産別統一闘争強化に向けた改革方向を提示/電機連合の定期大会

(2013年7月10日 調査・解析部)

[労使]

電機連合(有野正治委員長、64万4,000人)は8日、横浜市で定期大会を開き、産別統一闘争強化プロジェクトの最終報告を確認した。個別賃金水準などの労働条件については、本部が単組調査からのデータに基づいて具体的な指標を示し、各組合が春の闘争だけでなく、通年的にも目標の達成に取り組みやすくする。2015年までに具体的な指標を提起する。闘争組織についてはすべての業種別部会から、産別統一闘争の核となる中闘組合への参画をめざす。

大手追従方式は限界

毎年春の労使交渉で、電機連合のパナソニック、日立製作所といった大手組合は、電機連合委員長を闘争委員長とする「中央闘争委員会」のもとに「中闘組合」を形成。ストライキ権を中闘本部に委譲したうえで、賃金引き上げや一時金などの主要な労働条件について中闘組合で足並みを揃えて交渉に臨む「産別統一闘争」を展開している。しかしここ数年は、例えば賃金ではベア要求がなく、統一要求基準が「賃金体系の維持」にとどまるなか、闘争の求心力をどう保つかなどの点が課題となってきている。また、産業全体で企業業績が好調だった時代は、大手組合の要求を中堅・中小組合に追従させる方式が有効だったこともあったが、近年は同じ電機業界のなかにあっても、企業間や業種間での業績のばらつきが大きくなってきており、中闘組合の要求や回答を中小組合に波及させる方式も限界にきている。

そのため、電機連合は、2011年に「産別統一闘争プロジェクト」を設置し、統一闘争のあり方に大きな影響を与える課題や、産別統一闘争を強化する方策を検討してきた。今回の大会で、同プロジェクトの最終報告が明らかにされた。

報告は、統一闘争の領域を、従来からストを背景に取り組んでいる賃金や一時金、産別最低賃金が該当する「何としても守るべき領域」と、「各組合が業績や処遇実態を踏まえ、主体的に処遇改善に取り組む領域」――の2つの領域に整理。「何としても守るべき領域」については今後も闘争で取り組む一方、「各組合が業績や処遇実態を踏まえ、主体的に処遇改善に取り組む領域」については、それぞれの組合が「達成プログラム」をたて、その目標に向かって交渉を進め、闘争だけでなく通年的にも取り組んでいくとの方向性を提示した。「各組合が業績や処遇実態を踏まえ、主体的に処遇改善に取り組む領域」には具体的には、賃金の個別水準や退職金、福利厚生などが該当する。

めざすべき水準は5段階に設定

後者の取り組みを詳しく説明すると、電機連合が個別の労働条件について、「政策指標」と「ベンチマーク指標」という2つの指標を作成。政策指標は、電機連合が各労働条件項目について、5段階の「めざすべき水準」を設定する。例えば、「開発・設計職基幹労働者(30歳相当)」の賃金だとすると、 (1) ミニマム基準(めざすべき水準Ⅰ)=○○万円、 (2) めざすべき水準Ⅱ=△△万円、 (3) 到達水準(めざすべき水準Ⅲ)=27万円(仮)、 (4) めざすべき水準Ⅳ=□□万円、 (5) 目標水準(めざすべき水準Ⅴ)=35万円(仮)、という5段階の目標金額を示す。これらの水準を参考にして、各組合は自らの「達成プログラム」を設定して、その実現をめざす。

一方、「ベンチマーク指標」は、電機連合組織内の賃金実態調査や労働時間調査などをもとに、実績値を四分位数で示す。例えば、賃金なら、最高金額、第3四分位、中位数、第1四分位の金額を明示する。各組合は自らの組織の賃金水準をこの指標にあてはめ、自分たちの「立ち位置」を確認する。電機連合では2015年1月の中央委員会までに、具体的な政策指標やベンチマーク指標を提起したいとしている。

中闘会議へのオブザーバー参加は廃止に

また、プロジェクトは、統一闘争組織のあり方について、中闘組合の構成の見直しを提起した。2013年の闘争では、大手10組合で中闘組合を構成したが、「情報」や「部品」といった業種別部会に所属する組合は含まれていない。これまでは、業種別部会の機能を強化する観点から、業種別部会の代表組合は中闘の会議にオブザーバー参加させてきたが、報告は、「すべての『業種別部会』から中闘組合へ参加することに向けた取り組みを推進する」と明記して、オブザーバー参加の廃止の方向性を打ち出した。なお、2013年闘争では村田製作所労連やヤマハグループ労連などがオブザーバー参加している。

大会で挨拶した有野委員長は、今後の産別統一闘争について、「闘争組織の面からは、中闘組合の構成に関し、現行のオブザーバー参加形態については一定の区切りとすることや、できるだけ早い段階ですべての業種別部会から中闘組合に代表が参加していただくことなど、組織課題の解決を図る」と述べた。

ただ、討議では、構成組合から「組織論議ではまだ、明確になっている部分と明確になっていない部分がある。業種別部会からの中闘への加入について否定するものではないが、あまりにも加入論議が表面化しすぎている。中闘が業種別で構成されることや拡大中闘への影響など、まだ(議論において)納得性に欠ける状況にあるのではないか」(村田製作所労連)との意見もあった。

大会ではこのほか、2012・2013年度の運動補強方針を決定するとともに、原子力も含む電源別ベストミックスの考え方を基本とする「第3次エネルギー政策」を確立した。