国家公務員の給与削減を確実に終わらせる/国公連合の定期大会

(2013年10月18日 調査・解析部)

[労使]

国家公務員の労組や政府関係法人でつくる政労連などで構成する連合加盟の国公連合(棚村博美委員長、約9万8000人)は16日、都内で定期大会を開催し、国家公務員の給与を最大で9.77%引き下げている特例減額措置について、法律どおり来年3月に確実に終了させることなどを重点とする「2013年度運動方針」を決定した。

「新たな措置の場合は断じて許さず」(棚村委員長)

国家公務員の給与については、震災復興の財源を捻出するため、2012年4月から2年間の特例措置として、職員等級に応じて9.77~4.77%の削減が実施されている。挨拶した棚村委員長は特例減額措置について、「被災者、被災地とともに歩むという思いで(当時は)削減に合意した。終了予定期間は来年3月までとなっているが、今日まで、組合員の生活に大きな影響を与えてきた。これを確実に終了させることが最大の課題だ」と強調。現状では、政府から新たな給与抑制施策は提案されていないことなどを報告しながらも、「新たな法制措置の動きが出てきた場合は、断じてこれを許さない」と言明した。

人事院は今年8月、給与改定勧告を見送った一方、国会と内閣に示した「報告・意見の申出」のなかで、俸給表構造や諸手当のあり方などを含め国家公務員の給与制度全般を総合的に見直していく方針を打ち出した。棚村委員長はこれについて、「(2010年度までに実施されてきた)給与構造改革からわずか2年で給与の総合見直しを表明したことは唐突感が否めない」と批判。国公連合として全力で対処していく考えを示した。

労働側にとって長年の悲願である国家公務員の労働基本権確立については、「現在、政府における国家公務員制度改革の検討が大詰めを迎えているが、残念ながら基本権についてはまったくビルドインされず遺憾だ」と言及。「民主党に議員立法で法案を再び提出してもらい、国会で論戦することを望む」と要望するとともに、「国家公務員制度改革に関する論議は今回(の臨時国会)で終わり、というような事態にはさせてならない」と訴えた。

来賓からは、連合の古賀伸明会長、公務労協の吉澤伸夫事務局長らが挨拶した。国家公務員給与の特例削減措置について吉澤事務局長は、政府や自民党の関係者の話から判断すると「一人首相官邸だけが(予定どおり3月で終了させることを)判断していないのではないか」との見方を示した。その理由として、復興法人税の廃止によって約8,000億円の穴があき、「また公務員人件費で宛てるという見方がないわけではない」と述べるとともに、政府が4月以降も給与削減を継続することを提案してくる可能性について、「(連合が求める自律的労使関係制度を支持せず)人事院勧告を尊重すると言っている政府が、それを検討すること自体があり得ない」と持論を展開したうえで、「(もし提案があっても)大義は一切なく、(労働側に)譲歩はないということを明らかにしておきたい」と述べた。

全国展開企業の地域差より格差が出ている可能性も

2013運動方針は、取り組みの重点として、賃金・労働条件確保や、労働基本権の確立、政府関係法人の改革への対応などを盛り込んだ。賃金・労働条件確保では、国家公務員給与の特例減額措置について、「東日本大震災の復興・再生のための財源として拠出した国家公務員給与の臨時特例減額措置は、所期の目的を達成し本年度で終了することは不変であるとの立場を明確にする」とし、「今後も政府や与野党の動向を見守りつつ、必要に応じて対策を講じていく」としている。

人事院が打ちだした給与の総合的見直しについては、検討課題に地域間配分の見直しが明記されたことから、「恣意的、ご都合主義的なラスパイレス比較に基づく地域給与の引き下げは認められないこと」や「公務員給与の地域差はすでに2割を超え、全国展開企業の地域差を上回っている可能性が高いこと」などから「一層問題を拡大することが必至であり反対」だと主張している。政府関係法人の課題では、現在、政府で検討が進められている独立行政法人改革について、「公務労協と連携し、行政改革推進本部事務局との交渉・協議を強化する」としている。

方針討議では、「(人事院が提起する地域間配分の見直しについて)国公連合として不退転に決意で対峙してほしい」(沖縄国公労)、「独立行政法人改革では、政府による個別法人のヒアリングも始まっている。組合リーダーは、いざ鎌倉もあり得るという心構えでいる必要がある。国公連合は(構成組織間の)横の連携でぜひリーダーシップを発揮してほしい」(政労連)などの意見が出された。

役員改選では、棚村委員長(全農林)、森永栄書記長(国税労組)がともに再選された。