は、「(要求の考え方は)全体のトーンも含め、もっと積極性があって然るべきとの意見も少なからずあった。職場の組合員の期待、とりわけ格差の問題をどうクリアしていくかの大きな課題も踏まえると、期待の声は当然のこと。一方、今回提起している基本構想の内容は、各構成組織の状況や事情、これまでの経緯を織り込みつつ、それぞれどう展開していくのかにも心を砕いたもの。12月の中央委員会に向けて方針として確立していく」などと述べた。

今後、三役会・中央執行委員会の議論を経て12月3日の中央委員会で闘争方針を決定する。