来春闘は「一体的な賃金改善を志向」/基幹労連定期大会

(2013年9月11日 調査・解析部)

[労使]

鉄鋼、造船・重機、非鉄関連の組合でつくる基幹労連(25万人)は5~6日に中間年の定期大会を開き、来年度の重点方針のほか建設連合との統合に向けた検討開始などを確認した。冒頭の挨拶で神津里季生委員長は、来春の賃上げ要求に触れ、金属労協の西原議長が提起した「足並みを揃えての賃金改善の方向での積極的な検討を」との要請に対して、「基幹労連としてもしっかりと呼応したい」との姿勢を表明した。

「デフレ脱却のために積極的な人への投資が不可欠」(神津委員長)

基幹労連は基本賃上げの要求を2年サイクルで行っており、AP14春季取り組み(2014春闘)は基本年度にあたり、5回目の取り組みとなる。冒頭の挨拶で神津委員長は来春闘に向けた要求について、「2年前の2012年ですら私たちは賃金改善に取り組んだのであり、その後の課題認識やわが国を取り巻く状況等を踏まえれば、基幹労連として一体的な取り組みの中で賃金改善を志向しつつ、検討を積極的に深めていくことが求められていると認識している」と表明した。

その検討に当たっては、マクロ経済の状況として、経済成長率、消費者物価指数、また雇用関係の諸数値を慎重に見極めるともに、これまでの「デフレ脱却のためには積極的な人への投資が不可欠である」との主張をさらに強める必要があると主張。ミクロの状況では収益状況は一時金との関連を見据えつつ、「賃金改善に関わる問題については、広く労使共通の中長期的な課題認識を俎上にあげることが不可欠」と述べた。さらに、従来以上に、連合・金属労協との十分な連携が重要であるとし、金属労協の西原議長が先の大会で述べた「加盟産別が足並みを揃えて整斉と賃金改善を行う方向で積極的な検討をすすめよう」との要請に対して、「基幹労連としても積極的に呼応していきたい」との考えを示した。

なお、今季のAP13春季取り組みでは、一時金は前年比増額が約4分の1を占めたものの、回答が二極化したことのほか、賃金改善(27組合)、年休付与(15組合)、時間外割増率(18組合)、退職金(25組合)、ワーク・ライフ・バランス関係(85組合)などの前進回答が得られたことが報告された。

労働規制の緩和には、働く者の立場から厳に対処

昨年の大会で決定した運動方針を補強する「後半年活動方針」では、労働政策実現力の強化を掲げる。2012年の大会で確認した、向こう10年間の運動の方向性を示す「産業・労働政策中期ビジョン」では、ワーク・ライフ・バランスの実現を重要テーマと位置づけ、休暇取得の向上をめざして「失効年休ゼロ運動」などに取り組んできている。失効年休ゼロについては、実態調査を実施しており、今後、その結果を踏まえた取り組みを検討する。

併せて、働く者すべての雇用を生活の安定に向けた対応として、とくに「コンプライアンスの観点から、派遣労働者の受け入れ協議充実に向けた取り組みを加速する」構えだ。

労働法制については、「民主党政権下で改善された労働法制を堅持していかねばならない」と強調。現在、政府の「産業競争力会議」で検討されている労働規制の緩和に対し、「本領域に対する議論に関しては働く者の立場から厳に対処する」としている。

組織拡大に関しては、今年が中期組織拡大計画(3期6年で2万5,000人増)の最終年となることから、「従来以上の組織拡大をめざし、実効ある組織拡大活動を展開する」方針。また、雇用合理化対策も強化する。基幹労連によると、鉄鋼、造船重機、非鉄の各部門で、それぞれ複数の構成組織に合理化の話がでているという。方針は、「経済のグローバル化が進展するなか、企業の統廃合が頻発している」としたうえで、「雇用合理化事案が発生した場合には迅速かつ的確に対応していく」としている。

活動方針についての討議では、新日鉄労連、JFEスチール労連など7組織がAP14について発言し、適正な配分に向けての積極的な検討とともに、産別としての一体的な取り組みを要望する意見が相次いだ。

建設連合との統合に向けた検討委員会を設置

組織関連では、中堅建設業の労組で構成する建設連合(星野康幸委員長、約4,400人)との組織統合に向けた検討委員会の設置も確認した。「『基幹労連の名称、綱領、規約・規定等を尊重する』との意向が示されたこと、基幹労連としても活動領域の広がりにより、安全衛生活動や産業政策活動等の強化に繋がると考えられる」ことから、今後、1年間、検討委員会の場で統合を前提に解決すべき諸課題について協議を進めていく方針。組織統合の目途は来年9月の定期大会とし、来年2月の中央委員会で検討状況を報告する。

検討委員会設置を確認した後、建設連合の星野康幸委員長が挨拶に立ち、「(組織統合が実現すれば)安全衛生や産業政策などの面での活動強化につながる」などと話した。建設連合は今月13日に定期大会を開き、同内容の議案を提起・確認する予定。

大会の閉会時、ガンバロー三唱の前に神津委員長は、連合人事について言及。役員推薦委員会の推薦に基づき連合事務局長への立候補届を出すと表明したうえで、「やるからには、さすが基幹労連の出身だと言われるよう力をつくす。連合のアピール力をさらに高めたい」などと意気込みを述べた。

すべての組合で基本賃金をはじめとする取り組みを

基幹労連は連合発足以前、総評、同盟等に所属していた3つの産別が旧ナショナルセンターの枠を超え、2003年9月に統合して発足した。6日午後には、結成10周年の記念祝賀会を都内のホテルで開き、連合の古賀伸明会長や日本鉄鋼連盟の友野宏会長(新日鉄住金社長兼COO)など労使幹部ら約1,200人が出席した。

神津委員長は主催者あいさつで、来年の春季取り組みに触れ、「労働条件の取り組みに関しては、2年サイクルのアクティブプランにより、一貫した考え方の元に旗を振り続けてきた。来年は基本年度として総合組合も含めてすべての組合で基本賃金をはじめとした取り組みを展開する。自立的な労使関係のなかで経営側と真摯な交渉を重ね、さらに新たなステージをめざしていく」などと強調した。