新たな人事・給与制度を妥結承認/JP労組定期全国大会

(2013年8月23日 調査・解析部)

[労使]

単一組織としては日本最大の日本郵政グループ労働組合(JP労組、組合員約24万人)は20~22日、長野市内で定期全国大会を開き、向こう2年間の運動方針を決めた。会社側と数次にわたり交渉を重ねてきた新たな人事・給与制度と労働力政策を「到達的に達していると判断した」として妥結承認。30万組織達成に向けた当面の取り組みも確認した。先の参議院議員選挙の結果を踏まえ、政治基盤の確立・強化に向けた議論も開始する。また、大会では小俣利通委員長ら新執行部を選んだ。

人事・給与制度と労働力政策を同時並行で交渉

人事・給与制度改革の方向性については、2007年に全逓と全郵政が統合し、誕生したJP労組の結成大会で「民営化に相応しい労働条件の実現」に向けた議論を行い、翌08年の中央委員会で「頑張ったものが報われる制度の実現を、JP労組として能動的に求めていく」こととし、取り組みをスタートさせた。

09年4月には会社側が、 (1) 期待役割にもとづくコース制の導入 (2) 人事評価による基本給(役割成果給)の加減算 (3) 昇格時の昇給額の充実 (4) 賞与・退職手当等の社員の頑張りに応じたメリハリの設定――などの制度改正を提案。これに対し、労組側は、「生産性を向上させつつ働く意欲を醸成させるためのメリハリ設定と緩和」と「地域性や市場性への十分な配慮」、「(安心して働くことのできる)セーフティネット」の視点から対応するとともに、「人事・給与制度は、労働力構成や配置によって大きく左右されてくるものであり、労働力政策は新たな人事・給与制度改革の構築と密接不可分の関係にある」として、人事・給与制度と労働力政策の交渉を同時並行して進めてきた。

今年2月の中央委員会では、交渉が「最終到達点に達した場合には8月の全国大会で妥結承認を求める」方針を確認。その後の継続交渉で、各社の手当制度などで経過措置等を設けるなどの回答を得たことから、労組本部は「今後、試行結果をふまえて対応する課題はあるものの、到達点までに乗り越えなければならない課題はすべて解消した」と判断し、大会での妥結承認を求めた。

役割成果給や新一般職を導入

これにより、全社員を期待役割にもとづくコース制に移行させ、役割等級の定義にもとづく評価シートで評価を行うことや、月給制期間雇用社員の登用などによる新たな正社員区分となる新一般職の導入などの新人事制度は、2014年4月から実施。従来の基本給を「役割基本給」と「役割成果給」(割合は8:2)に分割するとともに、毎年度の評価を査定昇給・賞与に反映させるなどの新給与制度については、2015年4月から実施することになる。

臼杵博委員長はあいさつで、「組合員の頑張りに報いる仕組みとセーフティネットの考え方が高度にバランスした制度を構築できた」などと指摘したうえで、今後について「これらの仕組みの適正な運用により、組合員の自主性や意欲を引き出し、事業の発展を通じた労働条件の維持向上につなげていくことが何より重要。導入前の十分な準備、導入後の運用状況の把握・検証に努めていく」と強調した。

写真・JP労組定期全国大会

公平・公正な評価やフィードバックの実現を懸念

新人事・給与制度に関する議論では、現行の評価内容とフィードバックの不備の是正や、評価者への制度の周知徹底、苦情処理機能の充実など、13地本ほぼすべてから評価者に対する不信感や公平・公正な評価制度の実現に向けた対応に関する意見が出された。

これに対し、本部は「(会社側には)現行制度での評価とフィードバックをとりわけ丁寧に行うよう要請してきた。いただいた意見を重く受け止め、会社に対しフィードバックの取り組みについての総括と実効ある取り組みを求めていく。これまで適正でなかった評価があったことも含め、対応していきたい」などと答弁した。

新制度の実施にあたっては、試行期間中の課題の抽出とその見直しを求める発言も多数あったほか、新一般職の登用に関しても、希望する月給制期間雇用社員全員の移行や年収水準の改善などを望む声が相次いだ。

一方、グループ各社における労働力構成のあり方を示す労働力政策に関しては、集配職場などでの適正な要員管理や正社員比率の改善など、職場実態に見合う社員の配置を要望する意見が多かった。

組織拡大や政治基盤の確立・強化も

このほか、新方針は、30万組織達成に向けた当面の取り組みも確認した。まずは25万人組織達成をめざして、非正規社員(パートナー社員)の加入促進や関連子会社の組織化などを進めるとともに、ユニオン・ショップ協定締結に向けた環境整備を図る。

また、政治基盤の確立・強化に向けた議論も開始する。先の参議院議員選挙で組織内候補が当選できなかった結果を「選挙の意義や重要性を十分に組織内に浸透できなかったことは、組織の実態や組合員の意識の変化など、各期間がさまざまな課題を集約して総括しなければならない」と指摘。今後、「参院選総括(中間まとめ)」を策定し、組織内議論を経て次期決議機関において最終的な選挙総括を行うことになる。

また、大会では、臼杵委員長の後任として小俣利通書記長が就任。新書記長には窪田義明氏が選ばれた。